メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)。2023年第1四半期(1〜3月)決算は久々の「2ケタ成長」との見方もアナリストらから出ているが……。
Sven Hoppe/Getty Images; Rachel Mendelson/Insider
メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は2023年を「効率化の年(the year of efficiency)」と位置づけ、2万人以上に及ぶ人員整理をはじめとする徹底的なコスト削減を進めている。
その最中、長期にわたってザッカーバーグ氏を支えてきた広告部門の複数の経営幹部が、同社を去ることを決めたようだ。
一連の動きに詳しい関係者2人の証言によれば、退社する経営幹部の中には、バイスプレジデント(グローバルチャネル担当)のパトリック・ハリス氏が含まれている。
グローバルチャネル担当チームは、広告代理店や広告主がクリエイティブをテストしたり、広告キャンペーンの効果を測定したりする際に役立つ教育リソースやツールを扱う。
同チームを担当するバイスプレジデントは2022年2月に新設されたポジションで、ハリス氏にとっては昇進を意味する人事だったが、わずか1年ほどでの退任・退職となった。
ハリス氏の退職後の身の振り方は、現時点では確認できていない。
また、2014年にフェイスブック(Facebook)のグローバルマーケティング責任者としてジョインし、2021年のリブランディング(親会社をメタ・プラットフォームズに社名変更)を推進したチームの一員でもあるバイスプレジデント(グローバルビジネス・プロダクトマーケティング担当)のミシェル・クライン氏も退社する。
リンクトイン(LinkedIn)の4月17日付投稿によれば、クライン氏は故郷のオーストラリアに戻り、家族のそばで第2のキャリアを踏み出す。同国が並々ならぬ意欲を示す国内外での変革の取り組みに関与することで「未来づくりを支援したい」という。
求人広告から確認できる限り、メタは今も(4月19日時点)クライン氏の後任を募集中だ。
なお、ロイターは3月22日付の記事で、クライン氏が退社する予定だと報じている。
一方、広告主のキャンペーン展開を支援するメタ社内のグローバルクリエイティブ戦略チーム「クリエイティブショップ」の責任者を務めるバイスプレジデントのニコラ・ベル氏は、すでに3月に退社済み。
ベル氏はリンクトイン投稿で退社の理由を次のように表現している。
「現実として、メタがクリエイティブショップに求める方向性は、私がジョインした当時とは違ったものになってきました。
会社が進化を遂げた喜びと自分がそこから遠のいた寂しさと、どちらも感じつつ、ここを離れて新たな挑戦の場を探すことに決めました」
ベル氏は2021年に広告代理店のR/GA(アールジーエー)からジョインしていた。
北欧担当バイスプレジデントのスティーブ・ハッチ氏も、メタを去る経営幹部の一人だ。
ハッチ氏は4月14日のリンクトイン投稿で、英調査会社YouGov(ユーガブ)の次期最高経営責任者(CEO)に就任することを明らかにした。ハッチ氏と交代で会長に就任するステファン・シェイクスピア共同創業者兼現CEOと「一緒に働くのを楽しみにしている」という。
ビジネスメッセージング担当バイスプレジデントのダン・レヴィ氏も退職する。
ロイター記事(3月22日付)によれば、レヴィ氏はメタ社内で使われているコラボツール「ワークプレイス(Workplace)」への投稿(3月20日付)で、子どもを白血病で亡くしたことから、会社を離れて家族との時間に集中したいとの考えを打ち明けていたという。
レヴィ氏は2008年に決済・リスク・ファイナンス担当のディレクターとしてジョイン。スモールビジネス(向け広告営業・サービス)担当バイスプレジデントを経て、2018年から現在のポジションを担ってきた。
グローバルマーケティングソリューション(北中南米の広告主企業とのパートナーシップ)担当バイスプレジデントのナダ・スティアラート氏は3月に退社した。
メタの広報担当はInsiderの取材に対し、次のようなコメントを寄せた。
「メタ・プラットフォームズが極めて優秀なビジネスリーダーを輩出するインキュベーター(養成機関)であることが(退社する経営幹部たちのおかげで)証明されました。彼ら彼女らの貢献、当社にもたらした影響に感謝します。
決定的なネットワークと知見を併せ持つ強力なベテランを揃えた当社のリーダーシップチームは引き続きビジネスをけん引し、パートナーにバリューを届ける製品の構築に取り組んでいきます」
インスタグラム(Instagram)の最高執行責任者(COO)、フェイスブックのグローバルパートナーシップ担当バイスプレジデントを経て、2021年に同社初の最高事業責任者(CBO)に就任したマーニー・レヴィーンが、わずか1年半ほどで退社の意向を発表したのが今年2月。
すでにその時点で、広告事業を率いるリーダーシップチームの再構築は佳境を迎えていたことになる。
レヴィーンの退任意向(夏に退社予定)を受け、グローバルビジネスグループ担当バイスプレジデントのニコラ・メンデルゾーンと、オンラインセールス・オペレーション・パートナーシップ部門の責任者を務めるバイスプレジデントのジャスティン・オソフスキーが、レヴィーンの担当していた広告部門の所管業務を分け合うことになった。
いずれも直属の上司はハビエル・オリバン最高執行責任者(COO)だ。
メタはアップルが2021年に行ったプライバシーポリシー変更により、ターゲティング広告の配信最適化における「シグナルロス」に苦しみ、翌22年に数十億ドル規模の売上高を一挙に失った。
同年11月に実施した1万1000人規模のレイオフ(一時解雇)も、その影響に苦しんだことが要因とされる。
ただ、同社がここしばらく重点投資してきた人工知能(AI)活用による広告パフォーマンスの改善が顕著であることや、短尺動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」への対抗機能「リール(Reels)」のエンゲージメント増への貢献が追加的な広告収入をもたらす可能性が高まっていることから、米ウォール街の一部のアナリストはメタの業績見通しを強気と見る。
米投資会社バーンスタイン(Bernstein)のアナリストは、顧客向けメールでメタの現状を次のように分析する。
「(2度にわたる大規模レイオフを通じて)利益を出すのに十分な規模のコスト削減が完了し、これからは関心の的が成長にシフトします」
メタは4月26日に第1四半期(1〜3月)決算を発表する。