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- 米国債市場は、今夏の後半に米国債のデフォルトが発生する可能性を織り込み始めている。
- 5月と7月に満期を迎える米国債の利回りの差は、過去最高の1.49%に達した。
- LPLリサーチは「投資家は支払い遅延のリスクがあるこれらの債権を保有して、高い利回りを得ようとしているようだ」と述べた。
LPLリサーチが2023年4月19日に発表したメモによると、米国債(アメリカ財務省発行の債券)市場は、議会が連邦債務上限を巡って対立する中、米国債のデフォルト(債務不履行)の可能性を織り込み始めているという。
米国債市場では、アメリカ財務省短期証券(Tビル)とその現在の利回りを巡って警戒する声が上がっており、投資家は、デフォルトが起こりうる夏期に満期を迎える米国債を購入し、負担するリスクに見合う高い利回りを求めている。
LPLのチーフ債券ストラテジスト、ローレンス・ギラム(Lawrence Gillum)は「5月に満期を迎えるTビルは、1カ月後(6月頃)に満期を迎えるTビルより約1.2%、7月に満期を迎えるTビルより1.49%低い利回りになる」と述べた。
現在のTビルの利回りは、1カ月物が約3.71%、3カ月物が5.14%となっている。
大方の予想では、米財務省は5月の債務を支払うのに十分な手持ち資金を有するが、議会が連邦債務上限を引き上げるために迅速に行動しない限り、その見通しは6月、7月、そして特に8月にはより不安定になる。
「投資家は、予想されるXデーの頃に満期を迎える債権を犠牲にしてでも、これらの債権の価格を競り上げているようだ。支払遅延のリスクがある債権を支えることで、より多くの要求をする可能性がある」とギラムは説明している。
5月と7月に満期を迎える国債の利回りの差は、2011年に債務を巡って共和党と民主党が深刻な対立を繰り広げたときに見られた水準を超えるレベルになっている。このとき、S&Pによって米国債の格付けがAAAからAA+に引き下げられた。
共和党と民主党の両陣営から米国債のデフォルトは「ありえない」とする発言が続いているにもかかわらず、共和党は民主党と協力して債務上限引き上げを可決する気配がなく、今回も2011年と同様のシナリオが展開される可能性がある。
「格付け会社のフィッチ(Fitch)は、議会がすぐに行動を起こさない場合、(2011年のS&Pと)似たようなことをすると脅しにかかっている。米国債が再び格下げされると、金融市場が混乱する可能性が高い。我々は、議会が手遅れになる前に行動し、議論を終結させると考えているが、このような政治的チキンゲームは市場にボラティリティをもたらす可能性がある」とギラムは述べた。
5月に満期を迎えるTビルと、7月に満期を迎えるTビルの利回りの差。
LPL Research