Meta Store1号店でヘッドセットをかぶるマーク・ザッカーバーグCEO(右)。
Facebook/Meta
メタ(Meta)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOは今年を「効率化の年」と位置づけ、組織再編に取り組んでいる。そんななか、同社のメタバース事業を担うリアリティ・ラボ(Reality Labs)で進行中のゲーム開発に、多くの注目とリソースが集まりつつある。
メタでは4月19日から追加のレイオフが始まり、5月末まで続くと見られている。だが同社に詳しい関係者3人によれば、同社でゲーム関連プロジェクトに取り組んでいるチームだけはレイオフの対象とならず「安全」と見なされているという。また、次のレイオフの実施は5月22日の週から始まるとこの関係者たちは付け加える。
ザッカーバーグが号令をかける効率化が具体化なレイオフとなって進行するにつれ、Facebookのアプリやリアリティ・ラボ内のさまざまなプロジェクトに関わるチームが解散することになる、と関係者3人は話す。
だがゲーム担当のチームは、レイオフが一服すればいくつかのポジションで採用を始められるだろうと関係者の1人はみる。
ザッカーバーグをはじめ同社幹部の間ではここ何カ月かのあいだにゲームに対する熱が高まっているが、メタバース全般に対するザッカーバーグのトーンは鳴りをひそめている、と関係者の2人は明かす。というのも、ゲームやゲーム開発者向けのQuest(クエスト)ヘッドセットを改良すべく、ハードウェアのうちいくつかは目下「再設計」の段階にあるためだ。
「いまこそ本物のゲーム開発者が必要だという認識が広がっています」(関係者)
また、メタの社内では現在、『コール・オブ・デューティ(Call of Duty)』や『グランド・セフト・オート(Grand Theft Auto)』のような「メジャーなゲーム」を、どうすればQuestのアプリストアに並べられるかという議論も進んでいると、同じ関係者は言う。
リアリティ・ラボが担うゲームの重みが増していることは、ザッカーバーグの中で変化が起きていることの表れだ。Questのアプリストアには数多くのゲームが追加されてきたが、ザッカーバーグは2021年秋にメタバース構想を発表して以来、このテクノロジーをゲーマーの新しい遊び場以上のものにすべく取り組んできた。
人と人との交流、仕事、Eコマースといった用途でメタバースを推進してきたのだから、その活動はすべて、同社のメタバースプラットフォーム「ホライゾン・ワールド(Horizon Worlds)」のアバターを通じて行われるものと見られていた。
しかし、ホライゾンのアバターはアニメっぽすぎると揶揄され、同サービスはいまひとつ普及していない。メタがホライゾン・ワールドの利用状況を最後に更新したのは2022年2月であり、その時点では月間利用者数が30万人だった。
メタで最大の人員を抱えるFacebook部門では、より合理的な運営体制への見直しを図っている。
同社の最高技術責任者であるアンドリュー・ボスワース(Andrew Bosworth)率いるリアリティ・ラボもまた、2022年に約140億ドル(約1兆8900億円、1ドル=135円換算)の損失を出したことにより、コスト削減に取り組んでいる。
にもかかわらず、ゲームのような目に見える結果を出すプロジェクトやチームに対しては、以前と同じかそれ以上の予算がついていると関係者は話す。
ゲーム以外では、ザッカーバーグとボスワースは同社におけるAIの重要性についてもここのところ公言しており、メタバースは後回しの格好だ。
同社はフェイスブックからメタへと社名を変更しメタバース分野へと舵を切って以来、投資家やウォール街のアナリストからヘッドセット向けの「キラーアプリ」を早く実現するようプレッシャーをかけられてきた。メタの社内では現在、リアリティ・ラボで財務基盤を築くには従来型のゲーム開発が最も確実な道だという認識が広がっていると、関係者の1人は話す。
なお、Insiderはメタの広報担当者にコメントを求めたが回答は得られなかった。