#CashStuffing がアメリカのTikTokでバズっている。
Hollis Johnson/Insider
- アメリカのTikTokでバズっている、#CashStuffing に筆者は魅了された。
- 今なぜ、この「キャッシュスタッフィング(袋分け家計管理システム)」動画が注目されているのか、ファイナンシャルセラピストと行動心理学者に話を聞いた。
- ゲーム感覚で予算管理をしていて、紙幣を数える音も心地良いところがキャッシュスタッフィング動画の人気の理由のようだ。
何気なくTikTokのフィードを見ていた時、私は綺麗なアクリルネイルをした女性が用途別に分けた封筒に現金を入れている動画に遭遇した。「今回もキャッシュスタッフィング動画を投稿します!」とのナレーション入りだ。
すぐに、その動画に付いていたハッシュタグ「#CashStuffing」をクリックした私は、その後何時間もキャッシュスタッフィング動画を見続け、@rebeccabudgetguru、@cashstuffingfix、@cashstuffinglifeらインフルエンサーたちが予算管理の裏技をシェアする映像に釘付けになっていた。
「キャッシュスタッフィング(Cash-stuffing)」とは、昔ながらの「袋分け家計管理システム」のことで、家賃や食費、ガソリン代、保険代、医療費などといった用途ごとにラベルを貼り、それぞれの封筒に現金を入れて、生活にかかる予算を管理する方法だ。ハッシュタグ「#CashStuffing」の付いた関連動画は合計で2億2920万回再生されており、中には80万〜120万回再生されるほど人気の動画もある。
キャッシュスタッフィング動画を投稿している人の大半が、浪費を防ぎ、クレジットカードの債務を増やさないようにしようと考えている女性だ。
キャッシュスタッフィング作業の流れ:
- 用途別に現金を振り分けていくため、TikTokの動画投稿者たちは撮影を始める前に各カテゴリーの予算を書き出しておく。
- 次に、紙幣を1ドル札、5ドル札、10ドル札、20ドル札、50ドル札、100ドル札の束に分ける。
- たいていの動画はこの部分から始まる:動画投稿者が各カテゴリーにいくら入れるのか説明しながら、バインダーに綴じられたプラスチック製の封筒に紙幣を入れていく。ステッカーやラインストーンで飾ったジッパー付きの整理ポーチを使っている人もいる。
- 投稿者は紙幣を数えて封筒に入れていく。前回詰めた分の残りがまだ封筒に入っている場合は、その封筒の中身が総額いくらなのかコメントし、封筒が空になっていたら、そこに入っていたお金をどう使ったか説明する。
「キャッシュスタッフィング」で自分のお金を管理する
このような流行りの動画に夢中になり何時間も見てしまった私は、なぜキャッシュスタッフィングが一部の人にはそれほど効果的なのか、ファイナンシャルセラピストと行動心理学者に話を聞くことにした。キャッシュスタッフィングは動画として見ていて楽しいだけでなく、主に2つのメリットがある。お金の出入りを全て頭の中で管理しなければならない状態から解放してくれるという点と、使うべきところに適切にお金を使えるようになるという点だ。
行動心理学者で認定ファイナンシャルプランナーのブレイン・ピアソン博士は、未払いの請求書や娯楽目的の出費を考える時に費される精神エネルギーで、出費を追跡しなかったり予算を適切に管理しなかったりするとストレスを引き起こす「メンタル・アカウンティング」という概念を指摘する。
キャッシュスタッフィングをすると、何にお金を使っているか明確に把握でき、支払いも対応済みなので、このメンタル・アカウンティングによるストレスから解放される。ピアソン博士は、全ての支払いを終えてからバーに飲みに行くことを例に出し、「家賃を支払うためのお金に手をつけてしまうような心配がない方が、より楽しく友人たちとお酒を飲むことができる」と説明する。
キャッシュスタッフィングは、複数の銀行口座、あるいは銀行口座という”バケツ”への自動振り込みをフィジカルに行うようなものだ。これしか方法がないわけではないが、クレジットカードで浪費してしまう人に専門家が現金を使うことを勧めることが多いのには理由がある。実際に紙幣を触るという行為によって、具体的に何にいくら支払っているのかということへの意識と、お金を管理できているという感覚が得られるのだ (お金を使う時も同じ意識が働く)。
さらに、現金を封筒に詰めるにしろ銀行口座に振り分けるにしろ、事前にお金を分けておくことで、「より意識が高まり、自分にとって価値のあるものにお金をかけられるようになる」と、ファイナンシャルセラピストのメーガン・マッコイ博士(LMFT, AFC, CFT-I)は指摘する。例えば、友人とバーに行ってお酒を飲むのが本当に好きだったら、そのためのお金を確保しておけば良いのだ。
事前にお金の使い道を決めておくと「予算的には充分余裕があるのにあまり自分のためにお金をかけていない人は特に、罪悪感なく自分のためにお金を使えるようになる」とピアソン博士は言う。
キャッシュスタッフィング動画で家計の節約術を共有している投稿者の中には、美容関係など自分のために使うお金を確保することも大切にしている子育て世代の女性も多い。彼女たちは、自分がハッピーでいられた方が子供にとって良い母親でいられると動画の中でよく語っている。
動画は見ていて楽しいが、万人向けの節約術ではない
私はキャッシュスタッフィング動画を見るのは大好きだが、正直なところ、実践することはおそらくないだろう。支払いは全てデジタルで行っているので、現金を封筒に詰めるという発想が便利とは思えないのだ。長期目標に向けて少しずつ節約しようという気にはさせられるし、紙幣を数える音が心地良いので動画を見るのは大好きだ。でも、私はデジタルなやり方でこれと同様の満足感を与えてくれる今の方法を続けたいと思う。
「必ずしもお金を封筒に詰めるという行為が楽しいわけではない」とマッコイ博士は言う。節約や予算管理をゲームに変えているところが楽しいのだ。動画を見る側にとっては、投稿者が紙幣の束からお金を仕分け、何にいくら使うのかを見るのが楽しいのだ。
キャッシュスタッフィング動画は病みつきにはなるが、ライフスタイルによってそれぞれに合った節約術がほかにも色々ある。ゲーム感覚で予算管理ができ、金融リテラシーも身に付けられる「Zogo」のようなアプリもあるし、グループチャットで友人や家族と、誰が最初に貯蓄目標を達成できるか競争してみるのもひとつの方法だ。
マッコイ博士を含め専門家は一般的に、節度を持ってクレジットカードを使い、毎月滞りなく支払うことができない人にしか、現金ベースの節約術は勧めていない。
「結局は、特典が充実したクレジットカードの利用を推奨している」。