ASUSは「サステナ重視」のプレミアムノートPCを発表した。
撮影:小林優多郎
PC業界にも「サステナビリティー重視」、特に環境配慮型の製品の波は着実に進んでいる。
台湾のPCメーカー・ASUS(エイスース)は2023年春夏向け新型ノートPCに環境に配慮した製品を新たに発表した。
特徴的なのは、同社のフラグシップ製品で「環境への配慮」と「フラグシップらしい高性能さ」を両立している点にある。
シリーズ史上初の「サステナブルモデル」とは
「ASUS Zenbook S 13 OLED UX5304VA」の正面。
撮影:小林優多郎
ASUSが4月21日発表した製品は、全部で31製品74モデルに及ぶが、その中の「Zenbook S」は薄型プレミアムノートPCシリーズになる。
形状や使用しているディスプレイの大きさや部材などによって名称は異なるが、「ASUS Zenbook S 13 OLED UX5304VA」は、「シリーズ史上初のサステナブルモデル」をうたっている。
Zenbook S 13 OLEDが「環境に配慮している」と示す特徴は以下の通りだ。
- ハロゲン系化合物不使用
- キーボードキーキャップに、消費者から回収し再利用したPCRプラスチックを50%使用。
- スピーカーに海洋プラスチック5%+PCRプラスチック45%を使用。
- ディスプレイカバーとボトムカバーに、製造工程で発生した部材を再利用するPIRアルミニウム50%を使用。
- 天板にPIRマグネシウム、PIRアルミニウムを90%使用
- 天板の加工には、有機物や強酸、重金などを使用しない「プラズマ電解酸化処理」を採用。
- 製品パッケージはプラスチックフリー、古紙を100%使用し、接着剤も不使用。
PCRプラスチックなどの使用例。
撮影:小林優多郎
パッケージは古紙100%でできているだけではなく、組み立てに接着剤を使用しないことも徹底している。
撮影:小林優多郎
パッケージの一部はPCスタンドとしても利用できる。
撮影:小林優多郎
同社は今までも環境配慮型の製品として「Chromebook CR1100」や「ExpertBook B9 OLED」など、をグローバルで展開してきたが、日本での販売時はそれほど「サステナビリティー」を強調してこなかった。
しかし今回、すでにオープンしているASUSの公式ホームページでは製品特徴のかなり目立つ位置で、上記のような特徴をアピールしている。
事前に開かれた報道関係者向けの製品内覧会で、製品担当者は「(シリーズ)史上初のサステナブルモデル」と話した。
ASUSが2025年までに達成を掲げる目標。
撮影:小林優多郎
ASUS会長のジョニー・シー(Jonney Shih)氏は、記者向けの内覧会で「創業以来、サステナビリティは私たちにとって重要なテーマ」だと語った。
撮影:小林優多郎
ASUSでは、グローバルでの目標として、2025年までに「売上に占めるエコラベル比率+50%」「鉱物の適格な製錬所から100%調達」「台湾オペレーションセンターでの再生可能エネルギー使用率100%」など、複数のサステナビリティー目標を設定している。
調査会社IDCのレポートによると、ASUSは2022年通年の出荷台数ベースのPC市場シェア率は7%と、アップル(9.8%)に次ぐ世界5位の位置にいる。
サステナ重視と「薄型高性能」を両立
Zenbook S 13 OLED は「サステナ」であることを除いても、非常に軽くて薄く、高性能なノートPCだ。
撮影:小林優多郎
とはいえ、環境配慮をうたっていても実際の製品の仕上がりがよくなければ、競合の多いPC市場では生き残れない。
Zenbook S 13 OLEDの特徴は以下の通りで、なんといっても「有機ELディスプレイ採用ノートPCで世界最薄」であるところが、携帯性と見た目の良さに表れている。
- ディスプレイ:13.3型2880×1800ドット解像度(有機EL)
- メモリー:16GB
- ストレージ:512GB SSD
- CPU:インテル Core i7-13455U/i7-1335Uプロセッサー
- 内蔵GPU:Iris Xeグラフィック
- カメラ:207万画素、Windows Hello(顔認証)対応
- 最薄部:10.9mm
- 重量:約1kg
- OS:Windows 11 Home
- 直販価格:15万9800円(税込)〜
プラズマ電解酸化処理が施された天板は独特な質感をしている。
撮影:小林優多郎
キーボードや天板、いずれも実際に触ってみても、その剛性から再生素材が含まれているといったことは特段感じられない。
特に「A」のモチーフが大きく刻印されている天板は、金属の冷たい質感と「プラズマ電解酸化処理」後のザラっとした触感が、デザイン性への配慮を感じさせる。
日本で販売する「Zenbook S 13 OLED UX5304VA」のキーボードレイアウト。
出典:ASUS
個人的に気になる点をあえて挙げるとすれば、キーボードのレイアウトだ。
これは多くのASUS製品で言えることだが、独特なキーボードレイアウトを採用している。特に右側の「¥」「Backspace」キーのあたりに違和感がある。
この原因は簡単に言えば「ハードウェア的に(複数種類の)共通のキーボード」を使っているからだ。
「環境保全および修理部品の保守の観点から、共通の部材を使っている」(ASUS担当者)というメリットはあるものの、ある程度「慣れ」は必要になってくる部分だ。
ASUS Zenbook S 13 OLED UX5304VAはすでに4月21日から直販サイトや家電量販店で発売中だが、こうした「サステナ重視」と「高性能」の両立モデルが日本市場にどう受け入れられるか注目だ。
取材協力:ASUS JAPAN
注:この記事のリンクを経由して製品を購入すると、アフィリエイト契約により編集部が一定割合の利益を得ます。