「The Budgetnista」の創設者、ティファニー・アリシェ。
Courtesy of Tiffany Aliche
ティファニー・アリシェ(Tiffany Aliche)氏は、自分は金融リテラシーに関しては他の人よりも優れていると感じていた。
「The Budgetnista」として知られるこのパーソナルファイナンスの専門家はInsiderに対し、こう語っている。
「私は幸運にも、四六時中お金について話している家庭で育ちました。私の父は、今は引退していますが、会計士であり、CFO(最高財務責任者)でした」
予算を立てることと身の丈に合った生活をすることについて父親が教えてくれたおかげで、彼女はささやかな教師の給料から十分なお金を貯め、マンションを購入することができたという。26歳のときにはすでに持ち家があり、800点を超える並外れたクレジットスコア(信用度)を持っていたのだ。
しかしその約3年後、状況は一転する。彼女が勤める学校はリーマンショックを契機とした景気後退で資金繰りがつかなくなり閉鎖。アリシェ氏は職を失い、住宅ローンの支払いもままならなくなった。
「しかも、詐欺に遭った結果、3万5000ドル(約470万円、1ドル=135円換算)ものカードローンを背負ってしまいました。もう限界でした」
アリシェ氏には、教育学の修士号を取得した際の学生ローンも5万ドル(約675万円)ほど残っていたというが、直近の優先事項はカードローン金を返済することだった。
「私の場合もご多分に漏れず、カードローンは私が抱えていた他のどんな借金よりもかなり高利でした」と彼女は明かす。2022年第4四半期、学生ローンの金利は約3%だったが、カードローンの平均金利は20.4%にものぼったという。
アリシェ氏は約2年半かけてカードローンを返済していった。その過程で、マンションは結局、銀行に取られてしまったが、43歳になった現在は完全に借金がない状態だ。
「今は2つの家を所有していて、住宅ローンも車のローンもありません」
以下で、彼女がクレジットカードの借金と対決するために行った4つのステップを紹介しよう。
1. 出費を管理した
「まず第一に、出血を止めなければなりませんでした」とアリシェ氏は言う。
「自分には収入がないという事実を認識するのにしばらくかかりました。ケーブルテレビも契約し続けていましたし、外食もしていました。事態が好転するとばかり思っていたんです」
しかし自分の経済状況を受け入れると、彼女は自分の支出を分析した。
「『さて、私の一番大きな出費は何だろう?』と自問しました。それは住宅ローンで、とても払える額ではありませんでした。だから、マンションを貸し出して、実家に戻ることにしたのです」
これは理論的には良いアイデアだったが、彼女同様に経済的に苦しく、家賃の支払いができない友人にマンションを貸したため、結局、家を失うことになった。
アリシェ氏はお金の話題が多い家庭で育ったという。
Courtesy of Tiffany Aliche
まさか20代後半で子どもの頃に過ごした部屋に戻ってくることになるとは思わなかった。「父に話すのは緊張しました 」と彼女は振り返る。「こうしたことはすべて父からよく教わっていたのに、ずいぶんたくさんの過ちを犯しましたから」
しかし、そのおかげで大きな出費がなくなり、彼女は立ち直ることができた。
彼女が自分の状況を受け入れて実行した2つ目の大きな変化は、自由に使える支出をなくすことだった。
「クレジットカードに触れないようにするしかありませんでした。何年も何もしませんでした。外でフライドポテトを食べることすらありませんでした」
2. 負債の残高を移行した
アリシェ氏は、カードローン残高を別のカードに移したのはとりわけ賢明な行動だったと振り返る。上手に借り換えれば、より早く借金から解放される優れた方法になるからだ。
その方法とは、年利0%のキャンペーンを実施しているカード、あるいは現在のカードよりも金利が低いカードに借入を移すというものだ。通常は手数料がかかるほか、有利なカードの中には、最低限のクレジットスコアが必要なものもある。
それを知っていたアリシェ氏は、まだ800点以上のスコアがあったときに、すぐに借り換えを行ったという。
「当時はまだスコアが高かったのですが、あと2、3カ月もしたら、もうクレジットカードの請求を払うお金はなかったので、信用力が失われていたでしょう。いくつかのカードの利用資格が得られたときに、その時点の3万5000ドル(約470万円)の負債を他の2、3のカードに移行して、18カ月間金利ゼロの特典を手に入れました」
その結果、20%前後の金利だとあっという間に膨らんでしまう利息を、大幅に節約することができた。
「支払いが滞ってからではどうにもならなかったでしょう。あれは私にとって最も賢明な行動でした」と彼女は言う。「返済したお金は利息ではなく、直接元本に充当されるわけですから」
3. 債権者に連絡した
アリシェ氏が早いうちから取り組んだことがもう1つある。彼女や家族に頻繁に電話をかけてきた債権者に連絡を取ることだ。
「借金取りから1日に何度も電話がかかってきていました」とアリシェは話す。
「でもこう思ったんです。『ティファニー、あなたが誰かに借りがあるからといって、その人があなたに嫌がらせをする権利はない』って。だから、お金を借りている人たちに電話をして、『私にはできることと、できないことがある』と言ったんです」
彼女は、家族へ連絡することや自分の携帯電話へかけてくることを止めるよう要求したという。
「『メールや郵便で私に連絡するのは許可するけれど、実家の電話や私の携帯電話へかけることは許可しない』という内容の中止勧告書を債権者全員にファックスしました。電話が鳴っても、借金取りではないと分かるようになったので、ストレスがかなり軽減されました」
4. 稼ぐことに集中した
最初の3つのステップを踏んだ後、アリシェ氏は稼ぐことに注力するようにした。そこまでで手に入れたのは、お金の使い方を意識するようになったことと、18カ月間利息の支払いを回避できたことだけだと彼女は認識していた。
不景気の中、仕事を見つけるのは難しいことだった。彼女の学校は夏休みの終わりと同時に閉鎖されたため、仕事探しはさらに難しくなったという。「新年度が始まったところだったので、どこもすでに先生が決まっていたんです」
9時から5時の仕事につけなかったので「ベビーシッターや家庭教師をしました」と彼女は言う。
「一番お金が稼げると思っている分野で副業をしました。幼稚園の先生をしていた私は、CPR(心肺蘇生法)などができたので、ベビーシッターの料金を高くすることができましたし、家庭教師の場合は、修士号を持っていたので、報酬を高めに設定することができました。副業をするなら、自分が持っている学位や、すでに仕事でやっていることに関連したことを選べば、より多く稼ぐことができるでしょう」
アリシェ氏が事業に着手したのはこの時期だ。この事業は今や、数百万ドル規模の売上を誇る金融教育企業「The Budgetnista」へと成長した。
「正直なところ、起業はまったく考えていませんでした。不景気で仕事が見つからなかっただけなんです」
しかし、教職を失ってから6年後、彼女は学生ローンを完済する。
「私のビジネスは十分うまくいっていたので、学生ローンの残高を全額支払うだけのお金がありました。3〜4万ドル(約400〜540万円)くらい残っていたのですが、小切手を切り、それを完済しました」
成功して収入を得られるビジネスを築き上げることで、カードローンを返済していたときのような犠牲を払うことなく、学生ローンを返済することができたと彼女は言う。
「あれは『目からうろこ』でした。借金を返済するために、まったく外出もせず、何の楽しみもない6年間を過ごすか、それとも、借金と生活を十分に賄うことができる稼ぎ方を考えて6年間を過ごすのか、ということです」
「私は、6年間をビジネスに費やし、十分な収入を得るための方法を学びました。学生ローンは完済し、借金の返済以外の生活とお金を手に入れました。それはとても大きな教訓でした。借金から解放されることは目標ではありますが、それはゴールではありません。ゴールは富を築くことであるべきです。富があれば、借金返済も、その他のことも、すべてうまくいくのですから」