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- ゴールドマン・サックスやユニリーバといった企業は、採用活動で人工知能(AI)ツールを使用している。
- ピュー・リサーチ・センターの最新調査によると、アメリカ人の66%は採用活動にAIが使われている仕事に応募したくないと考えている。
- さまざまな意見があるものの、AIによる採用には偏りがあり、コンテクストを理解できない可能性があると話す回答者もいた。
企業はAIを使って採用を決めている。ただ、ピュー・リサーチ・センターの最新調査によると、多くのアメリカ人はこうした状況を良く思ってはいない。
この調査は1万1004人のアメリカ人を対象に、働く人々が自分たちの評価にAIが使用されることをどのように感じているか探るために実施された。
その結果、回答者の66%が採用の決定にAIを使用している企業の求人に応募するのは気が進まないと答えた。回答者の71%は採用の最終判断をAIがすることに反対だという。
企業はさまざまなレベルで、AIを就職希望者の評価に役立てている。
2014年にはアマゾンが履歴書から重要なキーワードを自動で検索するAI採用ツールの構築を試みたものの、女性に対する偏見が見られたため3年後に終了した。一方、ゴールドマン・サックスやユニリーバといった大企業はHireVueのAIソフト(動画解析ツール)を採用面接の評価に利用している。企業はAI応募者追跡ソフトを採用プロセスに役立てることもある。
「人々はある意味、AIの受け入れに慎重かつ消極的だ」と今回の調査結果を共同でとりまとめたピュー・リサーチ・センターのリサーチ・アソシエイト、コリーン・マクレーン(Colleen McClain)氏はInsiderに語った。AIは採用に必要な「人と人との結びつきに欠ける」と考えている人もいるという。
AIにはバイアスがあると話す回答者(30代男性)もいた。
「現在使用されているAIは大抵、特定の単語や資格に注目するため全体像が見えていないことが多い」とこの男性は調査に答えた。AIは「人種や社会経済的地位に基づく構造的バイアスがまかり通るのを」許す可能性もあると男性は話している。
他にも、AIにはボディランゲージといった就職希望者の資質全てを考慮に入れることができないと指摘する回答者もいた。60代のある男性回答者は、AIには言葉を使わない情報を収集できない可能性があると語った。AIは「データベースにプログラムされた、限られたパラメーターでしか動作しない」からだという。
その一方で、採用活動にAIを使うのは良い考えだと受け止めている回答者も32%いた。
ある回答者(40代男性)はAIの方がある意味、人間よりも偏りが少ないかもしれないと考えている。「従来型の職歴」を持たない労働者に使われる場合はなおさらだ。
70代のある女性回答者は、年齢を理由に採用候補から外された高齢者にとっては特に、AIは偏見が少ないかもしれないと話している。
「応募したいと答えた人の回答にはさまざまなニュアンスが含まれている」とマクレーン氏は話している。
AIが使われているのは採用活動だけではない。OpenAIのChatGPTといったAIツールが世界を席巻する中、企業は今、意思決定に役立つAIツールの導入に積極的だ。
例えば、雇用主は従業員の給与計算にAIを使うこともできる。ウーバーやアマゾンといったテクノロジー大手は、AIを使って同じ仕事に異なる賃金を払っていることが最近の研究で分かった。この研究に携わったカリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院のヴィーナ・デュバル(Veena Dubal)教授は、この現象を「アルゴリズムの賃金差別」と呼んでいる。
マクレーン氏は新たなAI開発の「話題性」から、AIが仕事に与える影響をめぐる「国民的議論」が「最近ヒートアップしている」と語った。
「職場への影響という意味で、AIが大きな話題になるだろうと人々が予見していることをわたしたちの調査結果は示している」