デヴァー氏は、従来の投資の常識に惑わされず、人々が賢明になることを望んでいるという。
Michael Dever
マイケル・デヴァー(Michael Dever)氏は40年に及ぶ投資の経験から、株式市場について多くの人が抱いている信念が根本的に間違っていることを知ったという。
例えば、時の経過とともに株価は必ず上がるだろうか。いや、実質リターンがほぼゼロの時期が10年続いたこともある。
また、株式と債券に投資することはポートフォリオの分散の方法として賢明だろうか。2022年にこの考え方が誤りだったとされるはるか以前から、デヴァー氏は異論を唱えていた。
デヴァー氏は1982年にブランディワイン・アセット・マネジメント(Brandywine Asset Management)を創業し、現在では一連のターゲット・デート・リタイアメント・ファンドや、株式・債券のファンドで1億ドル(約135億円、1ドル=135円換算)を運用している。過去には、富裕層や企業向けの資金を運用したこともある。
デヴァー氏は、投資家は根拠のない常識に踊らされて毎年多額の損失を出しており、もっと良い投資方法があることを知るべきだと語る。
現在の市場での賢明な投資手法
まず、デヴァー氏が堅く信じているのは、株式と債券を所有するだけでは分散投資にも、ポートフォリオの保護にもならないということだ。数十年にわたり株式60対債券40のポートフォリオはオーソドックスな投資方法だったが、2022年に見られた両資産の大幅な下落で、多くの人がデヴァー氏と同じような見方をするようになった。
「1つのものにすべてを賭けようとは思わないでしょう」と最近のInsiderのインタビューでデヴァー氏は語っている。
「株式市場は、実質的に利益を生まない状況が20年、30年と続くかもしれません。一部の欧州諸国やアジア諸国などでは実際にそうでした」
株式と債券は異なる資産クラスであり、異なる条件下でパフォーマンスが良好になると考えられているが、デヴァー氏はその見方は単純すぎると主張する。彼によると、投資家に必要なのは、リターンをもたらす条件と要因に注目し、さまざまな商品に分散投資をすることだ。言い方を変えれば、2022年に多くの投資家がそうであったように、過度にアメリカ経済や金利のリスクに晒されてはいけないということだ。
デヴァー氏は2011年に、この見解を含めて19の主な投資手法の誤りをまとめた『Jackass Investing(未訳:愚者の投資)』という書籍を著し、その中でいかに多くの投資家が非合理的な行動をとってギャンブルをしているかを指摘した。投資家たちはその過程で、資金を無駄遣いし、より大きな利益が得られる素晴らしい機会を逸してしまう。そう、まるでこの書籍のタイトルのように。
この書籍やInsiderのインタビューで、デヴァー氏は一般的な投資の常識を否定している。例えば、多くの専門家は投資家に向けて、市場のタイミングを図ろうとするなと語っているが、デヴァー氏は、ゾッとするような状況で買い、すべてが好調であるように見えるときに売る人は、着実にアウトパフォームに向けて歩んでいると語る。
また、デヴァー氏はさまざまな投資資産を検討し、何種類もの株式、商品、通貨、不動産を含むポートフォリオを組むことを投資家に勧めている。
「考え方としては、ロングポジションだけを追求するのではなく、その中にショートポジションも組み込み、非対称的なチャンスを見出そうと努めるべきです」
資産クラスに基づく投資の概念(株式、債券、不動産は異なる種類の投資対象なのでパフォーマンスも異なっているとする概念)には欠陥があるとデヴァー氏は考えている。だが、富裕層向けに限定されている多くの代替商品に投資する手段を持たない普通の投資家が、この概念を退けるのは困難だ。
「典型的な現代の投資家なら、数年単位で見て、熱かったのは何だったかを確認し、そこから離脱することを望むと思います。しかし別のものに資金を振り向けるべきです。パフォーマンス上位のものよりも5年間アンダーパフォームだったものにより多くを振り向け、ポートフォリオのリバランスを図るのがいいでしょう」
この理由から、デヴァー氏は現時点でバリュー株に強気の見方をしており、米国物価連動国債(TIPS)にも素晴らしいチャンスがあると考えているという。
バッファーETF(ディファインド・アウトカムETF)は、上昇分を過度に犠牲にすることなく、下落分をしっかりと保護するため、現時点で非常に優れた選択肢になるともデヴァー氏は述べている。
これらのETF(上場投資信託)は、投資家の損失を一定額に抑えるためにオプションを組み込んでいる。投資家は利益についても制限を受けるが、市場の低迷を懸念する投資家は価値があると考えるかもしれない。
市場の低迷を憂慮しているかどうかについてデヴァー氏は、強気相場がすぐにやってくるとは予想していないという。
「PER16倍台の低水準から、長期にわたる持続的な強気相場は始まらないでしょう。まだ強気センチメントが織り込まれすぎていると思います」