『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の著者、ビル・パーキンス氏。
Alain Brin
- 『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の著者、ビル・パーキンス氏は、死ぬまでに全財産を使い切りたいと著書に記している。
- 貯めたお金をほとんど使っていない人の多い現実に、大半の人が老後に備え必要以上に貯金をしているとパーキンス氏は考える。
- さらに、退職者の3分の1の資産が増えており、自然に消費を抑えている人が大半を占めていることを指摘する。
2020年に発売され話題になった『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』の著者、ビル・パーキンス氏は、退職後の人生で全財産を使い切りたいと考えている。
彼はこれまで老後の資金として貯金してきたが、貯めたお金は残高がゼロになるまで本当に使い切りたいと考えている。多額の遺産を残すより、自分の経験になることに使ったり、子どもたちが社会に出る時の資金として援助したり、自分の必要なものに使いたいと願っているのだ。
従来の退職計画のロジックに反しているが、パーキンス氏は必要以上のお金を貯めようとするあまり、生活を切り詰めたり、今しかできない有意義な経験を我慢している人が多いのではないかと指摘する。将来のための貯金が多少犠牲になっても、生きているうちにしかできないことにお金を使うのは悪いことではない。
パーキンス氏が著書で述べている、大半の人は老後の資金は思ったより少なめで大丈夫だという主張を裏付ける4つの大きな理由を紹介しよう。
1. 退職後、純資産はたいてい増える
純資産、あるいはローンや負債を引いた全財産は年齢と共に増えていく場合が多く、退職後も純資産は増え続ける。
パーキンス氏は、退職者の約3分の1の純資産が実際退職後に増えていると指摘する。米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した2016年のデータによると、75歳以上の人の純資産の中央値と平均値は、同様にリタイアしていると考えられる65〜74歳の純資産より多い。具体的には、65〜74歳の純資産の中央値が23万7600ドル(約3200万円)だったのに対し、75歳以上は28万1600ドル(約3800万円)と前者を上回っていた。
資産を使い果たした人もいる一方で、多くの人にとって純資産は退職後も年々増えていくのが現実だ。
2. 最悪の場合の高額医療費は、貯金でカバーしきれない
医療費は退職後の出費の中で高額なもののひとつであり、老後の資金としてお金を貯めていた人にとって想定外の大きな痛手となる場合が多い。しかし、それは心配しても仕方がないとパーキンス氏は言う。
数百万ドル(数億円)以上かかるガン治療や、父親の入院費に1泊5万ドル(約680万円)かかったことなどを例に挙げ、「はっきり言って、高額の医療費を貯金でカバーできる人なんてほとんどいない」と彼は断言する。
メディケア(米国の公的医療保険制度)やその補足的な保障制度のおかげで医療費は以前よりは安くなったものの、最悪の事態に備えて貯金することなど不可能だ。「無保険の医療費は非常に高額なので、大半の人にとっては貯金があろうとなかろうと変わらない」と彼は主張する。
結局、医療にかけるお金は若いうちに使ったほうが良いとパーキンス氏は考える。
「医療費は歳をとってコスパが悪くなってから使うよりも、先手を取って(健康維持や病気の予防のために)使う方がよほど賢い」
3. 老後に出費を減らすのは意外と簡単
退職後は、生活費の減少に伴い出費も自然と減っていく傾向があり、浪費に悩む退職者はあまりいない。
「世帯収入と支出の比率の中央値は、ほぼ1:1。つまり、支出は収入と平行して推移していく」と、パーキンス氏は指摘する。
医療費など出費が増える項目があるにもかかわらず、それ以外の項目の出費は減っていく。パーキンス氏が著書で言及した2017年の個人消費の調査によると、55〜64歳の世帯平均支出は6万4000ドル(約870万円)だったのに対し、65〜74歳は5万5000ドル(約750万円)、75歳以上の世帯平均支出は4万2000ドル(約570万円)と減少していた。
「医療費の出費が増えているのに全体的な支出が減ったのは、衣料品や娯楽など、その他の出費が大きく減ったからだ」
4. 大半の人は貯金の一部しか使わない
「大半の人は貯めたお金のほんの一部しか使わない」という事実を、パーキンス氏は著書の中で繰り返し指摘している。
それを証明するため、退職予算のデータを幅広く集めた彼は、「退職直前に50万ドル(約6800万円)以上貯金があった人は、退職してから20年後あるいは亡くなるまでに、中央値でその11.5%しか使わなかった」と記している。
さらに、貯蓄の少ない人に関しても「退職前の貯金が20万ドル(約2700万円)以下だった人は、退職から18年経ってもその4分の1しか使っていない」と、同じ傾向が見られた。
本質的には、必要以上に貯金することは悪いことではないが、生きているうちにやりたいことを我慢してまで節約する必要はない。
注:この記事のリンクを経由して製品を購入すると、アフィリエイト契約により編集部が一定割合の利益を得ます。