ロボアドバイザーは、分散投資を低コストで提供する優れたツールだ。
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- 自分の親に投資を勧めるなら、最小限の労力で投資をできる、ロボアドバイザーがうってつけかもしれない。
- ロボアドバイザーは契約時のアンケート結果に基づいて、ほぼあらゆることに対応する。ポートフォリオが自動で理想に向かって進んでいることがわかれば実に安心だ。
- また、大半のロボアドバイザーは、手数料が低い上場投資信託(ETF)でポートフォリオを構築する。リスクを最小に資産を増やせるのなら、これに越したことはない。
自分の親に投資を勧めるのは、ひと苦労だ。投資文化が醸成されていなかったために理解を得るのに時間がかかるし、なによりIT利用を含め、初期段階の手間が煩雑すぎる。
最小限の労力で退職後に投資をするなら、ロボアドバイザーがうってつけかもしれない。統計データを提供するスタティスタ(Statista)によると、2020年に全世界のロボアドバイザーによる運用資産残高は1兆ドル(約130兆円)近くに上り、1年で19.3%増加している。ロボアドバイザーを使う投資家の数も、2019年から1年で50%近く増えた。
ロボアドバイザー投資が良い理由はたくさんある。退職後の投資にロボアドバイザーをお勧めする7つの理由を順番に説明しよう。
1. 簡単に投資をはじめられる
一つ目の理由は、ロボアドバイザーを使えば投資が簡単だということだ。契約書にサインをすると、たいてい短いアンケートに記入するよう求められる。年齢、投資目的、リスク許容度に加え、アルゴリズムが理想の投資ポートフォリオを選ぶのに必要なその他要素に関する質問に回答する。
「ロボアドバイザーは、分散投資を低コストで提供する優れたツール」というのはマラソン・ファイナンシャル(Maranatha Financial)のオーナーでCFPのマイケル・アンダーソン氏だ。「(ロボアドバイザーを使えば)スマートな資産配分が見つかるだろう」
ロボアドバイザーは契約時に記入したアンケート結果に基づいて、ほぼあらゆることに対応する。ポートフォリオが理想の状態に向かって進んでいることがわかれば実に安心だ。ポートフォリオを変更または更新したいときは、いつでも画面にログインして回答を変更し、ポートフォリオがどのように変わるのか確認できる。
2. 一般的にロボアドは低コスト
伝統的なアドバイザーは、預かり資産残高に基づいて手数料を徴収することが多く、平均は預かり資産残高の年率約1%である。つまり、1万ドル(約130万円)投資をしていれば、年間手数料は100ドル(約1万3000円)になるし、残高が10万ドル(約1300万円)になれば、毎年1000ドル(約13万円)の手数料を払うことになる。
一方、アメリカのロボアドバイザーのコストはそれよりかなり低い。例えば、ロボアドバイザー業者のベターメント(Betterment)の場合、基本口座手数料は年率0.25%、人によるファイナンシャルアドバイスを利用する場合は0.4%だ。チャールズシュワブ(Charles Schwab)やソフィ(SoFi) では、ロボアドバイザーには運用手数料がかからない。いずれの場合も、コストは従来のファイナンシャルアドバイザーを使う場合を大きく下回る。
なお、現状、日本のロボアドバイザーのほとんどは、運用手数料が1%前後だ。そのため、割安とは言い難い状況といえるだろう。しかし、日本のロボアドバイザー市場は、アメリカのそれに比べて5〜6年ほど遅れている。そのため、今後、市場がさらなる拡大をした場合、価格競争が起きる可能性はあるかもしれない。
3. 資産目標に合わせたオーダーメイドの投資
契約時に記入するアンケートの質問事項は、無作為ではない。どの質問もあなたの投資期間や、あなたが望む退職後の生活を送るために何が必要かを理解できるよう作られている。アンケートが終わったら、ロボアドバイザーはあなたに似た資産状況用に設計したポートフォリオを提案する。
投資額に応じて、ロボアドバイザーはあなたの投資目標に最適な比率で資産を配分する。投資開始後に運用資金を追加すると、ロボアドバイザーは投資期間に合わせて組入銘柄のバランスを維持し、正確にウェイトを調整する。株式やファンド選びに頭を悩ませる必要はない。ロボアドバイザーがあなたに代わってやってくれる。
4. ポートフォリオの構築と管理は人間の仕事
ロボアドバイザーと言えば、2004年のSF映画『アイ,ロボット(原題:I, Robot)』の中でロボットが歩き回っていたイメージを思い起こすかもしれないが、本当にロボットが投資を選ぶ訳ではないので安心してほしい。実際、ロボアドバイザーで顧客に提案するポートフォリオを構築しているのは、プロのスタッフたちだ。つまり人間なのだ。
ベターメントとウェルスフロント(Wealthfront) のポートフォリオは、現代ポートフォリオ理論(MTP)に基づいており、構築したハリー・マーコウィッツ氏はこの投資戦略でノーベル賞を受賞した。聡明なコンピューターサイエンティスト、エコノミスト、トレーダーが協働でアルゴリズムとポートフォリオを構築する。コンピューターは人間が考案した戦略を実行しているにすぎない。
5. 自動ポートフォリオ・リバランス機能
時間が経つにつれ、目標の資産配分から逸脱していくのはよくあることだ。例えば、株式が75%、債券が25%のポートフォリオを目指していた場合、株式が強い年には、たとえ資産を売買したとしても、ポートフォリオの構成は株式80%、債券20%になるかもしれない。
「自動リバランス機能は、退職後の方針やリスク水準の目標に合わせて資産配分を維持するのに非常に役立つ」とアンダーソン氏は言う。「リバランスをしなければ、退職年金口座は自分にぴったりではない資産配分に徐々に乖離していくだろう。ロボアドバイザーには、目指す資産配分に調整してくれる素晴らしいアルゴリズムが組み込まれている」
ロボアドバイザーを使えば、ターゲットとする株式75%/債券25%のアセットアロケーションから乖離していることをコンピューターが通知し、投資プランに向けて正しいバランスに戻すために自動的に株式を売却し債券を購入する。
6. 割高なアクティブ運用投信を組み入れない
どのファイナンシャルアドバイザーも一様に倫理的なわけではない。顧客からは一定金額や資産の何パーセントのフィー(相談料)だけ徴収し、それ以外は何も取らないアドバイザーもいる。こうしたアドバイザーはフィーオンリーのファイナンシャルアドバイザーと呼ばれる。一方、顧客を紹介して特定の投資ファンドや保険会社からコミッション(紹介料)を得るアドバイザーもいる。こうしたキックバックがあるが故に、多くのアドバイザーは、たとえそれが顧客の最善の利益でなくても、そうした商品を顧客に勧めてしまう。
「リターンと高い手数料の関係を論じた実証研究には枚挙にいとまがない。通常アクティブ運用投信の手数料は高く、それがリターン全体に深刻な足かせとなり得る」とアンダーソン氏は言う。
だが、こうしたことはロボアドバイザーでは起こらない。ロボアドバイザーはフィーオンリーの投資マネージャーだ。一般的に手数料が高い投資信託はまったく組み入れず、コストの低いETFだけで運用する。そのため、長期的に投資家に大きなコスト負担を強いる、よく見られる利益相反を回避できる。ロボットではなく人のファイナンシャルアドバイザーを雇う場合は、フィデューシャリー(受託者義務)の立場で助言するフィーオンリーのファイナンシャルプランナーだけを選ぶようにしよう。
7. くよくよ考えずに生活を楽しめる
ベテラン投資家であっても、自分は正しい投資をしているのだろうか、退職に向けて着実に進んでいるのだろうか、と勘繰ってしまうことが多い。ロボアドバイザーなら、 自分が積極的に投資をしていなくても、ゴールに向かって進んでいることがわかる。仕事中も、寝ている時も、家族と過ごしている時も、好きな趣味にいそしんでいる時も、ロボアドバイザーのコンピューターが、利用者の投資が目標から逸れないようにせっせと働く。自動投資プランを「オン」にして、給料日や年金受給日が来るたびに毎月少しでも資金を追加すれば、退職後の安心を維持するために、お金が働いてくれていると安心できるだろう。