イーロン・マスクのツイッター買収から半年。ツイッターでは、社員への報酬や福利厚生が削られているようだ。
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ツイッター(Twitter)の従業員は、イーロン・マスクの約束が守られないことに苛立ちを感じている。
半年前にツイッターを買収したマスクは、数カ月前から会社に残っている従業員に対し、「優れた」業績を残した者には制限付き株式ユニットの形も含め、報酬を与えると伝えてきた。しかし、マスクの気まぐれな要求にかなう業績を挙げたと言われている社員でさえ、そのような報酬をまだ得ていない。
それどころか、同社では従業員に対して福利厚生のさらなる削減が行われ、「曖昧」で「怪しげ」な将来の財務上のリターンが約束されただけで、実際の業務量は増えているという。人手不足と日々変わるマスクの要求のため、常に週100時間働いている社員さえいると、同社に詳しい2人の関係者は語る。
2023年初頭、数人の従業員は、価格や発行時期に関する情報を伝えられないまま「公正な市場価値で価格設定された」一定数の自社株を「付与する意思がある」という趣旨の手紙を会社から受け取ったという。ニュースレターPlatformerによると、マスクは2023年3月のEメールの中で、X Corp.(Xコープ)の傘下にあるツイッターの現在の評価額は、200億ドル(約2兆7000億円、1ドル=134円換算)であり、2022年10月に買収するために支払った440億ドル(買収当時の価格で約5兆7200億円)の半分以下になったと従業員に伝えたという。
その評価額の算出根拠について、マスクは詳しいことは述べていない。ただ、まだ社員の誰も株式を受け取っていないため、正確な評価額は今はそれほど重要ではないという。「従業員はEメールで送られた 『付与の意思』を示す手紙しかもらっていません」とある関係者は言う。2023年4月末の時点で、この関係者は、会社の評価や予想される株式の価格について「透明性はない」と語る。
「私たちはみんな、この株式が何の価値も持たないかもしれないと思っています。ツイッター2.0にコミットすればやりがいがあるという話でしたが、彼はそれを実現できていません」(ある関係者)
ツイッターは最近、同社の従業員に対し、現金でのボーナス支給がなくなると告げている。従業員は2022年分のボーナスを受け取ることになっていたが、ボーナスはまだ一切払われていないと関係者らは言う。
業績を挙げた「優秀」な社員がマスクの指揮下で仕事の対価として何かを受け取ることはなく、「付与の意思」の手紙は単なる 「人材を引き留めておくための試み」だと指摘する関係者もいる。レイオフ、解雇、人員削減を経て、ツイッターの従業員数はおよそ1000人まで減っているとみられる。
金銭的な報酬がないだけでなく、マスクは福利厚生の大幅な削減を続けているようだ。最近の削減対象は有給育児休業で、以前は20週間という有給休暇規定があったが、それが現在はわずか2週間になってしまった。
この休暇期間以外は、ツイッターの従業員は州法で定められた日数を上限として無給の休暇を取ることができる。例えばツイッターが現在も本社を置くカリフォルニア州では、従業員は無給ではあるが12週間の育児休業を取得する権利が法的に認められている。
4月に従業員たちは、上司を通じてこの休暇制度の変更を知ったという。その後、福利厚生の概要を記した会社の文書が変更されていることに気づいたが、社内でこの変更についての正式な発表はなかったという。そのため、Redditから移籍し、以前はスペースX(SpaceX)でマスクの下で働いていたツイッターの新しい人事部長、ウォルター・ギルバートは、社員集会でこの問題を短く説明することになったと、関係者の1人が述べている。
その関係者によれば、ギルバートは会議の場で、有給育児休業が2週間になったことでツイッターの方針が他のマスク所有の企業と同等になったと語ったとのことだが、これは「スピン(誤った解釈)」だと関係者は指摘する。
現在、マスクの保有する唯一の上場企業であるテスラの最新の報告書によると、テスラでは、従業員は16週間、つまり4カ月の有給育児休業を取ることができる。スペースXは未上場企業のため公的な報告は行っていないが、有給育児休業は州法で定められたものに加えて4週間とされている。
マスクは、ツイッターのサンフランシスコのオフィスに頻繁に出入りしている末っ子のXを含め、10人の子どもの父親である。マスクは2022年には、自身の指揮下にあるすべての会社で育児手当を増やすつもりだと述べていた。