「KPIマネジメント」で多くの企業が直面する5つの悩み。リクルートで11年講師を務めたプロがアドバイス

KPI

patpitchaya/Shutterstock

今年に入ってから、私のところにKPIマネジメントに関する相談が立て続けに舞い込んできています。いわく——

「KPIを1つに絞れないのですが、どうしたらいいですか?」

「間接部門のKPIはどうすればいいのでしょうか?」

「KPIに関係ない組織はどうしたらいいですか?」

「KPIは組織ごとに作るんですよね?」

「そもそもKPIマネジメントは何の役に立つんですか?」

このような相談を寄せてくるのは、サブスクモデルのサービスを展開する大手企業から福祉事業所、官公庁まで実にさまざまです。それぞれの事業は一見無関係に見えるのですが、一つ共通点があります。

それは、今までもKPIマネジメントをやっていたけれど、今のままではまずいので見直しを図りたいと思っている、という点です。

これは、世界がますます先行き不透明になっていることと無関係ではありません。コロナ禍がもたらした価値観の変化や、いまだ予断を許さないウクライナ情勢、シリコンバレー銀行の破綻に端を発する世界的な金融不安。いま急速に普及するChatGPTなどの生成AIによって、ホワイトカラーの仕事が脅かされるのではという不安もあるでしょう。

つまり、さまざまな業界が将来の予測が立たない「VUCAの時代」に突入したということです。

ポイントは「最も弱いところを特定し、組織全体で強化する」

私はリクルートグループに29年間在籍していましたが、そのうちの11年間は事業責任者をしながらKPIの社内講師をしていました。

受講者の数、実に1100名です。社内講師をしていた関係で社外からも声をかけていただき、一般企業でもKPIマネジメントについて講演する機会をいただきました。

その実績をもとに、2018年に『最高の結果を出すKPIマネジメント』、2020年にはその続編となる『最高の結果を出すKPI実践ノート』という本を出版しました。こうした理由から、私のもとには今もさまざまな組織からKPIマネジメントについての問い合わせが届くというわけです。

私のKPIマネジメントは、リクルートグループでの「実践」に基づいていることに加えて、背景となる「理論」が存在するという点が特徴です。その理論とは、エリヤフ・ゴールドラット教授がベストセラーになった『ザ・ゴール』シリーズで説いた「制約条件理論」です。

制約条件理論は、次の5つのステップからなります。

【制約条件の5つのステップ】

  1. 制約条件を特定する
  2. 制約条件を徹底的に活用する
  3. 制約条件以外を制約条件に従属させる
  4. 制約条件の能力を向上させる
  5. 惰性に注意しながら新たな制約条件を特定する

これを踏まえ、私のKPIマネジメントを一文で要約すれば、「ビジネスプロセスの中で最も強化するところ(≒重要なところ≒弱いところ)を特定し、そこを組織全体で強化(≒守る)」ということです。

「ビジネスプロセスの中で最も強化するところ(≒重要なところ≒弱いところ)を特定」するのがステップ1。「そこを組織全体で強化(≒守る)」が2~4のステップです。

ビジネスプロセスのイメージ

ビジネスプロセスのイメージ。

筆者作成

一番弱いプロセスにあれこれさせようとしても成果は上がりません。ですので、一番弱いプロセスにしかできないことだけをやるようにする。これがステップ2の「制約条件を徹底的に活用する」ということの意味合いです。

そして、周囲のプロセスは、一番弱いプロセスでなくてもできることをしてあげるのです。これがステップ3の「制約条件以外を制約条件に従属させる」です。

ステップ4の「制約条件の能力を向上させる」とは、周囲のプロセスから、一番弱いプロセスにヒト・モノ・カネといった経営資源を移管するということです。こうすることでそのプロセスの能力が向上します。

そして、そのプロセスが十分に強くなったら、次に弱いプロセスを強化すればいいのです。

この場合の、どの程度まで強化するとよいのかが「KPI」に当たります

ビジネスプロセスのイメージ図

ステップ1〜5までのイメージ。

筆者作成

さて、ここまで整理したところで、冒頭で示した5つの質問について答えていくことにしましょう。

Q1. KPIを1つに絞れないのですが、どうすればいいですか?

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