ETFを買うなら、「業種別ETF」という選択肢もアリ。その知られざる3つの魅力

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業種別ETFは、個別株よりリスクが少なく、国別ETFよりもリターンが大きい。

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  • 日本経済の低成長が危惧されるなか、最近ではS&P500連動型や全世界型のファンドが人気だ。しかしそれだけを購入しても、分散効果は心もとないところがある。
  • 筆者は、個別株よりリスクが少なくて国別ETFよりもリターンが期待できる、業種(セクター)別ETFに行き着いた。
  • 業種別ETFは、長期で保有するのではなく、セクターローテーション用に短中期で利益を目指すものとして考えておきたい。

S&P500連動型や全世界型のファンドを購入するだけで、本当に満足してしまっていいのだろうか?

実際、こうした商品は米国や先進国、全世界市場の成長に伴って堅調に上昇する傾向にある。つまり、長期投資としては正しい選択肢なのだろう。

しかし、「卵を一つのカゴに盛ってはいけない」という投資の格言はよく耳にする。より分散効果を高めるには、長期だけでなく短中期のパフォーマンスも検討していきたい。

そこで注目したいのが、「業種(セクター)別ETF」である。業種の話題性や景気に左右されやすいこうした商品であれば、比較的短期で利益をあげられる可能性がある。今回は、この業種別ETFのメリットについて紹介していこう。

1. 個別株と国別ETFの「いいとこ取り」

先述したように、ETFと聞けば、特定の市場全体に分散投資するような商品を思い浮かべる人は多い。特に日本経済の低成長が危惧されるなか、最近では米国ETFや全世界(オール・カントリー)が人気だ。

こうした商品は分散性が高く、リスクも低いため、確かに長期投資に向いている。筆者も長期で保有しており、これらを否定するつもりは微塵もない。

ただし、どの国の市場も、やはり米国市場の動きに連動されやすいのも事実だ。実際に全世界型ETFの多くは、資産の5~6割が米国株で構成されている。そのため、全世界型ETF・米国ETF・先進国ETFだけのポートフォリオだと、実は分散効果は少ないのである。

また、国別・全世界型ETFは、特定の企業・業種による変動を受けにくいため、短中期で利益を出すのは難しい面もある。一方、短期での利益を目指すなら値動きの大きい個別銘柄の方が良いが、その分リスクも大きい。

そこで、筆者は以前、個別株よりも比較的安全ながら、全世界型・米国株型ETFよりも短期でのローテーションが激しい金融商品を探していた。そんなときに、業種別ETFのことを知ったのだ。

業種別ETFは、組み入れ銘柄を特定業種に絞った金融商品。例えばITや医薬品などの分野ごとに分けられた商品である。つまり、指数連動型ETFと個別銘柄の中間に位置づけられるものだ。業種別ETFはある程度分散されているため、個別株よりもリスクを抑えつつ、特定業種の景気に連動させることができ、比較的短期で良いパフォーマンスを残せる可能性がある。

2. 短中期で「スピーディ」に結果を残せる

一例として、業種別ETFによる投資の実績を簡単に紹介したい。

2020年8月下旬、筆者は国内における鉄鋼・金属業界のETFである「NEXT FUNDS 鉄鋼・非鉄上場投信」を1万900円台で購入した。当時は、同年3月のコロナショックから市場全体が立ち直った時期で、国内では鉄鋼業界の縮小・再編が起きていたものの、さらなる回復に期待して購入したわけである。

そして2020年12月、1万2000円台とショック前の水準に届きそうになったところで売却した。約10%の利率である。ちなみに、2023年3月時点で同ETFは2万円にもなっているため保持し続ければ良かったのだが、すぐに売却するつもりで購入していたため後悔はない。

以上のような業種ごとを対象とした短中期の投資は「セクターローテーション」と呼ばれる。業種別ETFを売買しながら局面ごとに投資対象業種を切り替える戦略だ。

セクターローテーションは、同じ業種に属する複数の個別株を利用しても可能だが、その場合、資金を圧迫してしまう可能性がある。国内の個別株の場合、基本的に1銘柄につき100株単位で購入する必要があるため、数十万円は要するだからだ。一方で業種別ETFを使えば、個別銘柄を利用する場合よりも少額でのローテーションが可能となる。

3. 資金や経験の少ない「初心者でも安心」

業種別ETF最大のメリットは運用コストが安く、分散投資が可能な点だ。四半期ごとの業績や財務状況に影響されやすい個別銘柄に対し、ETFは複数銘柄を通じて運用されるため安全性が高い。

先ほどの「NEXT FUNDS 鉄鋼・非鉄上場投信」の場合、日本製鉄や三菱マテリアルなど計54銘柄が組み入れられている。そして2023年4月下旬現在、日本製鉄の株を購入するには最低30万円弱必要だが、このETFであれば2万円程度で済む。

さらに、決算資料を読み込む必要がない点も業種別ETFのメリットだ。個別銘柄の場合、近年の売り上げ・利益に加え、借入資金状況や大株主の意向など、さまざまな情報から投資の可否を判断する必要がある。忙しいビジネスマンにとって10社以上の決算資料を読む時間を確保するのは難しいだろう。

業種別ETFの場合は、その業界の指数や将来性(鉄鋼の場合は自動車・建材の販売推移など)から判断すればよい。そのため、比較的短時間で投資の可否を決めることができる。だからこそ、業種別ETFは資金や投資経験の少ない初心者向きと言えるだろう。

一方で分散性とのトレードオフにはなるのだが、ギャンブル性が低い点がETFのデメリットだ。1社の業績が急拡大し個別株の株価が上昇したとしてもETFでは平準化されてしまう。ベンチャー的な銘柄を複数保有し、その中の一つがテンバガーになるのを期待するような投資家の場合、業種別ETFには魅力を感じないだろう。また、東証などの市場全体型のETFと比べて、信託報酬がやや高い点も留意しておきたい。

要チェックの銘柄

ちなみに東証に上場している国内の業種別ETFといえば「NEXT FUNDS」のTOPIX-17シリーズしかない。TOPIX-17とはTOPIXの構成銘柄を17業種に分けた際の各業種別の指数のことで、「NEXT FUNDS 小売上場投信」では「TOPIX-17 小売」指数との連動を目指して運用される。組入銘柄の上位を占めるのは、もちろん日本の大企業だ。ちなみに国内は米国に比べてETFのバリエーションが少ないため、筆者としてはより増えてほしいと感じている。

米国市場で購入するなら「iシェアーズ グローバル」シリーズなどが挙げられるだろう。このシリーズは世界市場を対象としており、金融や生活必需品、そして公共事業などに分類されている。「SPDR ファンド」シリーズでは、S&P500に含まれる各業種(11種類)のセレクト・セクター指数との連動を目指しており、対象地域は米国市場だ。

こうして見ると、日経平均株価などの市場全体型のETFよりは種類は少ないが、選択肢が少ない分選びやすいかもしれない。

まとめ

以上、業種別ETFの特徴やメリットについて紹介した。個別株よりは安全性が高く、市場全体型のETF・投資信託よりは特徴的な動きをしやすいため、両者の中間に位置づけられるだろう。

筆者は「 1.少額での分散投資が可能、2.比較的短時間で投資の可否を決定できる、3.短中期でのパフォーマンスを期待できる」の3点に業種別ETFの魅力を感じている。長期で保有するのではなく、セクターローテーション用に短中期での利益を目指すものとして考えておきたい。

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

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