ロンドン自然史博物館は、鮮やかなオレンジ色の翼にある黒い輪は「すべてを見通す目を彷彿とさせる」としています。
B. Huertas (c) Trustees Natural History Museum
- 2種のチョウが新たに発見され、「ロード・オブ・ザ・リング」の悪役であるサウロンにちなんで名前がつけられた。
- ブランカ・ウェルタスは、チョウの翅の模様と10年にわたる研究から命名のインスピレーションを得たという。
- 彼女は、トールキンの小説における戦いと希少種の保護の間には類似点があるとワシントン・ポストに語った。
2種のチョウが発見され、J.R.R.トールキン(J.R.R. Tolkien)のファンタジー小説「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語)」に登場する冥王サウロンにちなんで「サウロナ(Saurona)」と名付けられた。
ロンドンの自然史博物館で蝶のシニアキュレーターを務めるブランカ・ウェルタス(Blanca Huertas)は、「属名をつけるというのは、滅多にできない体験だった」と、2023年5月7日のプレスリリースで述べている。
ウェルタスはこれまでに、この新属に分類される2種のチョウを発見し、「サウロナ・トリアングラ(Saurona triangula)」と「サウロナ・アウリゲラ(Saurona aurigera)」と名付けた。いずれも世界で最も蝶の種類が豊富なアマゾンの熱帯雨林に生息している。
この印象的な名前は、チョウの外見にちなんでいる。ウェルタスは、このチョウの目のような模様が、サウロンの燃えるような赤と黒の目に似ていることからインスピレーションを得たという。また、この名前が注目を集め、保護活動に役立つことを期待している。
「ロード・オブ・ザ・リング」に登場するサウロンの目。
YouTube/Warner Bros
「珍しい名前をつけることで、まだよく知られていないこの属に関心が集まるだろう」と彼女は述べている。
「サウロンの目で見られているような重圧」を感じる研究だった
ジャノメチョウ族のEuptychiina亜族は小さくて茶色い蝶が多く、写真の「Euptychia pignerator」もこの亜族に分類される。
Charles J. Sharp / Wikipedia
2種のサウロナ属は、ジャノメチョウ族のEuptychiina亜族に分類され、いずれも比較的小型で茶色いため、互いに区別することが難しく、アメリカ熱帯地方で研究することが最も難しいチョウ群となっている。
ウェルタスと研究チームは、ロンドン自然史博物館が所蔵する550万点以上のチョウの標本から、400種以上を約10年かけて分析した。その成果となる論文がSystematic Entomologyに2023年4月10日付で掲載された。
ウェルタスは研究に取り組んでいる間、「サウロンの目」に見られているようだった という。
彼女は博士論文のために15年前にチョウの研究を始めたが、調査を終えたのはごく最近のことだと彼女はワシントン・ポスト(WP)に述べている。
「この研究に取り組んだ10年は、サウロンの目で見られているような重圧を感じていた」
さまざまな種類のチョウを研究することは、チョウが直面する大気汚染、気候変動、生息地の喪失などの問題を理解するために重要であると、ロンドン自然史博物館は述べている。2022年には、イギリスのチョウの半数が絶滅の懸念があるとして、イギリスのレッドリストに掲載された。
希少種の絶滅を防ぐための闘いと、『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する善と悪の壮大な戦いにも、ウェルタスは関連性を見い出している。世界には「自然環境の行く末を心配し、どうにかしなければと考える」人々から成る「軍隊」が必要だと、彼女は語っている。