H&M銀座並木通り店。オープン時には多くの来店客が列を作った。
撮影:土屋咲花
H&Mが銀座に帰ってきた。5月11日、銀座2丁⽬の並木通りビル・エストネーション(ESTNATION)跡地に「H&M 銀座並⽊通り店」が開店した。銀座にはかつてH&Mの日本1号店があったが、2018年に閉店していた。
H&Mのカムバックで、銀座にはユニクロ、GU、ZARA、無印良品や昨年銀座に進出したワークマン女子など、ファストファッションブランドの店舗がそろう。
以前の銀座店とは異なる趣向の新店舗に潜入した。
改めて「実店舗」が重要。従来店舗とは一線を画す
H&M HOMEは初めて実店舗で取り扱う。
撮影:土屋咲花
コーヒーショップで購入できるコーヒーやビーガンクッキー。
撮影:土屋咲花
「長い期間、特にコロナ禍においてはデジタル化が注目されましたが、今はやはり実店舗の重要性が改めてクローズアップされていると思います。銀座並木通り店は特別な店舗として、他の店舗にはない唯一無二の体験を提供できる店舗となっております」
H&Mジャパンのアネタ・ポクシンスカ社長は新店舗についてこう紹介した。
H&M銀座並木通り店は3フロアで、売り場面積は約1300平方メートル。1~2階にウィメンズ、3階にメンズが入る。子供服の取り扱いはない。
アネタ社長の言葉通り、H&M銀座並木通り店は通常の店舗とは一線を画す試みが随所に施された。キーワードは、「付加価値」と「体験」。ECサイトで服を買う事が浸透しつつある中、実店舗では単に洋服を並べるだけでなく「そこに行きたいと思わせる何かがあることが重要」(アネタ社長)と強調する。
まず、1階には国内のH&Mで初めてコーヒーショップを併設した。
「今の銀座がどういう町でどういうニーズがあるかを注視しました。私自身、銀座には家族とよく訪れるのですが、コンセプトとしては、そういう方々がふらっと立ち寄ってコーヒーを片手に、ショッピングを楽しむという素敵な時間を過ごせるようにコーヒーショップを店内に併設しました」(アネタ社長)
イートインスペースの設置は14日までの期間限定だが、コーヒーや紅茶を片手に買い物を楽しむことができる。価格はコーヒーが税込み280円、ラテ300円、紅茶250円など。サステナビリティに力を入れているH&Mらしく、コーヒーは国際フェアトレード認証と有機JAS認証を取得したオーガニック、取り扱うクッキー(1枚400円)はビーガンだ。
同フロアの一画ではインテリア用品ブランド・H&M HOMEの一部商品も取り扱う。2016年からオンラインストアのみで販売していたが、実店舗では初めての展開となる。コーヒーショップ横の売り場に位置し、テーブルクロスや皿など、キッチン用品を中心に約40型を扱っていくという。
「銀座に特化したアイテム」を広々と陳列
銀座並木通り店と一部店舗で扱うミュグレー(Mugler)とのコラボレーションコレクション。
撮影:土屋咲花
2階のテーマカラーは黄色。
撮影:土屋咲花
店舗の内装や、陳列するアイテムにも銀座店ならではのこだわりを見せる。
実店舗だからこそ体験できることの一つとして、「ファッションのインスピレーションを高めたい」とフロアごとにテーマカラーを持たせた。さらに、H&Mの通常店舗と比べてアイテム数を絞り、ゆとりのある陳列で商品を見せている。
PRコミュニケーションマネージャーの室井麻希さんは
「商品の間隔がかなり広く、スペースに余裕があって、他の店舗との違いを感じていただけると思います。お客様が色々な導線で自由にお買い物をしていただけるようにという思いで作られております」
と説明する。 アイテム数の厳選は一方で機会損失を招く恐れもありそうだが、室井さんによると海外ではこういったスタイルの店舗での成功例があるという。
アイテムのセレクトは、オンラインショップの購入データをもとに、銀座エリアの顧客の動向を分析したという。
「銀座エリアのお客様は、最新のファッションやハイファッションを好む傾向が強いことが分かりました。特に銀座というエリアはラグジュアリーブランドも多い中、私たちは手の届きやすい価格で、そのような最新のファッションをお届けできると思っています」(アネタ社長)
最新の注目アイテムとして、11日からオンラインと一部店舗(銀座並木通り店、渋谷店、新宿店、心斎橋店、天神店)で発売したミュグレー(Mugler)のコラボレーションコレクションも並んだ。
また、コンセプトストアとして「お客様により良いショッピング体験をしていただくために、新しい試みを柔軟に取り入れていきたいという風に考えています」(アネタ社長)という。
銀座並木通り店では今回のコラボコレクションのような商品をいち早く並べるほか、イベントの実施などにも活用していく計画だ。
再出店「常に模索していた」
H&Mジャパンのアネタ・ポクシンスカ社長。
撮影:土屋咲花
H&Mは元々、日本の1号店として銀座に出店していた。ただ、高額な家賃や複合施設であるGINZA SIX(ギンザシックス)ができるなど、人の流れが変わったことが影響し2018年に閉店した。
なぜ今、再び銀座に出店したのか。
「再出店は常に模索はしていたのですが、コロナ禍で客足がかなり減った時期もありましたし、閉店しているお店もありました。今、徐々に日常が戻りつつあり、タイミングとしては今が最適だと判断しました。また、私たちが達成したい意図や目的に合った立地の店舗が空いたタイミングがマッチしたということもあります」(アネタ社長)
アネタ社長によると、東京は「重要な都市」という。
「多くのお客様にリーチができるからです。日本のお客様もいる一方で、海外からのお客様も多くいらっしゃるエリアでもあります。グローバルの視点から見ても、重要な都市だと位置づけています」
「H&M銀座並木通り店」は国内122番目の店舗。13時のオープン時には店舗前に行列ができるなど、注目度の高さも伺わせた。
H&Mは同店を含め、2023年に入って既に6店舗がオープンしている。鳥取県と香川県に2店の開店も控える。同社は今後も実店舗を重視した展開を進めていくという。
※編集部より:商品の陳列に関する海外での成功例についての記述を追記しました。2023年5月12日 12:41