Angel Jiménez de Luis/Getty Images
- 人工知能(AI)の台頭と同時に、この技術が労働者にどのような影響を及ぼすのか懸念も広がっている。
- 労働経済学者のデイビッド・オーター(David Autor)氏はAIが中間層を再生する可能性があると考えているとNPRに語った。
- AIがデマを拡散させたり、武器を作り出す可能性をより懸念しているとオーター氏は話している。
人工知能(AI)やChatGPTといったチャットボットが勢いを増す中、新しい技術が未来の労働者にとってどのような意味を持つのか、懸念も広がっている。
こうした新たなAIモデルが労働者に取って代わると非難する報告もある一方で、労働経済学者でマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授でもあるデイビッド・オーター氏はもう少しポジティブな見方を持っている —— オーター氏はAIが中間層を再生する可能性があると考えているとNPRに語った。
これは、今回のAIの台頭がこれまでのテクノロジーブームとは異なることが一因だという。"パソコン時代"はスキルが低く、大学教育を受けていない労働者に打撃を与えたとオーター氏は指摘している。しかし、今回のAIの新たな台頭はその反対で、ホワイトカラーや大学教育を受けた労働者に最も大きな打撃を与える可能性がある。
AIは実際、低スキルの労働者が仕事で優れた能力を発揮するのを助けることができる。例えば、最近の研究ではAIチャットボットとペアを組んだ低スキルのカスタマーサービス担当者の生産性が向上したことが分かった。その一方で、より高度なスキルを持つ労働者の生産性の向上は「ゼロに近い」とこの論文の著者は述べている。また、ChatGPT Plusを購入したあるCEOは、従業員の生産性が向上したと話している。
「AIがエリートの専門知識をより安く、より利用しやすいものにしてくれるのが理想的なシナリオです」とオーター氏はNPRに語った。
「突然、より幅広い層の労働者が文献を要約し、きちんとした文書を作り、スケジュールを整理し、医療分析を行い、製品を設計し、ルートを見つけ出し、恐らく飛行機を飛ばすこともできるようになるでしょう」
Insiderはオーター氏にコメントを求めたが、追加のコメントは得られなかった。
予測に反して、人間の能力はまだ多くの点でAIを上回っているとオーター氏は言う —— 人間は他者と関わることや創造性を発揮することに優れていると同氏は指摘する。
「まず第一にわたしたちは物質的な世界に生きています。ほとんどの機械は違います」とオーター氏はNPRに語った。
「わたしたちが手やからだ、顔を使ってできることで、機械が今のところやっていないことはたくさんあります」
最悪のケース
AIが労働者に及ぼす影響に対する懸念は多くの労働者の頭にあるかもしれないが、オーター氏が主に懸念しているのは、AIが悪用されて、デマが拡散されたり、武器が製造されたり、セキュリティ上の脅威につながることだとNPRに語っている。
「わたしの中では、実は皮肉なことに今のところ労働市場が一番怖くない部分だと考えています」とオーター氏はNPRに話した。
「AIが他の全てに与える影響の方がずっと怖いです」
オーサー氏はまた、最悪の場合「わたしたちはAIを使ってお互いを殺し合う」とも指摘している。同様の警鐘は他の研究者たちも鳴らしている。