イーロン・マスクは11日、ツイッターの新CEOが決まったとツイートした。
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イーロン・マスクは誰をツイッター(Twitter)CEOの後任に選んだのか。同社の社員たちがおそらくそうではないかと推測する人物は、メディアで取り沙されている人物とは違うようだ。
メディアの憶測は「リンダ・ヤッカリーノ」
マスクは5月11日、自身の後継者である新CEOを選出したと電撃発表した。
メディアの間では、NBCユニバーサル(NBCUniversal)のグローバル広告・パートナーシップ担当会長を務めるリンダ・ヤッカリーノ(Linda Yaccarino)の名前が上がっており、ウォールストリート・ジャーナルは、彼女がツイッターのCEO就任に向け交渉中だと報じた。ある事情通によると、ヤッカリーノは以前、ツイッターのCEOになりたいと友人たちに語ったことがあるという。
テック業界の億万長者でもあるマスクはここ数カ月、ツイッターの人員削減をめぐって大鉈を振るい、同社内外で敵をつくってきた。だがヤッカリーノはその間も、マスクを支持していた。
先ごろ業界のとあるイベントに登壇してマスクにインタビューしたヤッカリーノは、そのやりとりをシェアするツイートの中で、「言論の自由」を支持すると宣言した。彼女は昨年秋に行われたアドエイジ(Ad Age)カンファレンスでは、マスクにはツイッターの業績を回復させるための時間が与えられるべきだとも述べている。
NBCユニバーサルの広報担当者は11日、Insiderに対して次のようなメールを送ってきた。
「リンダと私は現在、15日に行われるNBCユニバーサルのアップフロント(Upfront)のリハーサル中です」
アップフロントとは広告業界の大きな年次イベントだ。
ヤッカリーノは、オンライン動画広告販売の経験が豊富だ。これはマスクが所有するツイッターにとって、ビジネス拡張の可能性を秘めた分野だといえる。保守派政治コメンテーターで4月にFOXニュースを解雇されたタッカー・カールソン(Tucker Carlson)は先ごろ、自身の番組をツイッターで立ち上げることを発表した。
内部関係者が注目するのは昨年採用の幹部
一方、Insiderがツイッター内部関係者に確認したところ、匿名を条件に取材に応じた3人の人物からはエラ・アーウィン(Ella Irwin)に注目が集まっているという事実を聞き出した。
アーウィンは、2022年末に前任のヨエル・ロス(Yoel Roth)に代わってツイッターの信頼・安全部門の責任者を務める人物だ。ロスは、ツイッタープラットフォーム上の健全性に関する取り組みをめぐってマスクと対立したと見られている。
「(次期CEOは)アーウィンに違いないとみんな思っていますよ」と社員の一人は明かす。会社側は次期CEOについて、社員に対しなんら公式発表をしていない。社員の情報源はもっぱらマスクのツイートのみであり、それによると人選は女性であり、6週間以内に就任するとのことだ。
Insiderはマスクをはじめツイッターの代表者らにメールでコメントを求めたが、回答は得られなかった。アーウィンも同様だ。
新CEOの就任が延期されているのは、現在シアトル在住のアーウィンがツイッター本社のあるサンフランシスコに転居することと関係しているのではないか、と内部事情に詳しい人物は話す。マスクはツイッターの本社勤務の社員に対し出社の支持を出しており、マスク自身も昨年10月末の同社買収以降、大半の週をツイッター本社で過ごしてきた。
アーウィンはツイッターに入社してまだ1年未満と日が浅い。関係者によれば、アーウィンはマスクによる買収後に昇進し、それ以降マスクとは良好な関係を築いているという。マスクの急進的な組織改革をこれまで生き延びてきた数少ない幹部の一人だ。
以前の憶測では、マスクに代わって次期CEOに就くのはスティーブ・デイビス(Steve Davis)ではないかとされていた。デイビスは現在、マスクが所有するボーリング・カンパニー(The Boring Company)のCEOを務めているが、ツイッターでも指導的役割を果たす姿が目撃され、生後間もない我が子と本社で寝ていたこともある。
アーウィンが就任することになった場合、その経験やCEOとしての資質をめぐっては現社員や元社員の一部から疑問視する声も挙がっている。
アーウィンはツイッター入社以前にグーグル(Google)の広告信頼・安全部門、アマゾン(Amazon)の市場リスク管理部門で経験を積んできたとはいえ、「極めて資質に欠けている」と元従業員の一人は手厳しい。別の関係者は、アーウィンは会社全体どころか、大規模なチームをマネジメントする経験もほぼ皆無だと指摘する。なお、ツイッターの従業員数は現在約1000人にまで減っている。