ファイナンシャルプランナーで本記事の著者であるエリック・ロベルジュ氏
Beyond Your Hammock
- 世間には、経済的自立を達成して早期退職する方法に関する情報があふれている。
- しかし、そうした情報をあてにしても、得られるのは最低額でしかなく、ほとんどの人にとっては現実的ではない。
- 私はクライアントに、理由をしっかりと理解したうえで、収入の30%を貯蓄するよう促している。
早期退職ができるほどの「経済的自立」を達成する方法に関する情報が氾濫している。しかし、そうした戦略はほとんどの場合で、投資を通じて数十年にわたって最低限の年収が得られる程度の資産を構築することに重点を置いている。
ファイナンシャルプランナーの私は、早期退職を目指すクライアントにそのような道を歩ませるつもりはない。
実際、あなたがこれからの10年間、懸命に節約と貯金をして、30代か40代のうちに引退できるほどの貯蓄ができたとしても、残りの人生(50〜60年続くかもしれない!)を年間3万ドル(約400万円)以下で過ごさなければならないのなら、そんな生き方は経済的に安定しているとは言えない。
では、私たちはクライアントに希望年齢での退職を手伝う代わりに、何を伝えているのだろうか? 私たちは3つの大切な考え方に重点を置く。
1. 最低額を目指さず、綿密な計画を立てる
私たちは経済力を、人生において自分の生き方を自由に選択できる能力とみなしている。
だが、アメリカの平均世帯収入以下で半世紀以上も過ごさなければならないような計画を立てると、時間とともに自分のお金でできることがどんどん限られていく。
はっきり言えば、不測の事態を想定していない計画は、計画として失敗だ。
健康状態が悪化したらどうする? 投資でつまずいて、財産が減ったら? 単純に生活費が高騰して、予想より支出が増えてしまったら?
クライアントが早期退職を希望する場合、私たちはその決断を尊重するが、同時にそのための現実的な計画を提案するよう努めている。言い換えれば、クライアントたちが退職したとたん、それまでの半分の支出で生きていける、などとは想定しない。今のライフスタイルを永遠に続けても不満になることはない、とも考えない。
今のあなたは5年前のあなたとは違う。同じように、10年後、15年後、あるいは20年後のあなたも変わっているはずだ。将来不満がつのる恐れのあるライフスタイルを、今選ぶべきではない。
2. 収入の大部分を貯蓄に回す
では、早期退職しても自分自身を制限する必要がないプランを実現するには、どうやって資産を構築すればいいのだろうか?
今の年収の多くを長期投資に回して、富の成長を促すべきだろう。
特に大切なのは、毎年、最低でも総収入の30%を貯蓄することだ。
40代か50代で引退するつもりなら、現実的には40%あるいは50%以上を貯蓄に回す必要があるだろう(「標準的な」退職年齢は67歳なので、50代半ばもれっきとした早期退職だ!)。
これはかなりの額で、誰にでもできることではない。しかし、仕事を辞めて収入がなくなると、時間とともに経済状況にも大きな開きが出てくるので、早期退職したいのなら、それぐらい積極的な貯蓄が欠かせない。
予定より5年間長く働くだけでも、人生の終盤の資産に何十万ドル(何千万円)ものゆとりが生じることだろう。
就業年数を10年から20年ほど短縮するということは、その分、貯蓄から支出をまかなわなければならないということだ。たとえ、働いていたころよりも相当あるいは比較的少ない額で生活するとしても、この点に変わりはない。
私たちは、キャッシュフローをとてもしっかりと管理している(そしてたくさん貯金している)クライアントたちにも、決まった給料が得られなくなることは晩年の生活に大きな影響を与えると、理解してもらうように努めている。
早期引退を検討しているなら、収入の10%から15%程度を貯金したところで、ゴールにたどり着くことはできないだろう。目指す引退時期が早ければ早いほど、思い切った貯蓄を今すぐ始める必要がある。
3. ゴールの先にある「なぜ」を理解する
もちろん、お金があれば人生を幸せにすることはできる。しかしその場合も、金銭的な目標は自分の価値観や最も大切なことと一致していなければならない。そのために、まずは価値観や優先事項について知っておく必要がある。
自分にとって大切な何かへつながるのなら、早期退職を目指すのはすばらしいことだ。しかし、仕事が嫌いだというだけの理由で引退したいのなら、期待した結果は得られないかもしれない。
早期退職のような重大な経済目標を立てる前に、考えを整理して、どんな状況でも変わることがないと思える自分の価値観について考えてみるべきだろう。
あなたには「Xさえどうにかなれば、幸せになれるのに」と思っていたのに、Xが実際に変わっても、全く幸せになれなかった経験がないだろうか?
これはとても人間的な経験で、それ自体は悪いことではない。しかし、そのような傾向の存在を認め、隣の芝生は必ずしも青くないと気づくことが重要だ。
「貢献」や「地域社会」あるいは「有意義な労働」に価値観を見いだしている人にとっては、早期退職は目標として完全に間違っている! その一方で、「自立」や「冒険」に価値を感じるのなら、早期退職はそうした価値観のために生きることを可能にする素晴らしいゴールだ。
だからこそ、私たちはクライアントを相手に価値観や優先事項について話すことに多くの時間を費やす。もちろん数字にもこだわるが、優れたファイナンシャルプランとはスプレッドシートと予想値だけではないのだ。
自らの行動の背後にある理由と目的を理解することが、パズルを完成させる最後のピースになる。価値観こそが、達成したときに本当に満足を得られる目標を形づくり、そこへ向かう勢いとなる原動力だ。