バス停にあるアメリカの債務上限を記した看板。
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- アメリカ政府が借入できる債務上限を引き上げる期限が近づくにつれ、デフォルトの懸念が高まっている。
- ジャネット・イエレン財務長官は、議会がすぐに決定を下さない場合、懸念される結果になると警告している。
- ここでは、現在問題となっている債務上限について、6人の有力者がこれまでに述べたことを紹介する。
アメリカでは債務上限をめぐり数カ月にわたって政治が行き詰まる中、米国債のデフォルト(債務不履行)リスクに対する投資家の懸念が急速に高まっている。
31兆4000億ドル(約4270兆円)の債務上限が引き上げられなければ、6月1日までに財務省の資金が底をつくとされているにもかかわらず、議員たちは行き詰まりを打破できずにいる。共和党は、バイデン民主党政権が歳出削減に同意すれば上限引き上げを支持する意向だが、政権はそのような条件は受け入れられないと主張している。
この議論には、各界の有力者からさまざまな鋭いコメントが寄せられている。アメリカが借りたお金を返せなくなれば、経済に深刻な影響を及ぼす危険性が高いと警告する人もいる。
ここでは、債務上限をめぐる政治的対立に関する有力者6人の意見を紹介する。
イーロン・マスク(Elon Musk)、億万長者の起業家
ツイッター(Twitter)ユーザーのWhole Mars Catalogが、「米国債をデフォルトさせるのはよくない」と5月10日にツイートすると、テスラ(Tesla)、スペースX(SpaceX)、ツイッターのCEOであるマスクは、「その可能性が高まっている」と不安にさせるような言葉で返信した。
ポール・クルーグマン(Paul Krugman)、ノーベル経済学賞受賞者
クルーグマンは、ニューヨーク・タイムズへの寄稿で次のように警告している。
「連邦政府が通常業務の資金繰りをできなくなる可能性が、非常に現実味を帯びてきた」
「それは下院の共和党が債務上限を利用して、通常の立法手続きでは成立の見込みのない政策立案に向けた譲歩を強要しようとしているためだ」
「政府が債務の定義を弄ぶことができるのであれば、どうやって債務上限を強要するのか、と思うかもしれないが、そもそも債務上限を設けるべきではないということだ。政府はラディカリストが武器にできるような新たなチョークポイント(そこがふさがると世界の経済が止まってしまうというポイント)を作ることなく、課税と支出について決断を下し、財政的な影響を考慮すべきだ」
ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)、バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)CEO
バフェットは自社の年次株主総会で、政府が銀行破綻に伴う預金者の資産損失を放置したり、さらなる政府借入金を拒否するという考え方について、「アメリカ政府は、債務上限で世界を混乱に陥らせることはしないのと同様に、そのような振舞いはしない」と述べた。
ジェイミー・ダイモン(Jamie Dimon)、JPモルガン(JPMorgan)CEO
デフォルトは「大惨事になる可能性がある」とパリで開催されたグローバル・マーケット・カンファレンスで、ダイモンはブルームバーグTVに語っている。
彼は、アメリカがデフォルトに陥るとは考えていないが、合意形成の期限は間近に迫っていると述べた。
「その期限が迫るほど、パニックが起こるだろう。市場は不安定になり、株価は下がるかもしれない。米国債市場は独自の問題を抱えるだろう」
ジャネット・イエレン(Janet Yellen)、アメリカ財務長官
イエレン財務長官は、アメリカが債務不履行に陥った場合について、次のように述べている。
「世界経済のリーダーとしてのアメリカの地位が損なわれるリスクもあり、国家安全保障上の利益を守る能力も疑問視されるようになる」
「アメリカでは何百万人もの人が職を失い、家計収入が減少するだろう。企業にとってのクレジット市場は悪化し、政府からの給付金を受けていた何百万もの世帯は、予定されていた支払いがなされないまま放置されるだろう」
「米ドル、アメリカの制度、リーダーシップの価値が世界的に揺らくことは、ほぼ間違いない。このことにより、ドルで価格が決定される通貨や金融市場、商品市場が不安定になる可能性がある」
デビッド・ローゼンバーグ(David Rosenberg)、ローゼンバーグ・リサーチ(Rosenberg Research)社長
5月3日、ローゼンバーグは次のようにツイートした。
「我々はデフォルトの可能性を抱え、銀行危機も広がっている(ジェイミー、申し訳ないが、これは終わっていないようだ)。そしてFRB(連邦準備制度理事会)は明日、利上げをする。今では2008年7月よりも低くなったインフレ率に注目している。彼らは何も分かっていない」