観測史上最大の宇宙爆発…超新星爆発の10倍、太陽の2兆倍の明るさ

ブラックホールのガス降着のイメージ図。前景に低温度星が描かれている。

ブラックホールのガス降着のイメージ図。前景に低温度星が描かれている。

John A. Paice

  • ある研究チームの科学者らが、これまで宇宙観測史上最大の爆発現象を発見したと発表した。
  • この「AT2021lwx」と呼ばれる爆発は、約3年間続いている。
  • この爆発は、ブラックホールが巨大な塵の雲に衝撃波を送ることによって引き起こされると考えられている。

研究者たちは宇宙観測史上最大の爆発を発見した。

この巨大な火球は約80億光年離れたところにあり、太陽系のおよそ100倍もの大きさがある。

この研究論文の代表者でサウサンプトン大学(University of Southampton)の天文学者、フィリップ・ワイズマン(Philip Wiseman)によると、太陽の2兆倍の明るさで、表面温度は太陽の約2倍だと推定されている。

「物理的な大きさだけで言えば、まさにギネス級だ」とワイズマンはInsiderに話す。非常に大きいということだけではなく、長寿命であることも特徴だ。この爆発は3年以上前から目撃されている。

この爆発は、超大質量ブラックホールが宇宙ガスの雲を通して衝撃波を送り出すことによって引き起こされているというのが有力な説だとワイズマンは述べている。

前例のない規模の爆発

NASAの広視野赤外線探査機(Wide-field Infrared Survey Explorer:WISE)が撮影した画像には、一定の間隔で爆発の様子が写されている。

NASAの広視野赤外線探査機(WISE)が撮影した画像は爆発の様子を捉えている。

The authors/Phil Wiseman

カリフォルニアのツビッキー掃天観測(ZTF)チームと小惑星地球衝突最終警報システム(ATLAS)の望遠鏡が最初にこの爆発を見つけたときには、あまり注目されなかったとワイズマンは話す。

彗星や小惑星を調査するこれらの望遠鏡では常に超新星からの閃光が観測されるが、その閃光は通常2、3カ月以内に消えてしまう。だが、今回の光は3年以上も続いた。

ワイズマンは、爆発の規模を計算した時に「我々はただただ圧倒された」と話している。

 NASAの広視野赤外線探査機(WISE)が爆発を撮影した。

NASAの広視野赤外線探査機(WISE)が爆発を撮影した。

The authors/Phil Wiseman

「AT2021lwx」と呼ばれるこの爆発は、超新星の10倍明るく、星がブラックホールに落ちる潮汐破壊現象(ブラックホールがもたらす潮汐力によって恒星が引き裂かれる現象)より3倍明るいという。

ワイズマンによると、爆発は少なくともあと数年間は輝き続けると予想されており、これは爆発が極めて長く続くことを意味するという。

これまで見た中で最も明るい閃光ではないものの、1回の爆発で「放出されるエネルギーとしては圧倒的に大きい」とワイズマン氏は付け加えている。

ブラックホールがガスと塵の雲を飲み込んでいる可能性がある

記事とは無関係だが、この写真は2019年に世界で初めて撮影に成功したブラックホールの姿。オレンジ色のリングとブラックホールの強力な重力によって作り出された「ブラックホールシャドウ」と呼ばれる影が映っている。

写真は2019年に世界で初めて撮影されたブラックホールの姿だ。オレンジ色のリングとブラックホールの強力な重力によって作り出された「ブラックホールシャドウ」と呼ばれる影が映っている。

Event Horizon Telescope Collaboration

この爆発を説明する有力な説は二つある。1つ目は恒星がブラックホールによって細断されたというものだ。だが、この規模の爆発を起こすには、ブラックホールが巨大で、その星のエネルギーが非常に大きいことが必要とされる。

ワイズマンによると、この種の星の生涯で、そのような2つの天体が出会う可能性は極めて低く、爆発による光の分析からもそれは起こっていないことが示唆されているという。

もうひとつの説は、超大質量ブラックホールがガスと塵の雲を飲み込んでいるというものだ。 現時点で最も可能性が高いという。

ブラックホールは、ガスや塵のリングに囲まれていることが多い。雲が軌道から外れてブラックホールに吸収されていく時、衝撃波が雲に広がり、雲の中の物質を加熱し、明るい光を放つというのだ。

「まるでブラックホールに大量の物質が投下されたようであり、他のものからも完全に隔離されていて、これまで見たことがないような状態だ」とワイズマン氏は語っている。

我々は銀河の消滅を目撃しているのかもしれない

銀河が光を放つ様子を描いたイメージ図。

銀河が光を放つ様子を描いたイメージ図。

NASA, ESA and J. Olmsted (STScI)

この現象を研究することで、ブラックホールについて多くのことが解明するかもしれない。例えば、ブラックホールが非常に明るい時、光がどこからやって来るのかまだ謎に包まれているが、科学者たちはこの事象から手がかりを得ることができるかもしれない。

ワイズマンはこの爆発によって、銀河がどのように変化し、どのように消滅するかを知ることができるかもしれないと期待している。

理論的には銀河の成長が止まる理由はない。ワイズマンは、銀河は「ガスが絶え間なく供給されるため、新しい星を作り続けるはずだ」と話している。

ワイズマンによると「だが、ある時点で多くの銀河が消滅し、新しい星を作るのをやめてしまう」が、その理由は明らかではないという。

一説では、ブラックホールに落ちるガスを阻止するためにブラックホールから爆発が起きる可能性があるとされている。我々が見ているものはそのような爆発の一つである可能性が高い。

「銀河の中心部がどのように制御され、時間の経過とともにどう変化していくかがわかるかもしれない」とワイズマンは話す。

「銀河に吹き出されているエネルギーを蓄積するためには、時間とともにこのような現象が数多く必要になる。数百万年という時間スケールでは、実際に銀河を粉々に吹き飛ばすことができるだろう」

現在、この爆発が非常に明るいために、ブラックホールの周りにある銀河を観察できない。だが爆発が小さくなるにつれて銀河が現れ、銀河がどのように制御されているのかが解明されることをワイズマンは期待している。

また、今後数年のうちに、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)やジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)を使用し、より詳しく観測したいと彼とその研究チームは話している。

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