グーグル初の折りたたみスマホ「Pixel Fold」を触ってみた。
撮影:石川温
グーグルは5月10日に開催した開発者向けイベント「Google I/O 2023」において、同社初の折りたたみスマートフォンとなる「Pixel Fold」を発表した。
既報の通り、日本ではグーグルだけでなく、KDDI、ソフトバンク、さらにNTTドコモが取り扱う。グーグルでの直販価格は25万3000円(税込)だ。
現地で実機を触って感じた、Android陣営の狙いと課題を考察する。
“先輩”に見る折りたたみスマホの難しさ
グーグルによる「Pixel Fold」の紹介動画。
出典:グーグル
折りたたみスマホはサムスン電子が「Galaxy Z Fold」シリーズとして、これまで4世代、出し続けている。
折りたたんだ際はスマホサイズ、開いたときにはタブレット相当の大画面になるという機能性が、一定のファンの心をつかんでいる。
しかし、20万円を超える高額な商品となっているため、多くの人の興味はひくが、実際に購入に至るのはごく限られた人となっている。
サムスンは折りたたみスマホの最新機種「Galaxy Z Fold4」を展開している。
撮影:小林優多郎
サムスン電子が折りたたみスマホを手がけてきたのは、当然のことながら、アップル・iPhoneとは違った攻め方で勝負をしたいという戦略がある。
サムスン電子のディスプレイ部隊が持つ最新技術をいち早くスマホに搭載することで、iPhoneからユーザーを奪いたい、ということだ。
ただ、サムスン電子として、折りたたみスマホを手がける上で、大きな壁として存在したのが「操作性」だ。
「Galaxy Z Fold4」の特徴。
撮影:山崎拓実
Galaxy Z Foldシリーズは開くとタブレットのようになるが、この大画面を生かすには、サイズに見合った操作体系が求められる。
しかし、操作の体感を決めているのはOSを手がけるグーグルのAndroidだ。また、実際にアプリを動かすとなると、アプリを提供しているさまざまなアプリベンダーの協力も必要となってくる。
ただ、アプリベンダーも開発を優先するのは世界で売れているスマホから順番に対応していく。もちろん、20万円を超える折りたたみスマホはなかなか売れていないため、アプリベンダーとしても優先度合いはかなり低い。
結果として、折りたたみスマホに見合った操作性を持つアプリはいつまで経っても出てこないのだ。
世界的に見れば、折りたたみスマホと言えば、サムスン電子だけでなく、中国のファーウェイやOPPOも手がけている。
しかし、中国市場がメインとなっているため、OSもAndroidはベースにしているものの、各メーカーが独自に手を入れた別物となっている。流通するアプリも、中国のアプリベンダーが作る、中国市場に特化したモノが多い。
つまり、サムスン電子は孤軍奮闘、自社でコツコツと折りたたみスマホにあった操作性をAndroidの上で動くようにカスタマイズし、アプリベンダーに頭を下げて口説いていくしかないなかった。
実機でわかる実力、カメラはPixel Foldの方が好印象
Pixel Foldの背面。
撮影:石川温
そんななか、グーグルが自社ブランドであるPixelで折りたたみスマホ「Pixel Fold」を開発。満を持して発売となる。
やはり注目したいのが、Androidの操作性だ。グーグルはここ数年かけて、折りたたみスマホやタブレットに最適化された操作性を開発してきた。
グーグルは自社アプリを50種類以上、大画面に最適化した。
撮影:石川温
実際、Pixel Foldの発売に向けてグーグルでは50以上の自社アプリに関して、折りたたみスマホやタブレットに向けてデザインを変えてきたという。
しかも今回、Androidを手がけるグーグルが自分たちで作ったPixel Foldだ。垂直統合モデルとして、ハードウェアとソフトウェアがどれだけ融合し、直感的な操作性を実現できているかが成功の鍵と言えるのだ。
Pixel Fold(開いた時)でBusiness Insider Japanのトップページを表示。
撮影:石川温
Google I/Oの会場では、Pixel Foldの実機を触ってみた。
Pixel Foldでは、開いたときの大画面を生かし、画面を2分割して、左右に別のアプリを起動、表示させることができる。
例えば、写真アプリを開きつつ、メッセージにドラッグアンドドロップして、添付して送るといった感じだ。
左側のフォトアプリから右側のメッセージアプリに写真をドラッグ&ドロップしている様子。
撮影:石川温
現地で実機を触って試すと、最初は複数の写真を選んでしまったりと、モタつくこともあったが、慣れれば必要な写真だけを選んでドラッグ&ドロップするといったことがスムーズにできた。
また、アプリを2分割画面で2つ、起動させたいときは、画面下からスワイプしてメニューバーを出し、そこからアプリアイコンを画面の左右、どちらかにドラッグ&ドロップすればいい。これもはじめは戸惑いがちだが、すぐに手慣れて操作ができる。
画面下にあるものが「メニューバー」。
撮影:石川温
これまで、アプリ間のデータのコピーなどはかなり面倒であったが、2分割画面であれば、パソコン感覚で操作できるのは魅力だ。
ビデオ会議アプリ「Google Meet」を使ってみたところ(通話相手は西田宗千佳氏)。
撮影:石川温
ビデオ通話アプリなども、ノートパソコンのようにテーブルの上に置いて、自分の顔をフロントカメラで撮影しつつ、会話できる。
コロナ禍でリアルな会議も復活しつつあるが、やはりリモート会議も引き続き多い。出先などでも、Pixel Foldだけでリモート会議に参加できるのは便利だ。
半分折った状態でカメラアプリを起動したところ。
撮影:石川温
また、Pixel Foldは閉じたときは一般的なスマホ、開いたときの2分割表示は一般的なスマホを2枚並べたような画角となっている。
そのため、例えばノートパソコンのような状態でカメラ撮影した際には、画面いっぱいにファインダーが表示される。
実はGalaxy Z Foldシリーズの場合、閉じたときの本体が細長いため、ノートパソコンのように折りたたんだ際、カメラを起動すると、かなり小さいファインダーしか表示されないのだ。
電子書籍アプリなどを大画面で見ようと思っても、結局、1画面分しか大きくされないと言うことが多い。その点、Pixel Foldでは2画面分で電子書籍が表示され、まるで紙の本のような感覚で読むことができた。
端末もアプリも同時に展開すべき
折りたたみスマホとアプリの関係は「ニワトリとタマゴ」。
撮影:石川温
とはいえ、Pixel FoldがGalaxy Z Foldに比べて「劇的に折りたたみに対応したUI(外観と使い勝手)になっているか」といえば、結構微妙だ。実際、Pixel FoldとGalaxy Z Foldでは操作体系がかなり近かったりする。
ただ、グーグルが折りたたみスマホに乗り出したことで、最適化したアプリが増えてくる可能性はあるだろう。
もちろん、グーグルとキャリアが本気でPixel Foldを売りまくり、折りたたみスマホが世に大量に出回る必要があるのは間違いない。
いまはまさに「ニワトリとタマゴ」の状態にある。
Androidスマートフォンがアップル・iPhoneに差をつけるには、まずは折りたたみスマホを普及させ、アプリを充実させるのが最優先事項といえそうだ。