修繕の前と後。
Rubia Daniels.
- 家が安く手に入ると聞いたアメリカのサンフランシスコ在住のルビア・ダニエルズさん(49)は、飛行機でイタリアのシチリア州ムッソメーリに向かった。
- ダニエルズさんは結局、3軒の朽ちかけた家を2019年に3ユーロ(約440円)で購入し、その修繕作業を進めている。
- イタリアでは多くの町が同様のスキームを導入し、人口減少の進む地方に人を住まわせようとしている。
イタリアの安い家について初めて話を聞いた時、ルビア・ダニエルズさんは自分の目で見てみなければと思った。
「びっくりしました。これは本当かどうか見てみなければ分からないと思いました」とサンフランシスコ在住のダニエルズさんはInsiderに語った。
「下調べをして、3日のうちに飛行機のチケット、レンタカー、ホテルを予約して出かけました」
シチリア州の小さな町ムッソメーリで過ごす10日間の旅が終わった時、ダニエルズさんは3軒のボロボロに壊れかけた家のオーナーになっていた。1軒あたり1ユーロ払った。2019年7月のことだった。
ムッソメーリの住宅プロジェクトを手掛けるCase 1 Euroの担当者も、この売買を認めた。
ルビア・ダニエルズさん。ムッソメーリの家の前で。
Rubia Daniels.
30年前にブラジルの首都ブラジリア郊外からアメリカのカリフォルニア州に移り住んだダニエルズさんは、イタリアのムッソメーリの町は自分の子どもの頃の家を思い出させたと話している。
「皆、ものすごく歓迎してくれて、わたしとコーヒーを飲もうとしてくれました。不動産仲介業者も姉妹のようにわたしを受け入れてくれて… 滞在中は毎日一緒にいました」とダニエルズさんは言う。
町の豊かな歴史や住民に魅了されたダニエルズさんは、放棄された家を修繕するというアイデアも気に入った。
修繕の前と後。
Rubia Daniels.
「環境にもやさしいんです」と太陽光発電産業で働くダニエルズさんは話している。
「新しく建てるのをやめて、既存の建物をリフォームすべきです」
新たに手に入れた家については、それぞれに異なる計画があるという。
「今、作業を進めている家はアートギャラリーにしようと思っています。もう1軒はわたしが滞在するための家です。そして3軒目はじ分にとって最大のプロジェクトになるのですが、地域社会に還元するためのウェルネスセンターにしたいんです」とダニエルズさんは語った。
ダニエルズさんが所有する家の1つ。
Rubia Daniels
ダニエルズさんは2019年の年末に向けて修繕作業を進めていたが、パンデミックの影響でプロジェクトをストップさせなければならなかった。
「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が広がって、現地に戻ることができなくなりました。なのでリノベーションは2022年に再開したばかりです」とダニエルズさんは語った。現在、サンフランシスコとムッソメーリの2拠点生活を送っていて、イタリアを訪れた際は毎回少なくとも1カ月はそこで過ごしている。
これまでに2軒の家の外観修繕作業が済んだが、最後の1軒はまだ手を付けていないという。
イタリアはダニエルズさんのような人を求めている
活気が失われた町に人口を再び増やそうとするイタリアの取り組みに飛びついたのは、ダニエルズさんだけではない。
2021年、イタリア南部の9つの自治体が過疎化の進む町や村に引っ越し、手伝ってくれるミレニアル世代に3万3000ドル(約450万円)を払うと提案した。いずれもカラブリア州にある町や村で、現地に引っ越してくれる40歳以下の若者がその対象だった。崖沿いの村チビタや海岸沿いの町アイエータなども名を連ねた。
これらの町や村に共通していたのは人口が2000人以下だったこと、あと数年でゴーストタウンになるところだったことだ。
カラブリア州では2020年の夏にも、チンクエフロンディという村が1ユーロで家を売りに出してニュースになっていた。「オペレーション・ビューティ」と呼ばれる、人口減少に歯止めをかけるためのこのプロジェクトでは12軒の家が1ユーロで売りに出された。
そして2019年にはInsiderでも報じたように、シチリア州中部のカンマラータがこの町現地にに住みたい人にタダで家を提供した。町長のヴィンセンツォ・ジャンブロン氏によると、これは町を「廃墟」にしないための取り組みの一環だった。
ただ、1ユーロで家を引き継ぐのは簡単なことではない。Insiderでも報じたように、"1ユーロの家"は荒廃しきっていて、住めるようにするだけでも大規模なリノベーションを必要とすることもある。