大丸松坂屋が冷凍グルメのサブスク事業。ナッシュなど既存宅配を意識「高級路線」で差別化

「ラクリッチ」で届く冷凍グルメの一例。

「ラクリッチ」で届く冷凍グルメの一例。

撮影:土屋咲花

コロナ禍による在宅勤務の浸透などによって、冷凍食品の人気が高まっている。

日本冷凍食品協会によると、2022年の冷凍食品の国内消費額1兆2065 億円(前年比110.5%)。1人当たりの年間消費量は23.9 キログラムで、過去最高を記録した。

こうした中、大丸松坂屋は新事業として、冷凍食品のサブスクリプションサービス「ラクリッチ」を5月16日から始める。価格は月額6500円からで、百貨店らしい高級路線を売りに既存の宅配弁当サービスと差別化を図る。

同社は15日に発表会を開き、新事業の意図や狙いを明かした。

バイヤー厳選冷凍グルメを宅配

RISTORANTE HONDAの「ポルチーニとエリンギのクリームソース・ニョッキ」。何度も試作を重ねて開発したという。

RISTORANTE HONDAの「ポルチーニとエリンギのクリームソース・ニョッキ」。何度も試作を重ねて開発したという。

撮影:土屋咲花

「ラクリッチ」は、大丸松坂屋の食通バイヤーが厳選した贅沢な冷凍グルメ6~10品が毎月届くサブスクリプションサービス。価格は送料込みで月額6500円、9000円、1万2000円の3種類だ(全て税込)。

高品質、高級路線を売りに、デパ地下グルメに近いコンセプトで商品を揃えた。ローンチ段階では赤坂四川飯店など全国の25ブランド・約50点の商品を扱い、うち7種類がオリジナル商品だ。

澤田太郎社長は

「お客様の生活そのものをサポートしていくということではなく、人生が豊かになったり、生活に彩りが生まれたりするような提案をするというのが我々らしいビジネスだと考えています。今回のラクリッチも、それを形にしたものです」

と説明する。

ターゲットは、「美味しいものを食べたくても忙しくてなかなか作れない人や、日常生活の食事にもうひと工夫したいといったニーズのある方々」(岡﨑路易DX推進部専任部長)だという。

商品は一人前程度の少量サイズで届け、幅広い層を狙う。一人暮らしや単身赴任者はそのまま一人分として、家族向けには日常の食事の「もう一皿」として楽しんでもらえるように設計した。

「想定しているユーザー層は本当にたくさんいます。百貨店のユーザーである40代、50代の可処分所得の多い層にはまず受け入れていただけるだろうと想定していますし、単身赴任している人で『日頃は会食だけど、ちょっと家でゆっくり食べたい』という時にも丁度よいサービスだと思っています。性別や同居家族の有無に縛られず、『手軽に楽で、リッチな体験ができる』という点を中心に置いています」(岡﨑専任部長)

という。

初年度は会員数3000人を目指し、5年後には売上高50億円を掲げる。

百貨店、先行宅配サービスそれぞれに対し差別化

DX推進部専任部長でラクリッチ事業責任者の岡﨑路易さん。

DX推進部専任部長でラクリッチ事業責任者の岡﨑路易さん。

撮影:土屋咲花

手軽で現代の「タイパ(タイムパフォーマンス)重視」のニーズに合った冷凍食品は、他の百貨店もデパ地下に売り場を作ったり、ECで贈答向けに展開したりするなどして力を入れる。

Business Insider Japanが既存の百貨店の冷凍食品事業との差別化に関して質問すると、

「宅配の冷凍のお弁当のプレイヤーがベンチャーですごくたくさん出てきています。どちらかというと意識したのは、そういったデジタル中心のビジネス」(岡﨑専任部長)

と回答があった。

デジタル中心の宅配サービスのスタートアップとしては、nosh(ナッシュ)や三ツ星ファームなどがよく知られている。

「対ベンチャーとの差別化でいうと、バイヤーの目利きという百貨店だからこその品質の高さ、百貨店に対してはサブスク形式であることなどで複合的に差別化を図っています」(岡﨑専任部長)

既存の百貨店との比較では、サブスク形式であること、届けるメニューの一部を「届くまでのお楽しみ」として公開しないことで独自路線を目指す。

岡﨑専任部長は、サービス設計の戦略について

「オンラインメディアやEC、SNSの発達により、食に対するニーズは旺盛であっても、情報が多すぎて何を選んだらいいのかわからない、選ぶことが面倒であるという声をよく聞くようになってきました。私たちが実施したリサーチにおいても、選ぶことに対する不満が多く聞かれました。そこで、バイヤーが独自にセレクトした冷凍グルメで、どんなラインナップになるかはお楽しみのサブスクという形で新たな価値を提案するに至りました」

と説明する。

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