マサチューセッツ州を拠点とする不動産投資家のダナ・ブルさん。所有物件の前で。
Courtesy of Dana Bull
不動産投資は思慮深く、賢く行えば、富を築くことができる。
Insiderは、不動産投資で経済的自立を達成した投資家たちに話を聞いた。その中には1万ドル(約135万円、1ドル=135円換算)にも満たない投資から始めた者も含まれている。
もし不動産購入、特に経済的自立を得るための手段としての投資に興味があるなら、まずは集合住宅への投資から始めてみることを検討するといいだろう。これは1棟の建物で2〜3、あるいは4世帯が別々に暮らせるように分割されているものをいう(それ以上の建物は一般的に商業不動産とみなされる)。
「投資初心者には、2〜3、あるいは4世帯向けの住宅が最適です」
マサチューセッツ州で5年間で7棟の集合住宅を購入した不動産投資家兼コンサルタントのダナ・ブル(Dana Bull)氏はそう話す。
これらの住宅は居住用物件とみなされるため、金融機関の住宅向けローンを利用できると彼女は指摘する。つまり、自らもその物件に入居するつもりであれば、頭金を安く抑える制度を利用することができるのだ。
商業不動産を購入しようとすると「より高額の頭金が必要で、金利も住宅ローンより高い金利が付く商業金融に対応する必要があります」と彼女は説明する。こうした状況は、初めて投資する人にとっては理想的なものではない。
他にも経済的なメリットは数多くあるとブル氏は話す。
彼女が「一括取得割引」と呼ぶものがある。集合住宅を購入したほうが、2つから4つの部屋を別々に購入する場合よりも支払う金額が少なくなる可能性が高いと、彼女は説明する。
「90万ドル(約1億2150万円)で3世帯の住宅を買うとします。もしそれを個別に購入すると、おそらく合計で100万ドル(約1億3500万円)以上支払うことになります」
まとめて一括で買うと、割引を受けられるということだ。
また、集合住宅を所有することでスケールメリットも得られる。一戸建て住宅と比較して、集合住宅に必要なメンテナンスについて考えてみると分かると彼女は説明する。
「テラスハウスを購入したとすると、屋根が雨漏りしても、修理する屋根は1つだけ。車道も1本であれば、雪かきが必要なのも1カ所ですむ。共用部のメンテナンスも1回ですみます」
一戸建てを数軒所有するよりも、集合住宅を所有する方がはるかに簡単で安価に投資できるのだ。
「4・3・2・1」戦略を駆使して集合住宅を購入する
ニューイングランド地方を拠点とする別の投資家も、不動産初心者には集合住宅から始めることを勧めている。ニューハンプシャー州に100ユニット以上の物件を所有する“木こりの大家”ことマット(Matt)氏は、特に「4・3・2・1」戦略を試すことを勧める。
“木こり大家”マット氏とその家族。
Courtesy of Matt and Ashley
これは、まず4ユニットの住宅を購入し、そのうち1つに自分が住みながら残りの3ユニットを貸し出すというものだ。こうすることで、自分の生活費をまかなえるだけでなく、物件の改修費分の収益も得ることができる。この投資手法は「ハウスハック」と呼ばれ、マット氏を含む多くの若い投資家が不動産業を始めるきっかけとしている。
彼は投資初心者がすぐにキャッシュフローを手にできるこの方法について、「不動産投資家という仕事が本当に好きかどうかを確かめることもできる」と述べている。購入、賃貸、テナント管理のプロセスを楽しみ、そこからポートフォリオを拡大したいのであれば、労力と費用のレベルを変えながら、このプロセスを繰り返すことになる。
「4・3・2・1」戦略に従った場合、4ユニットの住宅のすべてを貸し出して、次に3ユニットの住宅を購入し、そのうちの1つに住み、他の2つを貸し出す。さらにその次は2ユニットの住宅を購入して住み、残る1ユニットを貸すという流れになる。
この時点で、多数の物件を所有し、家賃収入で住居費のほとんど(あるいはすべて)をカバーできるようになり、貯蓄や不動産投資を続けるための資金を確保することができているはずだ。 マット氏の戦略の最終段階は戸建て住宅の購入だ。
「入居者に住宅ローンの大半を支払ってもらいながら、住宅投資の階段をのぼっていくわけです」
公的ローンを使って頭金を少なくして不動産投資を始める
約4年で10ユニットを購入したマイク・ニュートン(Mike Newton)氏は、2世帯用の住宅を購入し、ハウスハックを始めることで財務状況を好転させた。この戦略は「不動産投資を始める上で最も安全な方法の一つ」だと彼は説明する。
ニュートン氏はギャンブルのような投資をするための資金は持ち合わせていなかった。元ワシントン州兵の彼は、2018年に不動産投資を始めたいと思い立った時点では貯金は実質的にゼロだった。そこで、手始めに1棟目としてシアトル郊外の45万ドル(約6075万円)の2世帯用住宅を購入する資金を貯めるために、半年間は週90時間働いた。
2018年11月に契約を結ぶと、ニュートン氏はそのうちの1つに入居した。もう1つにはすでに入居者がおり、すぐに月1600ドル(約21万6000円)の家賃収入を得るようになったという。さらに、ニュートン氏が所有する住宅の3ベッドルームの1つに幼なじみが入居して、毎月500ドル(約6万7500円)の家賃を払ってくれるようになった。
2人の入居者から入る2100ドル(約28万3500円)の家賃が、毎月の住宅ローン支払額2750ドル(約37万1250円)の大部分をカバーしていたが、「仮に2人が失業して支払いができなくなったとしても、フルタイムの仕事を持つ私一人で支払いは可能だった」と彼は言う。
「複数の対応策を持っておきたかったんです」
ワシントン州に住むニュートン氏と彼の息子。
Courtesy of Mike Newton
購入物件に少なくとも1年間入居するつもりなら、テナントで埋めることを目論んで純粋な投資物件を購入するよりも、この方法で入居者向け融資を利用したほうが、少ない頭金で物件を購入することができる。これは、金融機関が住宅ローンより投資用不動産ローンのほうがリスクが高いと見なしているためだ。
ニュートン氏は持ち家である2ユニットの住宅を5%の頭金(2万2500ドル〔約303万7500円〕)で購入することができた。20%(45万ドルの住宅では9万ドル〔約1215万円〕)の頭金を貯めるより、はるかに現実的な方法だった。
彼は今も2ユニットの住宅に住んでいるが、この4年間で賃貸料が値上がりしたため、彼自身の毎月の住宅支出は約300ドル(約4万500円)に下がっている。その分、給料の大半を節約して、将来の投資資金を貯めているという。
ただし、集合住宅はどの地域にも豊富にあるわけではない。
ニューイングランドの市場には、たまたまこのような物件が多く存在していた。この地域の都市では、1800年代後半から1900年代前半にかけて集合住宅が人気を集めて多く建設され、ゾーニングの制限で建設が妨げられることもなかったからだ。
もし、自分の住んでいる地域に集合住宅がないのであれば、別のユニットとして貸し出すことができる、改装できる地下室がある物件や、複数の部屋があって貸し出すことができる住宅を探すといいだろう、とマット氏は話す。
「ルームメイトに家賃を支払ってもらえばいい。そして彼らが支払ってくれる家賃で、自分の住宅ローンの支払いを軽減すればいいんです」