シルビア・ヤブロンスキー氏は9億ドルの資産を運用するディファイアンスETFsのCEO兼最高投資責任者だ。
Defiance ETFs
AI(人工知能)とその革新的な力に関する話題がニュースを賑わすなか、投資家たちもこの動きに乗ろうと躍起になっている。
これは、ディファイアンスETFs(Defiance ETFs)のCEO兼チーフ投資ストラテジストであるシルビア・ヤブロンスキー氏が、辛抱強く待ち望んでいた現象だ。
「AIは第4次産業革命をもたらすでしょう」と、彼女は最近のインタビューでInsiderに語り、AIが環境科学、無人運転車、製造、医療、小売、融資、広告などの分野を発展させる可能性を挙げた。
「多くの投資家やマーケットウォッチャーは、AIがどれほど強力であるか、どれほど巨大な価値があるか、そしてコンピューターが人間のように考え、振る舞うようになることが何を意味するのかを理解し始めています」
ヤブロンスキー氏は9億ドル(約1215億円、1ドル=135円換算)の資産を運用している。また、量子コンピューティングと機械学習の企業に投資するファンド、Defiance Quantum ETF(QTUM)の統括も務めている。同ファンドは、年初来で11%以上、2018年9月の運用開始以来の通算では約81%のリターンを出している。
AIにはさまざまな産業を前進させる力があるので、ヤブロンスキー氏の投資戦略は、より一般的なアプローチになっている。
「私たちは基本的にあらゆるセクターに目を向け、どの企業がそのセクターのイノベーションをリードしているかを見極めようとしています」
しかし、アーリーステージ投資と同様、どの企業がAIや自然言語処理を席巻し、どの企業が廃れて消えていくかを正確に予測することは困難だ。このリスクバランスをとるために、ヤブロンスキー氏はマイクロソフト(Microsoft)のような業界最大手の企業を含めることで、慎重にポートフォリオを強化している。
「こうした企業は明確なリーダーであり、何が起ころうと、AI、データプライシング、機械学習、量子コンピューティングに投資するでしょう」と彼女は述べる。
「彼らの投資はおそらく成功し、いずれ収益の柱になっていくでしょう。もしそれに遅れが生じた場合、例えば時間がかかったり研究開発費がかさんだりしても、こういった優良企業には他の事業もあるので、バスケットのヘッジとしては非常に優れていると考えています」
一方、規模が小さく、新しく、知名度の低い企業は、収益源が集中する傾向があるため、個々の企業の評価は慎重に行っている。ヤブロンスキー氏によれば、各企業の損益計算書、時価総額、取引可能性、流動性、献身性、AIによる収益創出などを検討するのだという。
「これらの企業の中には、研究開発に失敗したり、貸付けのレバレッジが高く、金利が上昇し続けたりして最終的に生き残れず衰退してしまうような中小企業もあるかもしれません。こうしたリスクはある程度覚悟しなければなりません」と彼女は言う。
「しかし、たとえそのような事態に陥ったとしても、クオリティの高いハイテク企業がヘッジとしてバスケットに入っているので大丈夫です。私たちは、これを『バランス+チャンス』と呼んでいます」
注目すべきAI関連銘柄6選
もちろん、ヤブロンスキー氏は分散投資のメリットを享受しながらAIへのエクスポージャーを得るための良い手段として、投資家に上場投資信託(ETF)を検討するようにも勧めている。Defiance Quantum ETF(QTUM)のほかにも、Global X Robotics & Artificial Intelligence ETF(BOTZ)、ALPS Disruptive Technologies ETF(DTEC)、iShares Robotics and Artificial Intelligence Multisector ETF(ITRBO)などの選択肢がある。
また、テック企業大手のマイクロソフト(Microsoft)やグーグル(Google)を含む、彼女が注目する6つの個別銘柄を挙げてくれた。
マイクロソフトはオープンAI(OpenAI)と提携しただけでなく、グーグルの競合となるであろうChatGPTを搭載した新しい検索エンジンを発表した。またグーグルも最近、生成AIチャットボット「Bard(バード)」を発表し、検索に革命を起こす可能性を持っている、とヤブロンスキー氏は説明する。
「マイクロソフトとグーグルは、検索エンジンやウェブサービスを通じ、さまざまな段階でAIをリードする存在になるでしょう」
また彼女は「AIの寵児」になる可能性を秘めたエヌビディア(Nvidia)とアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(Advanced Micro Devices:AMD)を気に入っているという。
「半導体チップは基本的にAIの主役です。半導体チップがなければ、データ処理もそのスピードも何もありません。この2社は、AIのすべてのユースケースにおいて、かなり重要なプレイヤーです」
ヤブロンスキー氏は「今後5年間でデータ処理量が40%増加すると見込まれており、この2社の総売上は約3000億ドル(約40兆5000億円)に達する可能性があります」と語る。さらに、安定したバランスシートを持つエヌビディアとAMDは、この分野ではファンダメンタルズ的にも優れた企業だ。
アマゾン(Amazon)もウェブサービスと機械学習部門のおかげで高値を更新している銘柄だ。同社は、品揃えや物流を改善することで顧客の買い物体験を最適化することに投資してきたとヤブロンスキー氏は言う。
「アマゾンは過去のデータに対して機械学習と量子コンピューティングを使い、将来の結果を予測するようになるでしょう。同社は小売業と考えがちですが、企業の取引や 売上、離職率を改善する方法を考え、この種のアプリケーションを提供する存在にもなり得るのです」
ヤブロンスキー氏は最後に、セキュリティカメラ用のプロセッサを提供するアンバレラ(Ambarella)を選んだ。同社はファンダメンタルズ的に健全で、負債も少なく、バランスシートも健全だ。
「AIによる自動運転車の鍵となる要素とは何か。それはカメラと視覚化でしょう。アンバレラは、その主要な構成要素になり得るテック企業です」