古代エジプトでは敵の手を支配者に献上していた

発掘された手。

発掘された手。

Gresky, J., Bietak, M., Petiti, E. et al. Sci Rep 2023

  • 3500年前の古代エジプトの墓から切断された12個の手が発見された。
  • その分析結果によると、兵士たちは殺された敵の手を切断し、支配者に献上していたと考えられる。
  • その手と引き換えに、兵士には「名誉の黄金」が授与されたという。

エジプト北東部、3500年前の宮殿周辺にある第15王朝を支配したヒクソスのカヤン王の墓から、切断された12個の手が発見された。それらは戦場での兵士の勇気を証明するために、王に贈られた可能性が高いことが、新たな研究で明らかになった。

2011年に発見されたこれらの手は、少なくとも14歳から21歳までの12人のものであったことが分かっている。死後すぐに遺体から慎重に切り取られ、玉座の間周辺に納められたと思われる。

この研究をまとめた論文の共著者であるオーストリア科学アカデミーの考古学者マンフレッド・ビータク(Manfred Bietak)は、「エジプトで手の切断が行われていたことを示す初めての物的証拠だ」とInsiderに語っている。

実用的な目的のある陰惨な戦利品

宮殿で発見された手。

宮殿で発見された手。

Gresky, J., Bietak, M., Petiti, E. et al. Sci Rep 2023

考古学的な記録によると、大戦争の後には切断された手が王に贈られたことが示唆されていた。

「エジプト軍によってどれだけの敵が殺されたのかを知るために、手の数が数えられていた」とビータクは言う。

これらの「トロフィー(戦利品)」には宗教的な意味合いもあったと見られる。ビータクによると、手を切断することで、例えば兵士が冥界で戦うのを防ぐことができるとされていた。王がそれを威嚇のために使うこともあったようだ。アメノフィス2世は、抵抗勢力を抑えるために、敵対する7人の王子の遺体の一部を見せしめにしたとされている。

戦利品は必ずしも手である必要はなかった。エジプト人は割礼を受けていないリビア兵の陰茎を切り取って持ち帰ったとも考えられている。

手と引き換えに「名誉の黄金」が授与された

「名誉の黄金」を身につけた王族男性のレリーフ。紀元前1353年から1336年のものとされる。

「名誉の黄金」を身につけた王族男性のレリーフ。紀元前1353年から1336年のものとされる。

Purchase, Lila Acheson Wallace Gift and Louis V. Bell Fund, 1991

これらの戦利品を支配者に贈ることは、それと引き換えに兵士が黄金を授与されるという陰惨な儀式の一部であった可能性がある。考古学者はこの儀式を「名誉の黄金」あるいは「英雄的な勇気」と呼んでいる。この黄金は、通常、金のビーズでできたネックレスの形をしていた。

この儀式について残された記録は、主に第18王朝から第20王朝のものだ。

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