ChatGPTとIoTが結びつくと何が起こる? 生成AIが起こす革命の真髄は「ヨコへの拡張」

経営理論でイシューを語ろう

Jamesteohart/Shutterstock

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても平易に読み通せます。

ChatGPTなど生成AIはめまぐるしくバージョンアップを重ねています。しかし「テキストだけでなく画像も」といった進化はいわば“タテ”の変化であり、私たちがより注目すべきは“ヨコ”への拡張だ、と入山先生は指摘します。果たしてそのヨコの変化の中身とは? それによって産業はどう変わっていくのでしょうか?

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ChatGPTが世界をどう変えるか

こんにちは、入山章栄です。

みなさんはもうChatGPTを使ってみたでしょうか。もしまだだという方は、OpenAIのサイトに行って一回触ってみると、どういうものかすぐ分かると思いますよ。

今回は前回に引き続き、ChatGPTが世界をどう変えるかという話題です。


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

前回、入山先生は「Wisdom(英知)による価値判断だけはAIにはできない」とおっしゃっていました。ということは今後はこの部分が、いろいろな業界において重要性を増すということですね。

天才哲学者として知られるマルクス・ガブリエルは著書の中で「これからの企業は、経理担当者を必ず雇うように哲学者も雇うといいだろう」と述べていました。Wisdomで正しい判断をするという意味では、哲学的な思考力を身につけることが重要かもしれませんね。


おっしゃる通りで、「正しい・正しくない」というのは、そんなに簡単に決められることではないんですよ。これからは宗教・哲学・思想の時代だと言われていますが、国も企業も個人ももっと宗教や哲学や思想を学んで、これからどういう社会をつくりたいのか、しっかり考えていく必要があると思います。


BIJ編集部・常盤

BIJ編集部・常盤

そう考えると、これから人文系の学科が重要性を増しますね。


本当にそうです。ただし今までのように、ただ「私は哲学について勉強したから哲学の知識があります」というだけでは意味がない。もう知識なら簡単に手に入りますからね。問題は、自分自身で考えた主観で、意見を語れるかどうかです。ChatGPTが一番できないのがそれですから。

アフターChatGPTの世界とは

ところで、前回は教師をはじめとした「言語系の職業」がなくなるという予想を発表しましたが、僕はこれはほんの序の口だと思っています。なぜならChatGPTのような言語生成モデルのパフォーマンスは、もっと果てしなく上がっていくと同時に、横展開も始まるからです。

つまり、今みなさんはChatGPTのVer.3.5を使っていて、Ver.4もすでに出ていて、5、6、7……と今後もリリースされていくことが想定できる。そうなるとChatGPTそのものはもっとパワーアップするわけですね。このような「タテの変化」に加えて、今度はそこに横軸が通るようになる。つまり、別の技術と結びつくようになる。

まずこの先、ChatGPTは「マルチモーダル」といって、画像や映像などとつながるようになります。映像とか動画とか、さまざまな表現手段を同時に生成できるようになる。

ということは、このあと5、6……とバージョンアップしていくと、われわれがChatGPTに「こういう動画をつくって」というと、瞬時に映画のようなものをつくってくれるようになっていくことが予想されます。ドキュメンタリー作品とか、少なくともアニメのようなものは、より簡単につくれるようになるでしょう。

そしてChatGPTのような生成AIはそれなりの費用をかければすぐにつくれるので、ChatGPTを開発したOpenAIだけでなく、いろいろな会社が作り始めています。GoogleもBartを出しましたよね。加えてMeta(旧Facebook)が年内に動画生成のAIをつくるでしょう。これがChatGPTと組むとめちゃめちゃ強い。僕の予想では、たぶんMetaはFacebookなどで再生される動画CMをつくると思います。

ご存じのようにデジタル広告というのは、狙いたい人に、狙いたいタイミングで、狙いたい広告をぶつけることで効果を上げる。今までは広告をあらかじめつくっておいて、その中から選んでぶつけていたわけです。でも、僕の予想ではこれからおそらく一瞬で、「その人に最も効果的なCMをその場でほぼ自動でつくってすぐに見せにいく」ことができるようになるでしょう。

例えば先日、WBCで大谷翔平選手が活躍しましたが、もし決勝でダルビッシュ選手が活躍していたら、ダルビッシュ選手を起用したCMをその場で生成して流す、なんてこともできるようになるはずです。

ChatGPTとIoTが結び付くと…

それだけではありません。ChatGPTは、さらに横に広がっていきます。つまりAPIのプラグインによって、いろいろなソフトウェアとChatGPTがつながっていくからです。このあたりの変化の影響によって失われる仕事の予測はまだありませんが、僕はここが激変すると思っています。数年後はとんでもないことになる可能性が高い。

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