キャロライン・カルダモンさん。
Courtesy of Caroline Cardamone
- キャロライン・カルダモンさん(24)は、アメリカのウィスコンシン州にある朝食付きホテルの運営に携わっている。
- カルダモンさんは接客が好きで、会社勤めに落ち着かずよかったと考えている。
- アメリカでは、より良い暮らしを求めて会社勤めを辞める人たちが増えている。
キャロライン・カルダモンさんの1日はウィスコンシン州にある「Thorp House Inn & Cottages」という朝食付きホテルで、宿泊客のためにコーヒーと朝食を用意したり、これから泊まりに来る人たちのためにチェックインの準備をすることから始まる。
カルダモンさんは客室と、宿泊客が暖炉と港の景色を楽しめるコテージの管理責任者だ。2021年9月からここで働いていて、2022年6月に今のポジションに昇進した。2021年の夏に大学を卒業し、ウィスコンシン州ドア郡に引っ越してきたカルダモンさんは、ここで働き始める前はマリーナや果樹園で働いていた。
ただ、カルダモンさんは最初からこのようなキャリアを考えていたわけではない。彼女の計画に影響を与えたのはパンデミックだ。そして彼女もまた、労働市場において会社勤めを追求しなくても満足できることに気付いた1人だ。
例えば、ある女性はバーンアウト(燃え尽き症候群)を経験した仕事を辞め、教育の仕事をパートタイムでしながら自身のビジネスを立ち上げた話をInsiderにシェアしてくれた。子育てや自分のビジネス、柔軟な働き方、自分がもっと幸せになれる仕事やライフスタイルを手に入れるために給料のいいフルタイムの仕事を辞めることにした人や、会社勤め自体を辞めた人もいる。
Insiderの取材に、カルダモンさんは新しいスキルを身につけられる仕事がしたかったと語り、今の仕事はその条件に合っているという。
「この仕事で人や人との関わり、このホテルの歴史など多くのことを学んでいます。毎日が刺激的で新鮮です。これがわたしが最初にこの仕事に応募した時に求めていたものです」
「会社で与えられた役割に合わせる」というプレッシャーから解放されて
大学ではドイツ語を学び、コンピューターサイエンスと宗教学を副専攻したカルダモンさんは、卒業後はドイツで英語を教えることを希望していた。ところがパンデミックでロックダウン(都市封鎖)があったり、留学の機会が得られなかったことで、「ドイツ語の道は開かずの扉を叩いているような感じで、うまくいくとは思えませんでした」とカルダモンさんは当時を振り返った。そこで大学卒業後はアメリカで就職することにした。
「会社勤めの仕事を探していました。わたしの身近にいる人は皆、大学院に進まないなら会社勤めをしていたからです」
ただ、テクノロジー企業を中心にいくつかの面接を受けた後、自分が求めているのはこういう仕事ではないとカルダモンさんは気付いた。
キャロライン・カルダモンさん。
Courtesy of Caroline Cardamone.
「わたしにあったライフスタイルとは思えなかったんです。それでもう一度考え直そう、と」
「仕事を見つけなければという気持ちでした。お金は稼がなくちゃいけないけど、どうすれば自分は幸せになれるだろう? 面白いことを学べそうなのはどんな仕事だろう?」と自問自答したという。
大学卒業後、カルダモンさんは果樹園やワイナリーで季節限定で働き始めた。観光客を案内して回ったり、ワインを提供する仕事だった。マリーナでも働いた。ボートに燃料を入れるのも彼女の担当だった。カルダモンさんはこの地域にとどまることを決め、フルタイムの仕事を探した。こうして見つけたのが、新聞に広告が出ていた今の仕事だ。
「人と接する仕事、毎日がちょっとずつ変わっていくような仕事がいいなと思っていました」
カルダモンさんは人々が長期休暇を過ごしたり、観光客として短期間訪れたりするような場所に移り住むことができて良かったと感じている。
「今朝はビーチへ行って、数時間パドルボードに乗ってきました。この辺りを歩いている人は皆、おそらく年に一度この景色を眺める観光客でしょう。わたしはここに住んでいるんです」
夏は忙しくなるとはいえ休みもあるし、オフシーズンには旅行にも行ける —— ワーク・ライフ・バランスが取れているとカルダモンさんは言う。
長時間労働、肉体労働… それでも「価値はある」
台所を準備し、パンや地元の食材を使って朝食を用意するのもカルダモンさんの日々の仕事の一環だ。宿泊客とコミュニケーションを取った後は客室の備品を補充したり、掃除をしたりする。ホテルの管理責任者として、他の従業員が仕事上必要とするものを用意するのも彼女の仕事だ。
「長時間労働になる日もあるし、肉体労働も多いです。トイレ掃除やベッドメイクも片っ端からやります。でも、その価値はありますよ」
カルダモンさんはハンドル名「@innkeepercaroline」でTikTokもやっていて、日々の仕事の様子をシェアしている。フォロワーも数千人いる。そこで周りとはちょっと違うキャリアを歩むことで経験したメリットについても語っている。例えばある動画には「まだ24歳ですが、9時5時の騒がしい会社勤めよりもB&Bを運営する穏やかな生活を選んだおかげで幸せに」との文章を添えている。
別の動画では「わたしの前回の動画に、多くの人たちがこういう仕事をしたいとコメントしていました。ただし、もっとお金を稼ぎたいと… もっともね」と書いている。
カルダモンさんは年収およそ5万8000ドル(約810万円)で、家賃については一部補助があるとInsiderに語った。
ある動画のキャプションには「この道を選んだ時、この仕事で十分生活できると思った。ただ、わたしは幸せになるために、もっと稼げるチャンスをあきらめた。自分にとっては、どんなライフスタイルをより重視するかということ」とある。
どんな仕事をするにせよ「幸せ」が最優先されるべき
「9時5時の仕事が好きな人もいることは分かっています。彼らは事務仕事を求めているんです。そこで成長し、それが彼らを幸せにするんです」
「わたしがマイページで言おうとしているのは、自分を幸せにしてくれるものに集中すべきだということです」とカルダモンさんはTikTokの動画で語った。
「自分を幸せにするキャリアを選ぶべきです。周りがやっていること、周りがあなたにやるようプレッシャーをかけていることよりも、それを大事にするべきです」
そう語るカルダモンさんも、9時5時の仕事や会社勤めに「なんとかして自分をはめ込もうとしていた」という。「自分にできるのはそれしかないと思っていたから」だ。
「でも、他にもできることはたくさんあるし、そういうことをしながら良い生活を送ることもできると知ってもらいたいです。これから卒業する人たちはなおさらです」とカルダモンさんは話している。