アップルが金融分野への参入を本格化させている。
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アップル(Apple)は4月17日、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)と提携して年利4.15%の預金口座を立ち上げた。フォーブスが報じたところによれば、立ち上げから最初の4日間で10億ドル(約1350億円、1ドル=135円換算)近くの預金が集まったという。
この預金口座を利用できるのは、アップルのクレジットカード「Apple Card」を持っている人のみだが、最低入金額や残高の要件はない。利用者はiPhoneのWalletアプリを通じてサインアップできる。
フォーブスによれば、サービス開始から4日以内に約24万件の口座が開設されたとのこと。単純計算で1口座あたり約4100ドル(約55万3500円)が入金されたことになる。
このアップルの新サービスを注視している人物がいる。イギリス発のネオバンク、レボリュート(Revolut)のアメリカ拠点のCEO、シド・ヤホディア(Sid Jajodia)だ。
ヤホディアは5月10日にニューヨークで開催されたフィンテック・ネクサス(Fintech Nexus)カンファレンスのパネルでこう語っている。
「アップルは顧客基盤を確立しており、最大の流通チャネルの1つとなっています。ゴールドマンにとっては大変素晴らしいことであり、アップルと提携する他の銀行にとっても素晴らしいことです」
アップルは近年、特にアメリカで存在感をさらに増している。
カウンターポイント・リサーチ(Counterpoint Research)のレポートによれば、2022年第4四半期にアメリカにおけるアップルのスマートフォン市場シェアは57%に達し、初めてアンドロイド(Android)スマートフォンを上回った。
アップルと提携できる企業には大変な恩恵があるが、アップルがどことでも提携するわけではない。
「逆に言えば、アップルは誰彼かまわずフィンテック関係を結ぶためにこのプラットフォームを開放するわけではないということです。アップルと提携するには、適切な規模、資本基盤の強固さ、信頼性が必要です。他の企業がこの市場でやっていくにはここが課題です」(ヤホディア)
アップルの利率の妥当性は?
見方によっては、アップルが提供する年利4.15%は競争力がある。
米連邦預金保険公社(FDIC)が5月15日に発表したところによれば、全米平均の年利は0.40%である。アップルの預金口座はこの平均の10倍だ。
しかし改めて見れば、アップルと競合するであろう他のデジタル銀行と比較して、同社の年利がさほど際立っているわけではない。
レボリュートは最大4.25%、HMBradleyは最大4.50%、ソーファイ(SoFi)は4.2%の年利を提供している。そして、ChimeやVaroといったネオバンクのリーディング企業は、それぞれ年利2.00%と最大年利5.00%を謳っている。
ということで、アップルは最も高い年利を謳っているわけではないが、それでもやはり競争力がある。そして同社の大規模な流通チャネルと組み合わされば、既存のネオバンクに取って代わるには十分かもしれない。
「預金の利率でいえば、おそらくアップルよりも高い企業はあるでしょう。しかしその利率の多くを市場の預金へと吸い上げる能力にかけては、アップルの右に出る者はいません」(ヤホディア)
アップルの最近の業界進出は、「預金金利や手数料の設定だけで他社をリードしている企業にとっては脅威」だと、ヤホディアは付け加えた。