出典:クラスター
国内最大級のメタバースプラットフォーム「cluster」の運営会社・クラスターは、5月17日に、シリーズDで52億円の資金調達を実施したと発表した。累計調達金額は66億円にのぼる。
引受先には、スパークス・アセット・マネジメントをリード投資家に、SBIインベストメント、オリックス、KDDI Open Innovation Fund 3号、スカイランドベンチャーズ、三井住友信託銀行、NOBUNAGAキャピタルビレッジが名を連ねる。
調達した資金は、既存のcluster事業関連の子会社の設立に加え、北米への海外進出や教育分野への参入に活用していくという。
エンタメだけではない。新卒採用イベントにもメタバースを活用
撮影:Business Insider Japan
純粋なバーチャル環境としてのメタバースだけではなく、リアルにバーチャルを融合した「広義のメタバース」を含めた市場の拡大が続いている。三菱総合研究所は、2025年には市場規模が4兆円程度に、2030年には約24兆円規模に拡大すると試算する。
clusterはその中でも、VRゴーグルがなくともスマホやPCから、数万人単位で同時接続が可能なメタバースプラットフォームとして知られている存在だ。2023年1月時点で累計動員数2000万人を突破している。
コロナ禍の2020年には、KDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会が中心となって同サービス上で開催した「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」が話題に。2022年は世界中から約30万人が参加した。
バーチャル渋谷のハロウィン。
出典:渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト
エンターテイメント領域以外にも、過去には展示会やカンファレンスなど法人向けのイベントの提供実績もある。2021年には、三菱UFJ信託銀行の新卒採用イベントをcluster内で開催し、実際の大会議室を再現したことで、コロナ禍で困難だった就活生のオフィス訪問を実現した。
バーチャル空間内に作ったオフィス。
出典:クラスター
海外進出は北米から。アジア圏は様子を見てから…
今回の資金調達について、クラスターは
「海外展開・法人のお客様とクリエイターの皆様にclusterをご活用いただけるサービスを展開する子会社の設立・教育分野への進出等、さらなる事業拡大に向けてプロダクト開発やマーケティング強化を図って参ります」
と発表している。
クラスターはBusiness Insider Japanの取材に対して、
「まずは北米からスタートし、次に欧州ということを考えております。アジア圏は北米・欧州での感触を見てからの検討としており、現時点では優先度は低いという考え方でございます」(クラスター広報)
と海外展開の方針を語る。
出典:TYPE-MOON/FGO PROJECT PR TIMESより引用
クラスターでは、今回の北米の本格進出に先駆け、2022年7月に、ノーツのゲームブランド「TYPE-MOON」によるアプリゲーム「Fate/Grand Order」(北米地域向け英語版)のプレイヤー向けのバーチャルイベントを、cluster内で開催していた。
北米事業では、こういったイベント事業の展開を継続していくとともに
「英語版のBtoCアプリのユーザー増加を目的とし、IPを活用したユーザー向けのPR企画などを通じてサービス認知を高めていく予定」(クラスター広報)
だとしている。
また、教育事業については、現在専門学校でのワークショップなど「『中高大学向けのメタバース講座』の準備を進行中」(クラスター広報)で、今後、メタバースを通じたデジタル人材の育成に力を入れていくとしている。
クラスターの加藤直人氏は、プレスリリースで、
「私たちは、このプラットフォームが様々な分野で革新をもたらし、より多くの人々が恩恵を受けられる世界を実現するために全力を尽くします」
と、事業拡大の意気込みをコメントしている。