ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにあるマジックキングダム(2022年4月)。
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- ディズニー・ワールドは4月、アメリカのフロリダ州における「自治権」を維持するため、ロン・デサンティス知事を訴えた。
- ディズニーはここ1年以上、フロリダ州知事と激しく対立している。
- ただ、ディズニーの専門家は、ディズニーはフロリダ州から抜け出せないと話している。
ディズニーは先週、フロリダ州で予定していた10億ドル(約1380億円)近いコーポレートキャンパスの建設計画を白紙にすると発表し、ロン・デサンティス知事との戦いをエスカレートさせた。
大企業ディズニーと2024年の大統領選への立候補が期待されるデサンティス知事はここ1年以上激しく対立している。ただ、対立がますます激しさを増す中でも、基本的にはディズニーがフロリダ州を離れることはない。
フロリダ州におけるディズニー・ワールドの歴史に詳しい専門家は、その巨額な運営費と広大な敷地から、ディズニーはフロリダという土地から離れられないとInsiderに話している。
「ディズニーはあそこから抜け出せません」と『Married to the Mouse: Walt Disney World and Orlando』の著者リチャード・フォグルソン(Richard Foglesong)氏はInsiderに語った。
「そしてフロリダ州もディズニーから逃れられないのです」
ディズニーは動けない
工場のような施設は容易に移すことができるものの、ホテル、アトラクション、舞台、店、レストランからなる広さ2万7520エーカーのディズニー・ワールドはとにかく広すぎるのだとフォグルソン氏は言う。新たにパークを建設するとなると、その費用は天文学的な数字になるだろう。
ディズニーパーク、ディズニーリゾートはフロリダ最大の集客施設だが、ディズニーもフロリダ州からさまざまな恩恵を受けている。同社が享受しているいわゆる「自治権」 —— 現在訴訟になっている問題の1つ —— は競合する他のテーマパークとは違って、ディズニーが建築物の規制当局に事前に計画を通す必要がないことを意味し、時間と資金の節約になっている。
ディズニーがフロリダ州に初めて進出したのは1960年代のことで、その頃のフロリダ州にはこれといった強みもなく、企業誘致に苦戦していた。ディズニーはいろいろな要求ができると分かっていた。
「ディズニーはそのことに気付き、あらゆる特権を前もって手に入れ、固定化しようとしたのです」とフォグルソン氏は語った。
「それを手に入れるチャンスはもう二度とないと考えたからです」
加えて、この地域の数多くの中小企業はフロリダ州にたくさんの観光客をもたらすディズニーに依存している。その現実は5月17日の理事会で浮き彫りになった。周辺地域の中小企業の経営者たちが、新たな税金や通行料が発生する可能性について懸念を表明したのだ。
ディズニーにはフロリダ州での投資をやめる余裕もないとフォグルソン氏は続けた。実際、ディズニーは今後10年間で170億ドルをフロリダ州に投じる予定だ。
これはテーマパークの来場者の70%がリピーターであることを考えると、ディズニーは常に新しいものを提供し続ける必要があるからだと同氏は話している。
「素晴らしいことですが、脅威でもあります。同じものを見るために(来場者を)呼び戻すことなどできるでしょうか? 新しい乗り物やアトラクションを用意しなければならないのです」
ディズニーとの戦いにのめり込むデサンティス知事を他の共和党員は非難
2024年の大統領選の共和党候補指名を目指すニッキー・ヘイリー氏は、ディズニーにフロリダ州からサウスカロライナ州へ移るよう呼びかけた。
Oficina del primer ministro de Corea, John Raoux, File, and Patrick Semansky/AP Photo
こうした中、2024年の大統領選の共和党候補指名を目指しているトランプ政権で国連大使を務めたニッキー・ヘイリー氏は4月、ディズニーに対してサウスカロライナ州への移転を提案した。
2011年から2017年までサウスカロライナ州の知事を務めたヘイリー氏は、サウスカロライナ州の州議会議員たちはディズニーを歓迎するだろうと語った。同氏は「喜んで」ディズニーを州知事や州議会に紹介するとFox Newsで話した。
その後、ヘイリー氏は自身の提案について「素晴らしい気候、素晴らしい人々に恵まれ、サウスカロライナ州ではいつでも素晴らしい1日を過ごすことができる! サウスカロライナ州は"ウォーク(woke:環境問題や社会問題などに対する意識が高い)"ではないけれど、聖人ぶっている(sanctimonious)わけでもない」とツイッターで補足した。
ヘイリー氏はここで「聖人ぶっている(sanctimonious)」という言葉をデサンティス知事に対する遠回しな攻撃として使っている —— トランプ前大統領がデサンティス知事に対して「DeSanctimonious」というニックネームを使っていることを受けてのことだ。ヘイリー氏のこの遠回しな攻撃をデサンティス知事の大統領選への立候補を支援するスーパーPAC(特別政治活動委員会)「Never Back Down」は見逃さなかった。
「ウォーク企業を受け入れ、同時にトランプのダサい攻撃を真似する? 誰かが副社長のオーディションに必死になっているぞ!」とNever Back Downはツイートした。
ヘイリー氏の発言は、ディズニーが土地の管理権を維持するために訴訟を起こし、デサンティス知事との確執をエスカレートさせる中で飛び出したものだった。この訴訟でディズニーは、同社が公立学校でのジェンダーや性的指向に関する教育を制限する「教育における親の権利」法案 (HB 1557、通称「ゲイと言ってはいけない」法案)と戦うと宣言したことで、デサンティス知事が同社に対して報復に出たと主張している。
デサンティス知事 —— まだ正式に大統領選への立候補を表明してはいない —— を批判している大統領選の候補者は、ヘイリー氏だけではない。トランプ前大統領はディズニーとの対決姿勢を一層強めるデサンティス氏をバカにし、2024年の大統領選への立候補について近く自身の決断を発表する予定のマイク・ペンス前副大統領は、保守主義の価値観とは正反対の行為だと批判した。
2024年の大統領選の共和党候補指名を目指すアーカンソー州の前知事アサ・ハッチンソン(Asa Hutchinson)氏は「行政が過度にビジネスを罰するべきではない」と話している。