248ベンチャーズのチーフストラテジスト、リンジー・ベル氏。
Ally
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを停止し、当面は政策金利を現在の水準に据え置くだろうとの観測が投資家の間で広がっている。また、フェデラルファンド金利先物価格に示唆されるように、FRBがまもなく利下げを開始することへの期待の広がりも見られる。
しかし、市場関係者が皆同じ方向に賭けている時、それが現実によって劇的に修正されることもある。248ベンチャーズ(248 Ventures)のチーフストラテジストで、以前はアリー・ファイナンシャル(Ally Financial)でチーフマーケット&マネーストラテジストを務めていたリンジー・ベル(Lindsey Bell)氏は、FRBは利上げを停止しない可能性があると警告する一人だ。
Insiderの電話取材に応じたベル氏は、6月の追加利上げの可能性について次のように述べた。
「市場が織り込んでいるよりも可能性は高いと考えています。現状はFRBが望む水準になっていません」
これはウォール街では少数意見だが、FRBが6月に利上げを停止しないかもしれない、あるいはその後まもなく利上げの再開を余儀なくされるかもしれないということは数カ月前から指摘されていた。
ミルケン(Milken)のチーフエコノミストであるウィリアム・リー(William Lee)氏は、最近開催されたミルケン・グローバル・カンファレンスで、ベル氏よりはるかに踏み込んで、FRBは利上げを継続する必要があると主張した。彼は個人の消費支出の継続を指摘した。
彼はInsiderの取材に対し、「不動産は減速しています。企業の設備投資は完全に崩壊しましたよね。在庫がようやく減り始めたところです」と述べた。
「低所得の人々がまだ旺盛に消費できているという事実は、彼らが失業をそれほど恐れていないことを示していると思います。利上げが必要だと思うのは、それが理由です」
ベル氏は、超低金利が長期間続いたことで消費者や企業の多くが非常に低い金利で借り入れや借り換えを行うことができたと言う。それによって、彼らの多くはFRBの過去1年間の利上げの影響から守られたと彼女は考えている。
「消費者や企業は、おそらくほとんどの人が思っていたよりもうまく、利上げの影響を吸収しています」
そして、FRBはそれを根拠に経済が追加利上げに耐えられると考えているのではないかという。
確かに、インフレの減速を示す兆候はある。住宅や中古車などの価格は1年前ほどの伸びを示していない。リー氏も金利の影響を受けやすい一部の分野におけるインフレ低下を指摘している。
しかしベル氏は、他の多くの分野ではインフレが非常にしつこく続いているように見えると主張する。雇用市場は依然として逼迫しており、賃金上昇は引き続き堅調で、サービスコストのインフレも続いている。
また、FRBが重視する住居費を除くインフレ率はパンデミック前の水準を大きく上回っている。これらはすべて、投資家の期待よりも、あるいはFRBの想定よりも、持続的なインフレにつながる可能性があると彼女は言う。
その理由の一つは、サプライチェーン問題をはじめとするインフレ要因が解消したにもかかわらず、小売業者が依然として値上げを続けていることだ。その結果、消費者はインフレが高止まりするだろうと考えている。その思い込み自体がさらなるインフレを助長する可能性があるとベル氏は言う。
投資家はここ数日、月間小売売上高の弱さを示すように思われるデータや、ターゲット(Target)が弱気の四半期予想を出すなどの動きを歓迎している。いずれもFRBが利上げを停止するであろうことを示唆しているからだ。しかしベル氏は、ターゲットは2023年の業績については依然として楽観的だと指摘する。
「今はこうした小売業者が強気になる理由はゼロですが、彼らは今年後半に消費者が戻ってくることを期待しています」
ベル氏からの投資家への提案
現時点の株式市場の下振れは小幅で、テック業界をはじめとする多くのセクターは「かなり割高」に見えるとベル氏は言う。金利とインフレの軌道がより確かになる今年後半には、シクリカル銘柄(景気循環株)やヘルスケア銘柄を安く買うのが賢明だという。
「今を乗り越えて今年後半に入れば、景気回復とともにチャンスが生まれる可能性があります」と彼女は言う。
「その時には、優良株やディフェンシブ銘柄(景気動向に左右されにくい業種の銘柄)のエクスポージャーを維持しつつ、ディフェンシブセクターやテックセクターで利益を出すのがいいでしょう」