G7広島サミット閉幕、岸田首相が会見「平和と繁栄を守り抜く決意を世界に示すことが日本の使命」

ウクライナのゼレンスキー大統領の広島到着を伝えるNHKの国際放送(2023/05/20)

ウクライナのゼレンスキー大統領の広島到着を伝えるNHKの国際放送(2023/05/20)

REUTERS

*本記事は最新の情報に合わせて随時更新します。


【G7広島サミット1日目:2023年5月19日】

G7首脳、ウクライナ侵略に関する声明「ロシアは即時、完全、無条件撤退を」(2023/05/19)

広島の原爆慰霊碑に献花するG7の首脳陣。2023年8月、広島に原爆が投下されてから78年となる。

広島の原爆慰霊碑に献花するG7の首脳陣。2023年8月、広島に原爆が投下されてから78年となる。

出典:SUMMIT PHOTO 2023

G7広島サミットでは初日の19日、ウクライナに関する首脳声明が発表された。

声明では、ロシアによるウクライナ侵略について「ロシアによる明白な国連憲章違反及びロシアの戦争が世界へ与える影響を最も強い言葉で非難する」とし、「進行中の侵略を止め、国際的に認められたウクライナの領域全体から即時、完全かつ無条件に部隊及び軍事装備を撤退させるよう強く求める。ロシアがこの戦争を始め、この戦争を終わらせることができる」とした。

また、ロシアの核兵器をめぐっては2022年にロシアも参加したインドネシアでのG20バリ・サミットに言及。

「ロシアの無責任な核のレトリック、軍備管理体制の毀損及びベラルーシに核兵器を配備するという表明された意図は危険であり、受け入れられない。我々は、ロシアを含む全てのG20首脳によるバリにおける声明を想起する」

「我々は、ロシアのウクライナ侵略の文脈における、ロシアによる核兵器の使用の威嚇、ましてやロシアによる核兵器のいかなる使用も許されない」

と表明した。

その上の、最後には「平和の象徴」である被爆地・広島の地でG7サミットが開かれていることに触れて、こう綴られた。

我々は、「平和の象徴」である広島から、G7メンバーが我々の全ての政策手段を動員し、可能な限り早くウクライナに包括的、公正かつ永続的な平和をもたらすために、ウクライナと共にあらゆる努力を行うことをここに誓う。

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出典:SUMMIT PHOTO 2023


【G7広島サミット2日目:2023年5月20日】

ゼレンスキー大統領、来日(2023/05/20)

ウクライナのゼレンスキー大統領は5月20日午後3時半頃、フランス政府の専用機で広島空港に到着した。

ゼレンスキー氏は20日午後3時50分、Twitterで「日本.G7.ウクライナのパートナーや友好国との重要な会議.私たちの勝利のための安全保障と強化された協力.平和は今日、より近くなるだろう」と綴った。

ゼレンスキー大統領を乗せたフランス政府専用機は20日午後、広島空港に到着した。

ゼレンスキー大統領を乗せたフランス政府専用機は20日午後、広島空港に到着した。

REUTERS

ゼレンスキー大統領を乗せたと見られる車の警護車列。

ゼレンスキー大統領を乗せたと見られる車の警護車列。

REUTERS


G7サミットのプレスセンターでゼレンスキー大統領の来日を伝えるテレビ報道を見るメディア関係者。

G7サミットのプレスセンターでゼレンスキー大統領の来日を伝えるテレビ報道を見るメディア関係者。

REUTERS

これに先立ち、外務省は5月20日、ウクライナのゼレンスキー大統領が来日し、G7広島サミットに対面参加すると発表。サウジアラビアで開かれたアラブ連盟首脳会議への出席後に来日し、サミット最終日となる21日にG7首脳とウクライナに関するセッションに参加する。岸田文雄首相と首脳会談も実施する予定だ。

ゼレンスキー大統領をめぐっては、米・ブルームバーグなど複数の海外メディアが5月19日、関係者の話としてG7広島サミットに対面で出席すると伝えていた。

今年3月には岸田文雄首相がウクライナに訪問し、ゼレンスキー氏と会談。岸田首相は「G7の揺るぎない団結を維持すると共に、G7として法の支配に基づく国際秩序を守り抜くという決意を示したいと考えている」と述べた。

このとき、岸田首相は広島サミットにオンラインで参加してもらえるよう要請。ゼレンスキー氏が快諾していた。一方で外務省によると、その後ゼレンスキー氏から「今次サミットへの対面参加に係る強い希望」があったという。

ブルームバーグは「78年前に人類史上初の核攻撃を受けた広島への訪問は、ロシアのプーチン大統領がウクライナで核兵器を使用すると断続的に脅していることを考えると、特に象徴的なことだ」と伝えた。

日本政府はこれまで、ゼレンスキー氏が21日午前にオンラインで会合に参加する予定としていた。海外メディアが「ゼレンスキー大統領が訪日し、G7広島サミットに対面出席する」と報じたことについて、松野博一官房長官は5月19日の記者会見で、「21日午前のウクライナに関するセッションにオンライン参加する予定」とし、ゼレンスキー氏の訪日予定を否定していた。

G7首脳声明、異例の“中日”に発表(2023/05/20)

G7首脳集合写真。

G7首脳集合写真。

出典:SUMMIT PHOTO 2023

G7首脳は5月20日、首脳コミュニケ(首脳声明)を発表した

通常、サミットの首脳声明は予定セッションが終了する最終日に発表されるが、日程の中日に首脳声明が発表されることは異例。

来日しているウクライナのゼレンスキー大統領の動向注目が集まることで、G7の声明が埋もれることを避けるため、早期に首脳声明を発表した可能性も指摘されている。

首脳声明の概要は以下の通り。

・ロシアの違法な侵略戦争に直面する中で、必要とされる限りウクライナを支援する。

・全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界という究極の目標に向けて、軍縮・不拡散の取組を強化する。

・デカップリングではなく、多様化、パートナーシップの深化及びデリスキングに基づく経済的強靱性及び経済安全保障への我々のアプローチにおいて協調する。

・ G7内及びその他の国々との協力を通じ、将来のクリーン・エネルギー経済への移行を推進する。

・ 今日及び将来に向けたニーズに対応するため、パートナー国と共に、「強靱なグローバル食料安全保障に関する広島行動声明」を発出する。

・ 「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」を通じて質の高いインフラへの資金提供において最大6,000億米ドルを動員するという我々の目標を実施する。

・自由で開かれたインド太平洋を支持し、力又は威圧による一方的な現状変更の試みに反対する。

・ 強固で強靱な世界経済の回復を促進し、金融安定を維持し、雇用と持続可能な成長を促進する。

・ 貧困の削減並びに気候及び自然危機への取組は密接に関連を持っていることを認識し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を加速させる。

国際開発金融機関(MDBs)改革を加速させる。

・アフリカ諸国とのパートナーシップを強化し、多国間フォーラムにおいてアフリカがより代表されるように支援する。

・ 我々のエネルギー部門の脱炭素化及び再生可能エネルギーの展開を加速させることで地球を保全し、プラスチック汚染をなくし海洋を保護する。

・「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETPs)」、「気候クラブ」及び「森林・自然・気候の新カントリーパッケージ」を通じた協力を強化する。

・ 世界各地でのワクチン製造能力、パンデミック基金、パンデミックへの対応に関する新たな法的文書及びユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を通じて、国際保健に投資する。

・国際移住について協力し、人身取引及び密入国との闘いにおける我々共通の取組を強化する。

・我々が共有する民主的価値に沿った、信頼できる人工知能(AI)という共通のビジョンと目標を達成するために、包摂的なAIガバナンス及び相互運用性に関する国際的な議論を進める。

・大小を問わず全ての国の利益のため、国連憲章を尊重しつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、強化する。

・世界のいかなる場所においても、力又は威圧により、平穏に確立された領域の状況を変更しようとするいかなる一方的な試みにも強く反対し、武力の行使による領土の取得は禁止されていることを再確認する。

・普遍的人権、ジェンダー平等及び人間の尊厳を促進する。

・ 平和、安定及び繁栄を促進するための国連の役割を含む多国間主義及び国際協力の重要性を改めて表明する。

・ルールに基づく多角的貿易体制を強化し、デジタル技術の進化に歩調を合わせる。

・我々は、誰一人取り残さず、人間中心で、包摂的で、強靱な世界を実現するために、我々の国際パートナーと協働していく。その精神から、我々は、豪州、ブラジル、コモロ、クック諸島、インド、インドネシア、大韓民国、ベトナムの首脳の参加を歓迎した。

ゼレンスキー大統領、各国首脳と積極的に会談

来日しているウクライナのゼレンスキー大統領は、広島に集っている各国首脳と積極的に会談をしている。すでにイギリスなどG7各国首脳ともあった。また、インドなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国とも接触している。この日は、インドのモディ首相ともロシアのウクライナ侵攻後初めて会談した。

インドはグローバルサウスの代表格で、これらの国々の中にはロシアとも一定の関係を維持する国々も多い。こうした状況を踏まえて、ゼレンスキー大統領はロシアにウクライナからの撤退を求める和平案への強力をモディ氏に求めた。


【G7広島サミット3日目:2023年5月21日】

G7とウクライナ首脳によるセッション。

G7とウクライナ首脳によるセッション。

出典:SUMMIT PHOTO 2023

ウクライナに関するG7セッション、ゼレンスキー大統領が出席

G7首脳は5月21日午前、ウクライナに関するセッションを開いた。セッションには来日中のゼレンスキー氏が参加した。その後、インドなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国とのセッションが開かれた。

G7とウクライナ首脳によるセッションでの記念撮影。

G7とウクライナ首脳によるセッションでの記念撮影。

Susan Walsh/Pool via REUTERS

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Susan Walsh/Pool via REUTERS


G7、招待国首脳、ウクライナ首脳のセッション。

G7、招待国首脳、ウクライナ首脳のセッション。

出典:SUMMIT PHOTO 2023

会話を交わすインドのモディ首相とウクライナのゼレンスキー大統領。

会話を交わすインドのモディ首相とウクライナのゼレンスキー大統領。

出典:SUMMIT PHOTO 2023

広島サミット閉幕、岸田首相が議長国会見

会見する岸田首相。(2023年5月21日)

会見する岸田首相。(2023年5月21日)

KIMIMASA MAYAMA/Pool via REUTERS

G7広島サミットは21日に閉幕し、岸田首相が同日午後に議長国としてサミットの結果について記者会見した。冒頭では、サミットを広島で開催した思いについて語った。

岸田首相は、「1945年の夏、広島は原爆に酔って破壊されました。平和記念公園が位置するこの場所も一瞬で焦土と化したのです。その後、被爆者をはじめ、広島の人々の弛まぬ努力に酔って広島がこのような美しい街として再建され平和都市として生まれ変わることを誰が想像したでしょうか」と、広島の歩みについて言及。7年前のオバマ米大統領の広島訪問や広島平和記念公園の設計についても触れた。

「7年前の春、私は外務大臣としてここ広島でG7外相会合を開催しました。さらにその翌月には米国のオバマ大統領を広島に迎え、激しい塩化を交えた日米両国が、寛容と和解の精神のもと、広島の地から『核兵器のない世界』への誓いを新たにしたのです」


「平和記念公園を設計した丹下健三氏は平和を作り出すとの願いを込め、原爆ドームから伸びる一本の軸線上に、慰霊碑や平和記念資料館を配置しました。平和の願いを象徴するこの軸線は、まさに戦後の日本の歩みを貫く理念であり国際社会が進むべき方向を示す」

岸田首相は、ロシアのウクライナ侵略をはじめ、現在の国際社会における安全保障環境の厳しさについて触れつつ、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、平和と繁栄を守り抜く決意を世界に示す。それが本年のG7議長国である日本に課された使命であると言えます」と語った。また、こうしたメッセージを発信する上で、“平和の誓い”の地でもある「広島の地ほどふさわしい場所はない」と述べた

加えて、「核戦争に勝者はなく、核戦争は戦ってはならない」「G7首脳と胸襟を開いて議論し『核兵器のない世界』に向けて取り組んでいく決意を改めて共有し、G7として初めてとなる核軍縮に焦点を当てた『広島ビジョン』を発出することができた」「被爆地を訪れ、被爆者の声を聞き、被爆の実相や平和を願う人々の想いに直接触れたG7首脳が、このような声明を出すことに歴史的な意義を感じます」と、広島サミットの成果を強調した。

今回の広島サミットでは、核保有国を含むG7首脳が広島の平和記念資料館を訪問し、芳名録に記帳した。

会見終了後、報道陣から核軍縮に関する「広島ビジョン」に関する質問に答えてほしいと声が上がった。毎日新聞などによると声をあげた記者は「逃げるのか」などと声をかけた。これに応じて岸田首相は演台に戻り、「核軍縮ビジョンについて答えろ、という質問でありました」と述べ、核軍縮に向けたロードマップなどについて答えた。

*参考:「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン

21日夕方、岸田首相はゼレンスキー氏とともに、原爆死没者慰霊碑に献花した。

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Eugene Hoshiko/Pool via REUTERS


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