テスラの電動ピックアップトラック「サイバートラック」は、電動ピックアップトラックのゲーム・チェンジャーになろうとしている。
Tesla
- テスラの「サイバートラック」は、2020年代の「ハマー」になろうとしている。
- 未来的な外観のこの電気自動車は、ピックアップトラックを再定義しようとしている。
- テスラのピックアップトラック市場への参入は、まさにこの分野が必要としていることなのかもしれない。
テスラ(Tesla)は、ついにアメリカで最も収益性の高い車両であるピックアップトラックの分野へ参入する準備が整った。
2019年に鳴り物入りで公開された(デモ中にその窓ガラスが割られてしまったが)待望の「サイバートラック(Cybertruck)」が、2023年、ようやく生産に向かっている。その目を見張るデザインと先端技術で、電動ピックアップトラックの市場やさらにスタンダードなトラックの市場まで、サイバートラックの登場はトラック業界全体を揺るがすと予想されている。
サイバートラックの公開から数年が経つが、テスラのCEOイーロン・マスク(Elon Musk)は、このトラックの詳細を少しずつ出してきた。彼は以前、サイバートラックが「一時的にボートとして機能する」「後輪操舵を装備している」と主張したことがあるが、これらの約束された機能のうち、いくつが最終的に製品となるかは不明だ。専門家らは、テスラが車にできることの限界を押し広げていると言っても過言ではないと述べている。
自動車通販サイト「エドモンズ(Edmunds)」の自動車アナリスト、イヴァン・ドルリー(Ivan Drury)は、「これは、どんな車とも競い合う車だ」と述べた。
「サイバートラック が初めて公開した時のような形状で実現すれば、それだけで十分すぎる。技術や機能以外のことはケーキの上のアイシングに過ぎない」
2023年5月16日、イーロン・マスクはサイバートラックが2023年後半に販売される予定であることを認めた。テスラにとって3年ぶりの完全な新製品となり、同社にもピックアップトラック市場全体にも、刺激的で新しいアイデアが必要となっている時期に登場することになる。
「テスラが伝統的な自動車メーカーになりつつあるというイメージを払拭するためにも、これは必要不可欠な動きだ」とドルリーは話す。新鮮でないデザインから値引き、インセンティブに至るまで、2022年、テスラが創造的破壊者としての輝きを失ったと非難する者もいた。
「サイバートラック」は2020年代の「ハマー」になる
専門家によると、ボクシーで未来的なサイバートラックは、自動車業界ではこれまで見たことのないデザインだという。このピックアップトラックは、ビデオゲーム愛好家、テクノロジーおたく、80年代の映画が好きな人などの特定のステータスを求める人たちや、街中で注目を集めたいドライバーにアピールするように設計されているという。
「新たな購買層のためにクレイジーな見た目の車を作ることは、90年代にハマー(Hummer)がSUVの分野でやってきたことに似ている」とドルリーは言う。
戦車のようなデザインの巨大で非実用的な車としてハマーは登場し、ステータスシンボルとなった。自動車メーカーがそれまで実用一辺倒だったSUVの分野を、愛好家や高級志向の購入者層を惹きつけられるものに変えたのだ。
「サイバートラックは2020年代のハマーになる」とドルリーは話す。
「サイバートラックは人々が自分の車がどんなものになるかという、新しい、類を見ない夢を実現するための車だ」
ライバルがサイバートラックを恐れ、リスペクトする理由
もしテスラが、ピックアップトラックの外観や、誰にアピールするのかを再定義しようとしているなら、それはピックアップトラック市場にとって大きな意味を持つだろう。何年もの間、この収益性の高い市場は、非常に忠実な購入者層をなだめるため、デザイン、機能、特徴に関して厳格なルールに従ってきた。
「テスラのような創造的破壊者だけが、その戦略を変えることができる」と自動車検索サイト、アイシーカーズ(iSeeCars)のエグゼクティブ・アナリスト、カール・ブラウアー(Karl Brauer)は言う。
「サイバートラックの登場は、通常とても安定的で保守的なこの分野にとって、極めて破壊的な瞬間となるだろう」とブラウアーは話す。
「今回テスラがピックアップトラック分野に挑戦するだけで十分に価値のあることだ。競合他社は非常に警戒すべきだろう」
同時に、ブラウアーによると、今回のテスラの動きはまったく新しいトラック購入者を生み出す可能性が高いという。これまでピックアップトラックを所有したことのない熱狂的なテスラファンや、サイバートラックのようなユニークな車に乗っている姿を見せつけたい派手な購入者を引き付けるだろうとブラウアーは述べている。
これはサイバートラックの購入者を確保するという点で、短期的にはテスラにとってプラスになるが、トラック市場全体にも恩恵をもたらす。サイバートラックを買おうと思わない顧客も、フォード(Ford)の電動ピックアップトラック、F-150ライトニング(F-150 Lightning)などの試乗や購入に至る可能性があるとブラウアーは話している。
「サイバートラックが登場すれば、車に乗っている人たちは多くのことを考え直すだろう」