従業員が被害に… アメリカでは「店の駐車場」で死亡事故や犯罪が相次いでいる

ターゲット

Bill Sikes/AP

  • 店の駐車場は、客だけでなくそこで働く人々にとっても危険がつきまとう。
  • アメリカでは、2022年の初めに小売店で記録された死亡事故のおよそ半数が駐車場で発生している。
  • ウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)の従業員たちは、銃犯罪と駐車場の危険なドライバーを恐れていると話している。

ウォルマートで働いていて命を落としたオースティン・キュロンさんは、まだ27歳だった。

4月6日、勤め先のコロラド州ラブランドにあるウォルマートでいつも通り仕事をしていたところに —— 駐車場でショッピングカートを回収中だった —— 車が突っ込んできたのだ。

警察が現場に駆け付けると、キュロンさんは車の下敷きになった状態で見つかり、その場で死亡が確認された。運転していたのは83歳の女性だった。

この事件は小売業に従事する人々にとって、店舗の中に限らず、店舗の外の駐車場にも危険があることを物語っている。

The D&D Daily』の最新データによると、アメリカでは2022年の第1四半期だけで、少なくとも80人が小売店の駐車場で命を奪われている。こうした事故が小売店の敷地内で発生した死亡事故の49%を占めているという。

Insiderではウォルマートやターゲットで働く人々12人に、匿名を条件に彼らの仕事の中で最も危険な部分について話を聞いた。その結果、多くの人々が駐車場を一番危ない場所だと感じると答えた。

暴力と事故、両方起きるのが駐車場

ウォルマート

Scott Olson/Getty Images

今から約5年前、イリノイ州のウォルマートで働いていた管理職のある女性(当時、妊娠していた)は仕事を終えて、帰宅しようとしていた。女性は携帯電話で話しながら車に乗ったという。

すると、白昼堂々「銃を持った何者かが彼女の後ろに乗り込んだ」。

女性は車を明け渡した。

買い物客や通行人が危険な目に遭うこともある。ここ数週間だけでも、テキサス州フォースワースにあるウォルマートの駐車場でけんかの末、家族に銃で撃たれ、死亡した人がいる。この前日には、オクラホマ州オクラホマシティにあるウォルマートの駐車場でけんかが起き、近くにいた人が首を撃たれた。カリフォルニア州にあるコストコでは、駐車スペースをめぐって男性同士の流血騒ぎがあった

殴られたり、銃で撃たれるよりもはるかに確率が高いのが、車にはねられることだと小売店で働く複数の人々がInsiderに語っている。

「駐車場を自分専用のレース場にしてしまう人がよくいます」とミネソタ州にあるウォルマートで8年ほど働いている女性は話した。

ミネソタ州にあるターゲットで働いている男性はある時、同僚と一緒に入口の近くの一時停止の標識の前でどのくらいの数のドライバーがきちんと停止したか数えたことがあると語った。

「40%が標識を無視していた」と男性は振り返った。

テキサス州のターゲットで働いているある従業員によると、同社ではカートを回収したり、ドライブアップ(オンラインで注文した商品を店舗の駐車場で受け取れるサービス)の注文に対応する従業員に、もっと目立つよう明るい色の反射ベストの着用を義務付け始めたものの、それらは必ずしもドライバー、「中でも携帯電話でメールをしている人」の注意を引くとは限らないと話している。

より大きな社会問題を反映する駐車場の危険性

ただ、ロブソン・フォレンジック(Robson Forensic)の土木工学の専門家ゴードン・メス(Gordon Meth)氏の分析によると、個々の人間の行動をコントロールすることは難しくても、駐車場の設計を見直すことで歩行者の安全性を大幅に向上させることはできるという。

メス氏はニュージャージー州の45の自治体を対象にした2017年の調査結果を引用している。この調査ではこれらの自治体で車と歩行者の間の事故の5分の1近くが駐車場で発生していて、その半数以上がショッピングセンターや食料品店、大型小売店の敷地内で起きていたことが分かった。

そして同社の調査によると、スピードバンプや一方通行の車線は歩行者にとって問題を解決するよりも、リスクをもたらすことが分かっている。スピードバンプは歩行者がつまずいたり、カートが転倒する原因にもなり得るし、一方通行の車線はドライバーの加速を促すからだ。

メス氏は車のスピードを落とさせ、ドライバーが注意散漫にならないよう、店の前の道路幅を狭くする、駐車車線を両面交通にして駐車場を斜めではなく垂直にする、物理的なフェンスを設けて交通整理するといった設計上の対策を推奨している。

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