私たちは、138億年前の宇宙とつながっている──精密な“星空”を備えた腕時計「カンパノラ コスモサイン」が開く、天体へのトビラ

地球や人類は、約138億年前に誕生した宇宙の一部である」

このようなことを、普段の生活で意識している人はどれほどいるだろう。

目まぐるしく過ぎる日常の中で、 私たちと宇宙のつながりを感じる機会はそう多くない。とくに都会では、夜空を眺めてもまばらな星しか見えない。

そんな中で、宇宙の神秘を身近に感じることができる、メイド・イン・ジャパンの腕時計がある。上空にどんな星空が広がっているのかをリアルタイムで教えてくれる、カンパノラの「コスモサイン」コレクションだ。

星の成り立ちや宇宙の進化を研究する国立天文台の青木和光教授と、カンパノラを展開するシチズン時計 チーフデザインマネージャーの榎本信一氏とともに、宇宙を感じる旅に出かけよう。

「研究者の間でも話題になっていた」

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青木和光(あおき・わこう)氏/国立天文台教授、TMTプロジェクト 副プロジェクト長、総合研究大学院大学教授。東京大学大学院理学系研究科 天文学専攻修了。博士(理学)。専門は恒星物理学、天体分光学。国立天文台では、次世代超大型望遠鏡TMTの建設に携わり、従来の望遠鏡では観測できなかった天文学の謎に挑んでいる。

「時計のことは正直そこまで詳しいわけではないのですが、カンパノラの『コスモサイン』のことは知っていました。

国立天文台の先輩研究者が身につけていたんです。海外の研究者に『日本の時計なんだ。この精巧さはすごいでしょう』と見せびらかしていたそうですよ(笑)」(青木教授)

“時を愉しむ”をコンセプトとする腕時計ブランド「カンパノラ」のコレクションの一つである「コスモサイン」は、2001年の発売以来、20年以上にわたり愛されている腕時計だ。

最近では、20〜30代のビジネスパーソンのファンも多いと言う。

コスモサインの文字板には、日本(北緯35度)で見える星座が精密に印刷されている。時計の針と連動して文字板も動き、その日の夜空に見える星座を教えてくれる。

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直径約4cmのコスモサインの文字板には、1,027個以上の星(恒星)が描かれている。また星は表面温度に応じて色分けされており、星座名の略称まで書かれている。ものすごい情報量だ。

提供:シチズン時計

「私の主な研究対象は、超高性能な望遠鏡でようやく観測することができるような暗い星です。コスモサインの文字板には4.8等星以上の星が描かれていますが、それよりもさらに小さくて暗い星なんです」(青木教授)

そのような暗い星を観測することで、いったい何が分かるのだろうか?

「50億年前」に宇宙で一体何が起きたのか

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(写真はイメージです)

Getty Images / Maltaguy1

青木教授が観測しているのは星の「スペクトル」だ。

スペクトルとは、光(電磁波)の波長ごとの強度分布を示したもの。星が発する光には、さまざまな情報が含まれている。例えば、その明るさや色からは、星の大きさや表面温度などが分かる。

そしてスペクトルからは、星の表面にある元素の量などが分かるのだ。

「星は、その内部でおきている核融合反応によって光を生じます。内部から出てきた光が星の表面を通って外に出ていくときに、表面にある元素の影響を受けます。

例えば、表面に鉄やアルミニウムがあれば、スペクトルにもその痕跡が残る。スペクトルには星の表面の情報が記録されているわけです」(青木教授)

星の表面にある元素は、その星が誕生した当時にその場所にあった元素の量を反映していると言う。

つまり、50億年前にできた星のスペクトルを観測すれば、50億年前のその場所にどんな元素があったのかが分かる

宇宙に浮かぶさまざまな年齢の星のスペクトルを観測していけば、宇宙が138億年前に誕生してから現在に至るまで、宇宙の各時代にどんな元素が存在していたのかを明らかにできるのだ。

それは宇宙の進化の歴史を解明することにほかならない。そのためには、肉眼では到底見えないような暗い星まで観測する必要があると話す。

宇宙で「最初に生まれた星」は、どこにある?

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた超新星残骸。巨大な星はその最後に爆発(超新星爆発)をおこして、周囲の宇宙空間に様々な元素をばらまく。その爆発後に残った構造が超新星残骸だ。

ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた超新星残骸。巨大な星はその最後に爆発(超新星爆発)をおこして、周囲の宇宙空間に様々な元素をばらまく。その爆発後に残った構造が超新星残骸だ。

NASA/ESA/HEIC and The Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

現在の宇宙には、天然に存在するものだけでも80種類以上の元素が存在する。

実はこれらの元素は宇宙に最初から存在していたわけではない。誕生直後の宇宙には、水素とヘリウムという最も軽い2つの元素しかなかったと考えられている。

星の内部でおきる核融合反応によって、軽い元素同士が合成されるなどして、少しずつ重い元素がつくられていったのだ。

やがて星が寿命を迎えると、膨れ上がったり爆発したりして、それまで星の中でつくられてきた元素が宇宙空間に放出される。それを材料として、次の世代の星が誕生する……。

こうして現在まで、星によってさまざまな元素がつくられながら受け継がれてきたのだ。

青木教授が長年探しているのが、宇宙で最初に生まれた星たち、すなわち「初代星」である。

「初代星は、おそらく138億年前の宇宙誕生から2億年ほどでできてきたと考えられています。初代星の多くは、非常に巨大で活発な核融合で明るく輝き、すぐに爆発してしまったという説が有力です。

しかし、実は小さい初代星も生まれていて、今も生き残っている可能性が指摘されています。そうであれば星の年齢は136億歳ぐらいですね。

ただ、星が小さい=暗いということですから、もしあったとしても発見するのがとても難しい。世界中の研究者が40年以上も探していますが、いまだに見つかっていません」(青木教授)

重要な情報を秘めた星ほど、暗くて見つけにくいものが多い。そこで研究者たちは、暗い星でも観測できるような高性能な望遠鏡を待ち望んでいる。

新たな惑星が見つかる? 直径30メートルの望遠鏡

次世代超大型望遠鏡、TMTの完成予想図。

次世代超大型望遠鏡、TMTの完成予想図。

提供:国立天文台

現在、国立天文台も参加する国際共同プロジェクトとして、次世代超大型望遠鏡「TMT(Thirty Meter Telescope、30メートル望遠鏡)」の建設が進んでいる。

その名の通り、直径30メートルにおよぶ巨大な鏡(反射鏡)を備える史上最大級の望遠鏡だ。巨大な反射鏡で、遠い宇宙から届くかすかな光を集めて観測を行う。

ハワイのマウナケア山頂に建設予定であり、2030年代の完成を目指している。

「望遠鏡の鏡が大きくなると、暗い星が見えるようになるのはもちろんのこと、解像度が高まって、対象を細かく見ることができるようになります。

例えば、これまではひとかたまりにしか見えなかった遠方の星の集団が、一つ一つの星に分解して見えるようになります」(青木教授)

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TMTができると、初代星の探索のほか、地球型惑星の発見にも威力を発揮すると青木教授は話す。

「これまでも太陽系外にある地球型惑星が存在することは、間接的な方法で確認されています。

TMTを使えばより小さな惑星も発見できて、実際にその惑星の画像を撮影したり、大気の成分を分析して生命の存在を示す証拠を見つけたりできる可能性があります」(青木教授)

TMTは望遠鏡の鏡や観測装置などを、プロジェクトに参加する各国が分担して製作。青木教授は国立天文台TMTプロジェクトの副プロジェクト長として、観測装置の開発や各国とのスケジュール調整などを担当している。

各国の強みを活かしながら前代未聞の望遠鏡を完成させたい」とプレッシャーを感じながらも、日々仕事を行っていると青木教授は話す。

時の“原点”を腕にする

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コスモサインを腕にはめた青木教授は、「丁度いいサイズ」とその印象を語る。青木教授が着用したコスモサインの横幅は45ミリ。腕時計としては大きめの部類に入る。

「初めてコスモサインを見たときは、ちょっと大きいかなと感じましたが、実際に着けてみると腕になじみますね。

星座が描かれている文字板の存在感もあり、丁度いいサイズ感だと思います」(青木教授)

真横からみたコスモサイン。

真横からみたコスモサイン。立体的なドーム状の形をしているのも特徴的だ。

提供:シチズン時計

デザインを担当した榎本信一氏は、次のように語る。

「ケースにはドーム状のサファイアガラスが使われていて、横から見ると表面が盛り上がっているのが分かります。ガラスの両面には無反射コートがされているので、どの角度からでも文字板が見やすくなっています。

実際に腕にはめてもらうと、置いてある状態や写真で見る印象とは全然違ってくるので、ぜひ多くの方に実物を見てほしいですね」(榎本氏)

青木教授に、時計の装着感を聞くカンパノラ チーフデザインマネージャーの榎本信一さん

青木教授に時計の装着感を聞く、カンパノラ チーフデザインマネージャーの榎本信一さん(右)。

人類は太陽や月、星の動きから、暦や時間の概念をつくりあげてきた。そして、時を表示する道具として生み出されたものが時計だ。

コスモサインは、そんな時の“原点”を腕時計の中に表現している。

「このサイズの中に、星空をここまで表現する技術には感心します。

かつては星に暦や時間を教えてもらっていたわけですが、星空を起点に時間や季節を考えることがない現代で、今の星空の様子を教えてくれる時計。この感覚は、とても興味深いですね」(青木教授)

14回もの特殊印刷を経て「手作業」で完成

カンパノラ コスモサインコレクション 星座盤モデル AO4010-51L 税込363,000円。

カンパノラ コスモサイン コレクション 星座盤モデル AO4010-51L 税込363,000円。

提供:シチズン時計

実は、コスモサインの精密な文字板をつくるには、14回に分けて特殊な印刷を行う必要があると言う。

しかも印刷は機械任せではなく、職人による手作業だ。浮世絵を刷っていくように、ガイドを使って向きを合わせ、さまざまな色のインクを繰り返し乗せていく。

「13回成功しても、14回目に失敗してしまったら製品化はできません。

非常に手間のかかる工程ですが、このクオリティは機械による印刷では出せないのです。

検品も大変で、双眼顕微鏡を使って細かい線や星の一つ一つを人の手でチェックしています」(榎本氏)

夜空の星の配置は変わらないため、星座盤に描かれている星の位置も、2001年の発売以来、もちろん変わっていない。

ただし、星座盤の視認性の向上などを目的とした変更は、何度か行われている。

「直近では、星座盤の上面に配置されたサファイアガラスの文字板に印刷されている『子午線』の色調を変更して星を確認しやすくしたり、星座盤の周囲のパーツの色調を変更して、より一体感を持たせたりといった改良を行っています」(榎本氏)

宇宙と私たちはつながっている

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Shutterstock / Dima Zel

宇宙や星と私たちとの関係について、青木教授は次のように語る。

「遠くの宇宙と我々って、実は全部つながっているんです。

遠くの暗い星で見つかる元素も、結局は地上にあるものや人間を構成しているものと同じ元素なんですよ。宇宙で星がつくってきた元素によって、地球も人類もできているわけですから。

宇宙のことをはるか遠くの無関係なことだと思わずに、我々とも関係しているんだと感じると物事に対する視点も少し変わるかもしれません。

それをコスモサインを通して感じるのもいいですね」(青木教授)

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つづけて、榎本氏は次のように話す。

「昼の間も、太陽の光が強すぎて見えないだけで、頭上に星はあるんですよね。そんな昼間の星空もコスモサインはリアルタイムで表示してくれます。

時計を見るという行為を通して、昼でも夜でも、常に自分が宇宙の一部であるということを認識させてくれるような希有な時計だと思います。

また、長年この時計が愛されているのは、理屈抜きに見た目にインパクトがあって、『何かすごそう!』と人を惹きつける、そんな魅力があるからかもしれません」(榎本氏)

精密な星座盤を備えた独創的な腕時計、カンパノラ。

ムーブメントの設計から製造に至るまで、自社一貫製造が可能なシチズン時計だからこそ実現できた、唯一無二の時計だと言える。

日本の時計メーカーとしての技術と誇り、そして宇宙のロマン……まずは手にとって、その存在感を確認してみてほしい。


「カンパノラ コスモサイン」について詳しくはこちら。

「カンパノラ」ブランドサイトはこちら。

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