2023年5月24日、ノルウェー・オスロのフィヨルドでノルウェー軍の艦艇やヘリコプターと並んで航行するアメリカ海軍の空母ジェラルド・R・フォード。
Norwegian Armed Forces/Onar Diggers Aase
- アメリカ海軍の空母ジェラルド・R・フォードが、2023年5月24日、ノルウェーのオスロに寄港した。
- アメリカ海軍によると、フォードはアメリカの空母として65年ぶりにノルウェーに寄港したという。
- ロシアとの緊張関係の中、NATOが北大西洋と北極圏への関心が高まっていることを今回の寄港は反映している。
アメリカの軍艦ジェラルド・R・フォード(Gerald R. Ford)は2023年5月24日の朝ノルウェーのオスロに到着した。この最新鋭空母は、アメリカの空母として60年以上ぶりにノルウェーを訪れたことになる。
今回の訪問は、フォードの最初の作戦配備となり、ロシアとの緊張が高まる中、NATO海軍が北大西洋と北極圏の海域をますます重視していることを反映している。
フォードは2023年5月2日、米バージニア州のノーフォーク海軍基地から空母打撃群の一員として初めて出航した。同艦はアメリカ海軍のヨーロッパ・アフリカ作戦地域に配備されており、「 北極圏での活動増加に伴う海上リスクの軽減を支援するため」に、「合同および複合」訓練と作戦を実施していると同海軍はプレスリリースで述べている。
2023年5月24日、オスロのフィヨルドで航行中のアメリカの空母ジェラルド・R・フォードの近くで低空飛行を行うノルウェー軍のヘリコプター。
US Navy/MCS2 Brian Glunt
2023年5月22日、アメリカとノルウェーの当局者は、北海で航行中の空母フォードを視察した。同艦はノルウェーのフリゲート艦を打撃群に統合してアメリカとノルウェーの相互運用性を示し、「海上での共同作戦の経験を構築した」とアメリカ海軍は述べている。
フォードはオスロに初寄港し、65年ぶりにノルウェーを訪れたアメリカの空母になった。これはアメリカとノルウェーの防衛協力の強化、および、北大西洋と北極圏における作戦能力の向上に重点を置くNATOの姿勢を示す画期的な出来事となった。
2018年末のNATOの大規模演習で、アメリカの空母ハリー・S・トルーマン(Harry S. Truman)は、約30年ぶりに北極圏を航行したアメリカの空母となった。それ以来、アメリカ軍の軍艦は「日常的に北欧諸国の領土にいる」と同海軍のトップは2022年に述べており、2020年のバレンツ海への歴史的な展開と2022年の北大西洋への短期展開に言及している。
2022年春、イギリス海軍は空母プリンス・オブ・ウェールズ(Prince of Wales)を7週間北極圏に派遣した。これは、イギリスの新たなクイーン・エリザベス(Queen Elizabeth)級空母によるこの地域への初めての配備になった。
2023年5月24日、オスロのフィヨルドを航行する空母ジェラルド・R・フォード。
US Navy/MCS2 Brian Glunt
アメリカとノルウェーの両政府関係者は、フォードのオスロ訪問を歓迎した。
ノルウェーの国防相は、NATOが提供する「安全保障の明確な表明」であり、ノルウェーがアメリカと結ぶ「緊密な協力とパートナーシップ」を示したと述べた。フォードの艦長リック・バージェス(Rick Burgess)大佐は、「オスロを訪問し、我々の大切なパートナーに海軍の最新型空母を見せることができて光栄であり、喜びであり、スリルだ」と語っている。
オスロにいる間、地元当局者が空母を訪問し、アメリカ海軍の乗組員らは市内を見学する予定だ。ノルウェーのメディアによると、到着したフォードを見学するために数千人の人々がオスロのフィヨルドの海岸に押し寄せ、交通渋滞を引き起こしたという。
フォードの原子炉も特別な予防措置を講じるようになった。ノルウェー放射線防護局および原子力安全局(Directorate for Radiation Protection and Nuclear Safety)が空母に訪問する計画に協力し、オスロ海域では空母の滞在前、滞在中、滞在後に放射線検査が行われる予定だ。
2023年5月24日、ノルウェー海軍の艦艇とともにオスロのフィヨルドを航行するアメリカの空母ジェラルド・R・フォード。
Norwegian Armed Forces/Onar Diggers Aase
アメリカの当局者らは今後フォードがどこへ行くのか、配備中に何をするのかについてはほとんど語っておらず、同艦が実際に北極へ航行するかどうかは明らかではない。バージェスはノルウェーのメディアに対し、乗組員らは「北極圏での作業を楽しみにしている」と語っている。しかし、この船がノルウェーの首都に寄港したのは、NATO軍が北大西洋で「フォーミダブル・シールド(Formidable Shield)」と呼ばれる大規模な防空・ミサイル防衛演習を実施している最中だった。
ノルウェーとの国境に近いコラ半島を拠点とし、NATO軍の懸念となっている潜水艦を運用するロシア海軍の強力な北方艦隊(Northern Fleet)も2023年5月19日に演習の実施を発表しており、5月24日から26日にかけてバレンツ海の広大な範囲の通行を避けるよう船舶や航空機に通達している。
フォードのオスロ寄港は歴史的な出来事だが、アメリカ海軍の艦艇がノルウェーを訪問する機会も増えている。アメリカ海軍の潜水艦は通常、その所在が厳重に管理されているが、ノルウェーの港に頻繁に寄港できるようになったため、潜水艦が物資を調達し、より迅速に作戦海域に戻ることが可能になった。
「我々は大西洋での活動を活発化させている。それはNATOのパートナーや同盟国のために絶対に欠かせないことだ」とアメリカ海軍潜水艦部隊の司令官ウィリアム・ヒューストン(William Houston)副提督は2023年4月に述べている。