【まとめ】NTTだけじゃない。直近1年で「株式分割」した12の大物銘柄…任天堂、ファストリ、オリランドなど

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この1年で、任天堂やオリエンタルランドなども株式分割を行っている。

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  • 新NISAに向けて、企業側も着々と準備を整えている。近年、日経平均株価の採用銘柄で頻繁に株式分割が実施されてきた。
  • 任天堂株やオリエンタルランド株などの株式分割も行われ、これまで初心者が手を出しにくかった憧れの銘柄のハードルが下がってきている。
  • 約1年前の東証再編以降に分割が行われた145銘柄の中で、日経平均株価の算出銘柄としても採用されている12の大物銘柄を紹介する。

新NISAに向けて、企業側も着々と準備を整えている。大物銘柄による株式分割もそのひとつの手段だ。

NTTは去る5月12日、1対25の株式分割を行うことを発表した。実際の分割は、6月30日を基準日として7月1日付に実施されるという。5月現在でNTT株の最低購入価格(1単元=100株)は40万円程度。この価格が6月末まで維持されれば、1単元を1万円台で買えることになる。

これまで数多くの企業が、より多くの投資家を呼び込むことを目的に、株式分割を実施してきた。最近では特に、任天堂株やオリエンタルランド株などの株式分割も行われ、これまで初心者が手を出しにくかった憧れの銘柄のハードルが下がってきている。

今回は、約1年前の東証再編以降に分割が行われた145銘柄の中で、日経平均株価の算出銘柄としても採用されている12の大物銘柄を紹介する。

「株式分割」とは何か?
  • 「株式分割」とは1株を小分けにすることであり、例えば1株3000円の銘柄を10株に分割する場合、1株300円となる。分割によって株価は下落するものの、株数は増えるため分割の前後で投資家が保有する株式の価値は変化しない。
「株式分割」を行う企業の狙い
  • 企業が株式分割を行う主な目的は、さらなる投資を呼び込むためだ。分割後はより少ない金額で購入できることになり、新規で購入を1/2考える投資家にとっては魅力的な銘柄となる。

  • また、企業が成長を続け株価が大幅に上昇してしまった場合に、一定の流動性を確保するために分割が行われる場合がある。特に単元株制度を導入している関係で、個別銘柄の最低購入金額が高い日本市場では、株式分割は効果的といえる。
「株式分割」と新NISAの関係
  • さらに、2024年から始まる新NISA制度にあやかりたい意図もあってか近年、日経平均株価の採用銘柄で頻繁に株式分割が実施されてきた。NTTも25分の1という大分割を行う予定だが、同社プレスリリースにて新NISA制度を見据えた投資家層の拡大を分割の目的としてあげている。

  • 日本の通信インフラを支え、今後も国にとって欠かせない大企業の銘柄を1万円台で買えるのは特に投資初心者にとって嬉しいことかもしれない。安定性を買い、積立投資としてNTT株を買うのもありだろう。

株式分割した12の大物銘柄一覧

プライム市場に上場する約1800銘柄のうち、日経平均の算出銘柄として採用されるのは流動性の高い225銘柄だ。これらはリスクが比較的低く、初心者向けの銘柄と言える。そうした企業の株式が分割によって、購入ハードルが下がるというのは、誰にとっても喜ばしいことだろう。

2022年4月4日の東証再編以降、その225銘柄の中で株式分割を行ったのは、次の12銘柄だ。

銘柄 分割日 分割比率 最低購入金額(05/26)
日本郵船(9101) 2022/10/01 1/3 292,950 円
川崎汽船(9107) 2022/10/01 1/3 318,500 円
東京海上HD(8766) 2022/10/01 1/3 304,100 円
任天堂(7974) 2022/10/01 1/10 594,300 円
ファーストリテイリング(9983) 2023/03/01 1/3 3,311,000 円
東京エレクトロン(8035) 2023/04/01 1/3 1,963,500 円
バンダイナムコHD(7832) 2023/04/01 1/3 326,300 円
ファナック(6954) 2023/04/01 1/5 472,000 円
オリエンタルランド(4661) 2023/04/01 1/5 539,200 円
信越化学工業(4063) 2023/04/01 1/5 433,200 円
明治HD(2269) 2023/04/01 1/5 407,800 円
NTT(9432) 2023/07/01 1/25 407,800 円
※1/25の価格は16,312円

日本郵船と川崎汽船はその名の通りいずれも大手海運会社であり、同日に株式分割を実施している。東京海上ホールディングスは国内最大の損害保険グループだ。

任天堂はゲームだけでなく最近は映画でも世界を席巻しており、同様にファーストリテイリングは「ユニクロ」を展開する世界的アパレル企業である。東京エレクトロンは世界最大の半導体製造装置メーカーのひとつだ。

バンダイナムコHDはおなじみの老舗ゲーム会社、ファナックは工場の自動化設備やロボットでよく知られている。オリエンタルランドは、今年40周年を迎えた東京ディズニーランドの運営会社だ。

信越化学工業は塩ビ樹脂やシリコンウエハーでシェアトップを誇り、化学業界でいわゆる「川中」に位置する企業。明治ホールディングスは傘下に食品・牛乳メーカーの明治(旧:明治乳業)を擁する。

そして、NTTについては、これ以上の説明は不要だろう。

筆者が特に注目する4銘柄

これら12銘柄は、いずれも日本経済を支える大企業だ。そのなかでも、今後の存続性や成長性、財務の安定性などを基準に、いま筆者が注目している4銘柄をピックアップした。

1. 任天堂:製造業、銀行、IT、コンサルと話題を呼ぶ業種は時代によって変化してきたが、娯楽に対する人間の需要は無くならない。そのため任天堂は、今後も大企業として存続していくことだろう。

任天堂はゲームボーイからNintendo DS、Nintendo Switchと次々にヒット作を生み出してきた。今後、技術が進化しても新たなハードウェアを開発してくれるに違いない。

8割と自己資本比率が高く、財政面で安定性に優れている点も魅力的だ。株式分割によって、以前は最低でも1単元600万円必要だった任天堂を、1/10の60万円程度で購入できるのはお得である。

2. 東京エレクトロン:半導体市場では台湾・韓国勢が席巻し、日本のシェアが低下し続けてきたが、半導体製造装置全体では3割近いシェアを維持している。特に同社は市場規模が大きく半導体製造では欠かせない「エッチング装置」で2割近いシェアを有しており、自動車の電装化やIT化が進むなか、一定の地位を確保していくことだろう。TSMCの熊本工場を筆頭に日本国内で進む半導体工場建設の動きも追い風となりそうだ。

3. オリエンタルランド:開園以来、来園者数が伸び続け、2018年度には年間3000万人を突破した。新エリアの開拓も進めており、任天堂と同様、なくなることはない娯楽需要を支えていくことだろう。

そしてコロナ禍では業績悪化に苦しんだものの、依然7割という高い自己資本比率を維持している点は魅力的といえる。ちなみに株主優待のパスポートが目当てなら500株以上が必要となるため注意が必要だ。

4. ファナック:この企業は、NC加工機器などの工場で使われる加工・製造機器のメーカーであり、特に工場の自動化設備やロボットに注力する企業だ。筆者は本業の関係で、自動車メーカーなど大手企業の工場内に立ち入ることがあるが、ファナックのロボットをよく見かける。世界における工場FA化技術の市場規模は2027年に2022年の約1.5倍になるという推計も出ており、約8割という海外売上比率を有するファナックの今後が期待される。

ちなみにファーストリテイリングについては、海外店舗数が国内を上回っているもののアジア中心だ。つまり欧米での規模拡大が軟調で拡大の余地が限られていると考え、ピックアップしなかった。また、同社の場合、分割後も1単元価格が高い点はネックである。

まとめ

株式分割によってこれまで購入しづらかった銘柄が手に入りやすくなる。証券会社によっては単元数未満で買えるミニ株サービスもあるが、リアルタイムでの売買ができず、手数料も高いため筆者はおすすめしない。その点、日経平均株価にも採用されている大物銘柄のハードルが下がる株式分割は、初心者にとってチャンスといえよう。

しかし、大企業だからと言って安心してはいけない。分割が話題となって一時的に株価が上昇することもあるが、長期的には市場の変化に対する企業の態度が業績と株価を左右する。企業提供するサービス、財務の安定性、市場の変化を俯瞰的に見ながら銘柄を選ぶ必要があるのだ。

※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。

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