6月以降に発売されるソニーの新型スマホ「Xperia 1 V」。
撮影:林佑樹
ソニーは5月23日、都内で新型スマートフォン「Xperia 1 V」(エクスペリア ワンマークファイブ)の体験会を開催した。
会場では、世界初搭載となるCMOSイメージセンサー「Exmor T for mobile」を採用した広角レンズ24mmの訴求を中心とした展示や体験エリアが展開された。
今回はハンズオンできた範囲でのファーストインプレッションをお送りする。
ポートレート(人物撮影)写真は良好
シャッターボタンは健在。側面のテクスチャーは指をスライドさせつつもグリップしやすく、撮影を強く意識した処理になっている。
撮影:林佑樹
専門的な解説になるが、Xperia 1 Vに搭載された「Exmor T for mobile」は受光部を2層にすることで、フォトダイオードとトランジスタそれぞれの体積を増やし、純粋に受光性能と耐ノイズ性能を高めたものだ。
センサーサイズは1/1.35型で4800万画素となるが、ピクセルビニング(4つの画素を1つの画素として扱う技術)になるため実運用では1200万画素になる。
背面はガラスだが表面処理によって指紋などが目立ちにくい。ケースなしでの運用を想定しているのであれば、ストラップホールが欲しかったところだ。
撮影:林佑樹
先に記しておくと、超広角レンズと望遠ズームレンズについては大きなアップデートはなく、広角レンズとの描写性能の差が顕著になっている。
同様の傾向は2021年12月発売の「Xperia PRO-I」での実機レビューでも触れたが、店頭でのハンズオンでもすぐにわかるレベルだ。
体験会ではスタジオ照明環境と低照度環境で撮影を試せた。
スタジオ照明環境下では「Exmor T for mobile」の階調の豊富さやXperiaとしては新機能の「クリエイティブルック」の確認になり、ここではミラーレス一眼の「α7R4」(レンズはSEL2070G)の作例と比べている。
まずはXperia 1 V。クリエイティブルックはおそらく「NT」。
撮影:林佑樹
こちらがα7R4+SEL2070Gで撮影したもの。
撮影:林佑樹
最終的な色作りには個体差があるため、比較的影響の少ない髪の毛だけでみると趣味レベルの違いで、Xperia 1 Vのシャドウの出方はつぶれもなく良好だ。
また肌色に関してはXperia 1 Vの方が好みの色を出してくれる割合が高い印象だ。
「自然な見た目」になる低照度撮影
低照度環境はスタジオにテントが用意されており、照明はテント内の光源×3だけというものだった。
低照度環境ではXperia 1 Vは10枚の画像を重ね合わせる処理が実行され、「Exmor T for mobile」の性能もセットで肉眼で見ているかのような絵、もしくはそれ以上の絵になるというもの。
また条件付きとなるがフルサイズミラーレスに並ぶ描写を得られるともアピールされていた。
まずはα7R4+SEL2070Gで撮影したもの。人物の肌色やテント内の様子だけでなく、周辺の木々が確認のポイントになる。Aモードで撮影した。
撮影:林佑樹
こちらはXperia 1 V。ホワイトバランス、人の雰囲気はこちらが良好な結果となっているが、そのほかはほぼ似ている。設定はPhoto Proアプリの「Basic」モード。
撮影:林佑樹
この環境下だとXperia 1 Vは、よい性能を見せてくれた。
プライベートでの撮影だけでなく、ムーディーな店内の様子を記録したい場合にも耐えてくれるレベルだし、旅先での夜景撮影で三脚などが使えない環境でもXperia 1 VならOKだ。
低照度環境では1枚あたりの撮影時間は長めになっており、今回の環境では1秒~1.5秒の撮影待ちがあった。
その間に連続撮影をしているようで、動く物体がある場合は次の写真のようなブレが生じる。
手のブレ具合からすると、基準となるカットがあり、それに露出やホワイトバランスなどを変更したカットを重ねた上で複雑な処理をしているようだ。
手を振ってもらったもの。低速シャッターでの撮影とは異なるブレになっている。
撮影:林佑樹
低照度ではあるのだが、筆者的にはテスト環境が明るすぎたのであまり参考にならなかったのが本音になる。
会場の作例撮影で用意されたテントの脇がそこそこの低照度環境だったので、どこまで「作っているのか」を検証してみた。
低照度での撮影はあくまで「肉眼で見た」を優先しており、やはり過度な作りがあるというよりは自然に近い。また写真左下、ソニーでおなじみの「青っぽい緑」が出てきている。
撮影:林佑樹
フォーカスのロジックがAIに変更
Xperia 1 Vでは、被写体との距離を測るTOFセンサーが廃止され、AIによる深度マッピングを用いたオートフォーカスに変更された。
TOFは比較的近距離に強いが、それ以外ではフォーカス精度や速度に問題があり、その解決になる。
手にフォーカスがあった状態からモデルさんにフォーカスがシフトする様子。迷いもなくスムーズにフォーカスシフトしている。
撮影:林佑樹
ハンズオンではスムーズなフォーカス、瞳AFを確認できており、強力な内蔵チップセットがすぐ近くにあるスマホの構造をよく利用した形と言える。
なお、状況によってはそのとき選ばれていないレンズを利用した視差でのフォーカスも行われているとのこと。
ソニー製ミラーレス一眼「α」との連携も強化
a7IVにマウントされたXperia 1 V。
撮影:林佑樹
本体のカメラとは関係がないが、気合の入ったアップデートが行われたものは、「外部モニター」アプリだ。
Xperiaと対応するミラーレス一眼「α」を接続することで、αで撮影中の映像について白とびや黒つぶれが視覚的にわかる表示や、拡大と全体図の表示、Xperia 1 V本体への記録などが追加された。
左右反転機能も追加され、被写体にこう映ってると伝えやすくなっている。
撮影:林佑樹
シャッターボタンでスクショもできる
もっぱらカメラやVlog推しであるのは昨今のスマホ業界全体の流れになるが、それ以外はどうだろう。
ゲームエンハンサーは、その名の通りゲーマー向けの機能になるがストリーマー向けのモードも用意された。
中でも「シャッターボタンでスクリーンショット撮影ができる」機能が便利だ。
ゲームエンハンサーの機能概要。
撮影:林佑樹
ゲームアプリだけでなく、Googleマップなどのアプリにもゲームエンハンサーは対応しており、オンラインカンファレンスやビデオ会議に役立つ。
またゲームエンハンサーを利用して「Xperia 1 Vだけで配信者になれる」という訴求もあり、これは最近のトレンドでもあるのでわかりやすい。
音楽性能の進化ポイント。
撮影:小林優多郎
次にサウンド。元よりXperiaシリーズはサウンドも重視しており、早期からフロントステレオスピーカーを採用している。
Xperia 1 Vは「フルステージ・ステレオスピーカー」になっており、アンプの駆動電圧を上げ強い音がつぶれにくくなり、またアンプ内のノイズ低減により繊細な音も各段によくなっている。
低域は音圧レベルが約10%向上した。これらの点は、例えば出張時のホテルなどでちょっと音楽が欲しいシーンは多々あるはずだが、そんなときの満足感が増す。
なお、プレス向けの体験会時点でサウンドに関する意見サンプリングを実施していたので、調整はまだ終わっていないようだ。
「Photo Pro(Proモード)」「Video Pro」では縦位置での使い勝手が向上している。
撮影:小林優多郎
Xperia 1 IV(2022年発売)と見た目に大きな違いはないものの、順当なアップデートが行われたものがXperia 1 Vと言える。
価格帯からXperia 1 IVからの機種変更はなかなかにシビアだが、初代Xperia 1(2019年発売)やXperia 1 II(2020年発売)を愛用していて、そろそろ限界と感じているのであれば狙い目になるだろう。