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AI(人工知能)は急速に進化しており、クリエイターエコノミーは、創造性や倫理面に対するAIの影響に直面している。
動画・画像アプリ開発会社ライトリックス(Lightricks)の最近の調査によると、多くのクリエイターはAIを受け入れているようだ。62%のクリエイターが、コンテンツ制作にすでにAIを利用していると回答している。
Insiderが以前行った取材では、複数のクリエイターが、AIツール、特にChatGPTのようなチャットボットに日々の業務を手伝ってもらうようになったと語っていた。ティックトック(TikTok)のフォロワーを86万人以上を持つクリエイターのジョセフ・アルージョ(Joseph Arujo)は、ChatGPTは「コンテンツ領域におけるゲームチェンジャーになっている」と言う。
ライトリックスは市場調査会社YouGovと提携し、アメリカの18歳以上の現役コンテンツクリエイターとその志望者1000人以上を対象に調査を行った。同社はコンテンツクリエイターを「収入を得るために写真および(または)動画を編集し、オンラインで共有する人」と定義し、その志望者を「コンテンツクリエイターになるための取り組みをしている人」と定義している。
対象者には主に人工知能と収益化について尋ねたが、特に写真・動画編集における生成AI(ジェネレーティブAI)の関与を中心に質問は進められた。同社によれば、特定の言語モデルと生成AIに指定はしなかったという。
以下に調査報告書が示す4つの重要なポイントを紹介する。
1. クリエイターの62%がコンテンツ制作にAIを活用
ライトリックスが収集したデータによると、現役クリエイターの62%、志望者の68%が、コンテンツ制作のプロセスですでにAIを活用していることが分かった。
インフルエンサーマーケティングファクトリー(The Influencer Marketing Factory)が5月に行った調査では、95%近くのクリエイターがAIを導入していることが明らかになっている。またクリエイター自身も、数ある作業の中でコンテンツのアイデア出しや編集、画像生成などの作業をスムーズにするためにさまざまなツールを試しているとInsiderに語っている。
ライトリックスの共同創業者兼CEOのゼブ・ファーブマン(Zeev Farbman)氏はこう話している。
「これからは、AIが既存のワークフローの中にますますシームレスに統合されていくと思います。コンテンツ制作者は何らかの形でAIツールに頼ることになるでしょう」
2. 現役クリエイターの64%がAIコンテンツをアートと認識。一方、志望者ではわずか30%
人工知能で生成されたコンテンツがアートと言えるかどうかについては、これまでにも議論があった。
2022年、多くのビジュアルアーティストが、人気の「DALL-E」のようなテキストから画像を生成する技術によって、自分の作品が盗まれ、複製されることを懸念し始めた。4月には、ソニーワールドフォトグラフィーアワード受賞作品に生成AIによる写真が選ばれたが、クリエイターは受賞を辞退した。
しかし、ライトリックスが調査したクリエイターの64%は、AIがアートを生み出すことができると思うと答えている。
AIに対する考え方は急速に変化しており、AIが生成するコンテンツに所有権がないと考えるクリエイターもいれば、創造性を発展・追求するために役立つ方法だと考えるクリエイターもいる、とファーブマン氏は考えている。
3. 38%のクリエイターが、AIによって収入が増えると予想
AIがクリエイティブな仕事にどのような影響を与えるかについての議論はあるものの、クリエイターの38%がAIの利用によって収入が増える、22%は減ると考えている。残りの40%は、AIは収入に影響を与えないだろうと回答している。
「AIでコンテンツを制作すれば、その質が格段に上がるということに気づき始めた人がいるのでしょう」(ファーブマン氏)
ファーブマン氏によれば、コンテンツの質が上がれば、おそらくクリエイターはより多くの報酬を請求できるようになるという。
4. 56%のクリエイターが、AIの利用を企業から求められたと回答
上記に対して、早くも2022年にAIを使うよう要請されていたとの回答は39%、企業から要請されていないという回答は29%となっている。
ファーブマン氏は、この調査結果に驚いたそうだ。
「企業からは、生成AIを使うことを保留していると聞くことが多かったのです。彼らは法的な面やデータの収集方法について知りたがっていました。しかし、クリエイターコンテンツの場合、企業はクリエイターの責任を転嫁することが容易なのかもしれません」