ベテルギウスが再び明るくなっている…それでも超新星爆発は数万年後

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したベテルギウス。

ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したベテルギウス。

Andrea Dupree (Harvard-Smithsonian CfA), Ronald Gilliland (STScI),NASA and ESA

  • ベテルギウスが通常より50%も明るく輝くようになり、天文学者を再び驚かせている。
  • この終末を迎えつつある赤色巨星は、2019年に大爆発を起こした後、その輝きを失っていた。
  • ベテルギウスの超新星爆発は、地球からも観測できるだろうが、それは少なくとも1万年後になりそうだ。

地球の空で最もよく見える星のひとつであるベテルギウスが、極めて奇妙な振る舞いをしている。

この赤色巨星(寿命が近づいている恒星)は、現在、通常よりも約50%明るく輝いていると科学者は述べている。

ベテルギウスの異変は初めてのことではない。2019年には不思議なほど薄暗くなり崩壊や爆発の準備が整ってきたのではないかという憶測を呼んだ。調査によって、この星が崩壊するのはまだ先のことだとわかっているが、増光に影響を与える大爆発を起こしていたことが明らかになった。

2019年1月(左端)から2020年3月(右端)にかけてベテルギウスの光が増減する様子を示した画像。超大型望遠鏡(VLT)によって撮影された。

2019年1月(左端)から2020年3月(右端)にかけてベテルギウスの光が増減する様子を示した画像。超大型望遠鏡(VLT)によって撮影された。

ESO/M. Montargès et al.

2023年5月18日にarXivで発表された研究論文によると、ベテルギウスは通常の2倍の速さ、約200日で最も明るい状態に戻っていることが明らかになった。

ベテルギウスの光が増減するのは珍しいことではなく、400日周期で起きる傾向にある。今回周期が短くなったことは、2019年の「大減光」と関連している可能性が高いと研究者は述べている。

身近にある死にゆく巨星

地球から可視光線で撮影したベテルギウス。

地球から可視光線で撮影したベテルギウス。

ESO/Digitized Sky Survey 2. Acknowledgment: Davide De Martin.

ベテルギウスは、いずれ超新星爆発を起こして寿命を迎える赤色巨星であり、科学者はその行く末を注視している。とはいえ、星の一生のタイムスケールはとてつもなく大きく、この星が最後を迎えるのはまだ何万年も先のことだろう。

ベテルギウスまでの距離は約640光年で、天の川の中で地球の裏庭と言ってもいい場所にある。

誕生したのはおよそ1000万年前で、50億年前に誕生した太陽よりもずっと若い。しかし、この星は太陽の約700倍と非常に大きく、最期を迎えようとしている。

「ベテルギウスの最も素晴らしい点は、巨星の進化の最終段階をほぼリアルタイムで観測できること。これほど深く研究できたのは、これまでにないことだ」と、オーストラリアのスウィンバーン工科大学の天体物理学者、サラ・ウェブ(Sara Webb)はガーディアンに語っている

爆発はまだ続いている

ベテルギウスが塵の雲によって薄暗くなったことを示す想像図。

ベテルギウスが塵の雲によって薄暗くなったことを示す想像図。

ESO, ESA/Hubble, M. Kornmesser

ベテルギウスの奇妙な振る舞いは、2019年から2020年にかけての「大減光」と関連している可能性が高い。

科学者たちは、2019年にベテルギウスがいきなり減光したため、警戒するようになった。巨星が突然明るさを失うと、超新星爆発を起こす準備が整ったという警告になるからだ。

しかしその後の分析により、それとは別の爆発が起きていたことが示唆された。その爆発で、下の想像図が示すように膨大な量のプラズマが宇宙空間に放出されたと見られている。

2019年にベテルギウスが減光する過程を描いた一連の想像図。

2019年にベテルギウスが減光する過程を描いた一連の想像図。

NASA, ESA, Elizabeth Wheatley (STScI)

この爆発はかなり大規模だったようで、塵の分厚い雲を作り出し、地球からはベテルギウスが見えにくくなった。

この星を追跡観測しているハーバード・スミソニアン天体物理学センターの天体物理学者、アンドレア・デュプリー(Andrea Dupree)は、ベテルギウスの奇妙な振る舞いは、この大爆発が原因である可能性が高いとScientific Americanに語っている。

「中の物質が飛び出した後、そこに他の物質が流れ込んできて、ドロドロになった状態だと考えられる」

いつの日かわからないが、ベテルギウスの超新星爆発は地球から見える

いて座方向に地球から1万5000光年離れたウォルフ・ライエ星。超新星爆発を間近に控えている。

いて座方向に地球から1万5000光年離れたウォルフ・ライエ星。超新星爆発を間近に控えている。

NASA, ESA, CSA, STScI, Webb ERO Production Team

ベテルギウスの超新星爆発は、地球が危険にさらされるほど近くで起きるわけではないが、壮大な天体ショーとして楽しむには十分な近さになるだろう。

その日の光景は忘れられないようなものになるはずだ。爆発による明るさは相当なもので、1週間ほどは夜でも日中のように見えるだろうとガーディアンが報じている。このような超新星爆発が銀河系で発生したのは、17世紀が最後だとInsiderは以前報じていた

ベテルギウスの爆発が見られるのも、人類が存在していればの話だ。研究者は、少なくとも1万年以内に爆発することはないと説明する。

とはいえ、星の動きは非常に予測しにくいものであり、人類が生きている間に超新星爆発が起こる可能性は、完全に否定されるわけではない。

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