2017年3月、パキスタンのイスラマバードで行われた軍事パレードで。
REUTERS/Faisal Mahmood
- グローバル・ファイヤーパワーは、145カ国をその軍事力に基づいてランク付けした。
- それによると、アメリカ、中国、ロシアがトップ3で、さらにその下には驚きの事実があった。
- 2023年の世界軍事力ランキング上位25カ国を紹介しよう。
グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)の2023年軍事力ランキングでは、145カ国を総合力の高い順にリストアップした。
このランキングでは、各国の軍備や兵力の量、財政状況、地理的条件、利用可能な資源などの要素を考慮している。これらの要素からパワーインデックスのスコアを算出し、スコアが0に近いほど軍事力が高いことを示している。
以下で上位25カ国を紹介しよう。
25位 ドイツ
ドイツ連邦軍の兵士。2023年1月、ドイツ・アルテングラボーで。
REUTERS/Fabrizio Bensch
ドイツはPowerIndex スコア 0.3881で全体で25位だったが、航空機の総戦力、ヘリコプターの戦力、装甲戦闘車両の総戦力などの分野では世界トップ20に入っている。
グローバル・ファイヤーパワーによると、2023年1月時点でドイツは約601機の航空機、266台の戦車、287機のヘリコプターを保有しているという。
また、この国の防衛予算は約523億ドルで、アメリカ、中国、ロシア、インドに次いで5番目に多い。 NATOの中核部分であることによる恩恵も受けている。
24位 タイ
2010年5月、バンコクの金融街で反政府デモ参加者と対峙するタイの兵士。
REUTERS/Damir Sagolj
グローバル・ファイヤーパワーは、兵役に適した年齢の総人口と現役軍人数の点でタイをトップ 20 にランクインさせた。2023年1月の時点でタイで兵士となれる人口は3600万人を超えており、PowerIndexスコアは0.3738だった。
長い海岸線を考えると当然のことながら、タイは強力な海軍を擁しており、空母は保有していないものの、グローバル・ファイヤーパワーはコルベット艦6隻とフリゲート艦7隻を含むタイの海軍総兵力(292隻)は世界第8位だとしている。
23位 台湾
台北での軍事演習中の台湾の特殊部隊。
(AP Photo/Chiang Ying-ying, File
グローバル・ファイアパワーは、利用可能な予備兵力総数の点で台湾を第1位にランク付けしており、2023年4月時点で約150万人の予備役人員がおり、これは国の人口の6.4%に相当する。
PowerIndexスコアが0.3639となった台湾は空軍力の面でも上位にランクされており、戦闘機285機と攻撃ヘリコプター91機を保有しており、どちらもこの種の航空隊としては世界で8番目に大きい。
22位 サウジアラビア
2010年6月、サウジアラビアの特殊部隊を卒業した兵士たちが、非武装の戦闘技術をリヤドで披露している。
REUTERS/Fahad Shadeed
サウジアラビアは空中給油機など戦力に関しては2位、ヘリコプターの総戦力、石油の総生産量、天然ガスの生産量、利用可能な現役軍人の総数などの分野ではトップ20に入っている。
同国は2023年1月時点で22機の空中給油機を保有しており、アメリカに次ぐ世界第2位の石油生産国だ。
また、国防予算は460億ドルで、世界で8番目の高さだ。
グローバル・ファイアパワーは、同国のPowerIndexスコアを0.3626とした。
21位 スペイン
スペイン海軍の兵士。2006年9月、レバノンのタイレで。
REUTERS/Alessandro Bianchi
グローバル・ファイアパワーはスペインの軍事力を世界第21位とし、輸送船団の総戦力、戦闘機・迎撃機の総戦力、潜水艦の数、利用可能な港の数などの分野でトップ20に入る強さを有すると評価した。
また、スペインはヘリコプター空母を保有する世界でも数少ない国のひとつで、11隻のフリゲート艦を保有し、このカテゴリーでは世界第7位に位置している。
PowerIndexスコアは0.3556だった。
2023年1月時点で140機の戦闘機と2隻の潜水艦も保有している。
20位 ポーランド
アフガニスタンのガズニ州で、燃える違法麻薬の山の前で警備するポーランド兵。2008年11月25日。
REUTERS/Shir Ahmad
ポーランドは、ヘリコプターの総戦力、装甲戦闘車両の戦力、機雷掃海艇の総数、潜水艦の総数などの分野でトップ20以内にランクインしている。
2022年12月現在、ポーランドは208機のヘリコプターと5万台以上の装甲戦闘車両を保有しており、PowerIndexスコアは0.3406だった。
19位 ベトナム
2018年3月、ベトナム・ハノイの大統領府で行われた韓国の文在寅大統領(当時)の歓迎式典で行進するベトナム兵。
REUTERS/Kham/Pool
ベトナムは現役軍人の総人員数や自走砲車両の総戦力などの分野でトップ10にランクインした。
2023年1月現在、ベトナムの徴兵可能な人口は5300万人を超え、現役軍人は47万人(世界9位)、予備役250万人と推定されている。
ベトナムのPowerIndexスコアは0.2855だった。
18位 イスラエル
イスラエルの独立記念日での航空ショー。2023年4月26日、イスラエルのテルアビブで。
REUTERS/Corinna Kern
イスラエルは、戦闘機/迎撃機の総戦力、航空機隊の総戦力、利用可能な予備役の総戦力などの分野でトップ20にランクインした。
2023年1月時点で601機の軍用機を保有し、そのうち241機が戦闘機だ。また、戦車は2200両、自走砲は650基を保有している。
PowerIndexスコアは0.2757だった。
グローバル・ファイアパワーによると、イスラエルの海軍は、船舶数がわずか67隻で、そのうち45隻が海洋巡視船だ。しかし、潜水艦は5隻保有しており、これは世界で16番目だ。
17位 イラン
2023年4月20日、イラン製無人機とイラン陸軍のキオマール・ハイダリ司令官。
Iranian Army via AP
イランは戦車の総戦力、自走式多連装ロケット発射機の総戦力、現役軍人の総戦力などの分野でトップ10入りした。
2023年1月現在、イランは4000台以上の戦車と1000台以上のロケット砲を保有しているという。また、現役の軍人数は57万5000人で、世界で7番目に多い。
PowerIndexは0.2712だった。
16位 オーストラリア
1999年、シドニー上空を飛行するオーストラリア国防軍(ADF)のブラックホーク。
REUTERS
世界第6位の防衛予算を持つオーストラリアは、空中給油機の数、ヘリ空母の数、天然ガスの総生産量、道路・空港・主要港の数などの項目でトップ10にランクインした。
現役の軍人数は6万500人(61位)に過ぎないが、ヘリコプター空母2隻(4位)と空中給油機6機を保有し、その保有数は世界第8位である。
PowerIndexスコアは0.2567だった。
15位 ウクライナ
2023年1月5日、ドネツク州の塹壕内のウクライナ兵。
Diego Herrera Carcedo/Getty Images
グローバル・ファイアパワーによると、ウクライナはロシアの侵攻への対応と、同盟国から武器などの軍事的支援を受けていることから、昨年と比較してランキングを上げたという。
ロシアは2022年2月にウクライナに侵攻し、数日でウクライナを占領するつもりだったが、現在も双方が戦場でしのぎを削っており、紛争がすぐに終わる気配はない。
ウクライナの自走式多連装ロケット砲の数は10位で、2023年4月現在で647基を保有している。また、PowerIndexは0.2516だった。
14位 エジプト
2011年2月9日、カイロ郊外にあるギザの大ピラミッドの前に立つエジプト兵。
REUTERS/Mohamed Abd El-Ghany
グローバル・ファイアパワーは、エジプトを現役軍人の総数、民兵組織の戦力、予備役の総人員、航空機の戦力などの分野でトップ10以内にランク付けした。
エジプトは2023年1月時点で1000機以上の軍用機を保有し、民兵組織の一部とみなせる兵力は30万人だという。
PowerIndexスコアは0.2224だった。
13位 インドネシア
2015年10月、インドネシア軍創立70周年記念式典のリハーサル中のインドネシア軍兵士。
REUTERS/Beawiharta
グローバル・ファイアパワーは、インドネシアを、兵役可能な総人口、兵役年齢に達する総人口、洋上巡視船とコルベット軍艦の総数などの分野で世界トップ5に位置づけた。
2023年1月時点で、1億1200万人以上のインドネシア人が兵役に就くことができ、これは同国の人口の40.7%に相当する。
PowerIndexスコアは0.2221だった。
12位 ブラジル
2009年9月、ホンジュラス・テグシガルパのブラジル大使館で警備する兵士。
REUTERS/Eliana Aponte
ブラジルは兵役可能人口、総輸送能力、総空港数などの分野でトップ5にランクインした。
ブラジルの空港数は4000以上で世界第2位、港湾・貿易ターミナル数は17で第5位だ。
グローバル・ファイアパワーは、2023年1月時点でブラジルの兵役適齢者は8700万人以上、同国人口の40.3%だとしている。
PowerIndexスコアは0.2151。
11位 トルコ
2000年6月、NATOの演習で、ギリシャのキパリシア村付近に上陸するトルコ海兵隊。
REUTERS
グローバル・ファイアパワーは、トルコが「間違いなく軍事大国として台頭し、陸・海・空で同じように防衛要件を満たすために、地元産業にますます依存している」としている。
トルコは航空機の保有数、輸送機の保有数、ヘリコプターの保有数などの項目でトップ10にランクインしている。
2023年1月時点のトルコの軍用機保有数は1065機で、PowerIndexスコアは0.2016だった。
10位 イタリア
2021年9月、ラトビアで行われたNATOの軍事演習で射撃するイタリア軍の戦車。
REUTERS/Ints Kalnins
イタリアは空中給油機の保有数、ヘリコプターの総戦力、攻撃機の戦力、空母の総数などの分野でトップ10にランクインした。
イタリアは2023年1月時点で、58機の攻撃ヘリコプターを含む404機のヘリコプターと、2隻の空母を保有しているという。
PowerIndexスコアは0.1973だった。
9位 フランス
2005年7月14日、革命記念日にパリのシャンゼリゼ通りを走行する装甲車。
REUTERS
総合9位のフランスは、空中給油機の総数、ヘリコプター総数、駆逐艦・戦艦数などの分野でトップ10に入り、輸送艦隊の総戦力も高評価だった。
フランスは2023年1月時点で、69機の攻撃ヘリコプターを含む438機のヘリコプターと10隻の駆逐艦・戦艦を保有しており、PowerIndexスコアは0.1848だった。
8位 日本
2019年2月、米カリフォルニア州で行われた訓練に参加している陸上自衛隊の隊員。
REUTERS/Mike Blake
日本は航空機の保有数、ヘリコプターの保有数、装甲戦闘車両の保有数でトップ10にランクインしている。
島国である日本は、主要な港を持つ国としては最高位であり、4隻のヘリ空母は2位だった。また、特殊任務航空機群(「高度な搭載機器または特殊な特性を利用して」戦場での役割を担うために特別に開発されたプラットフォーム)の強度では、アメリカに次いで2位だった。
日本は2023年1月時点で1400機以上の軍用機、11万1000台以上の車両を保有しており、PowerIndexスコアは0.1711だった。
7位 パキスタン
パキスタンのシャヒーンIII地対地弾道ミサイル。2017年3月、パキスタンのイスラマバードで行われた軍事パレードで。
REUTERS/Faisal Mahmood
パキスタンは2022年の総合9位から、2023年は7位に上昇した。
パキスタンは2023年1月時点で3700台以上の戦車、1400機の軍用機、9隻の潜水艦、65万4000人の現役軍人を抱えているが、グローバル・ファイアパワーは、今年のランキングが天然資源と国境の共有に大きな焦点を当てたことも上昇要因であるとしている。
パキスタンは、アフガニスタン、中国、インド、イランと隣接し、多くの石炭やいくつかの石油・天然ガス田を有している。
パキスタンは兵役可能人口、現役兵力、航空機保有数などの分野でトップ10にランクインし、PowerIndexは0.1694だった。
6位 韓国
2023年3月、韓国の浦項で行われた上陸訓練に参加した米韓の海兵隊。
REUTERS/Kim Hong-Ji
韓国の軍事力の高さは、北朝鮮との数十年にわたる緊張関係を考えれば、驚くにはあたらない。
韓国は航空機、装甲戦闘車、ヘリコプターの分野でトップ5にランクインしている。2023年1月現在、韓国は13万3000台の車両と739機のヘリコプター(112機の攻撃ヘリコプターを含む)を保有しているという。
PowerIndexスコアは0.1505だった。
5位 イギリス
2023年4月14日、国王チャールズ3世による視察前に整列する士官候補生。
Dan Kitwood/Pool Photo via AP
グローバル・ファイアパワーは、イギリスの地位は、人的資源と航空戦力の強み、そして強固な財務体質によって後押しされていると述べている。「また、イギリスは複数の空母を運用する数少ない大国の一つだ」と付け加えている。
イギリスは現在2隻の空母を保有しており、中国、イタリア、インドの保有数に匹敵するが、アメリカが運用する11隻に比べればはるかに少ない。
イギリスは利用可能な港の総数や空中給油機の総戦力などの分野でトップ10に入り、PowerIndexスコアは0.1435だった。
4位 インド
号令をかけるインド軍兵士。2007年10月。
REUTERS/Danish Ismail
インドの強みは人口の多さにある。グローバル・ファイアパワーは、利用可能な兵力人口、利用可能な現役兵力、準軍事兵力について、インドを2位にランク付けした。
それによると、インドの利用可能なマンパワーは、2023年1月時点で6億5300万人以上、国の人口の47%にあたるという。また、インドの現役軍人は約150万人だとしている。
PowerIndexスコアは0.1025だった。
3位 中国
2018年4月、南シナ海での軍事展示に参加する中国人民解放軍海軍の空母と戦闘機。
REUTERS/Stringer
グローバル・ファイアパワーは、利用可能な人的資源と海軍の艦隊の強さで中国を第1位とした。
中国は、「経済でも膨大な人的資源でも、明らかに優位に立っており、海、空、陸の戦力を高めることに重点を置いている」とグローバル・ファイアパワーは述べている。
そして、この傾向が続けば、中国は「アメリカにとって主要な軍事的敵対国になる」と付け加えた。
中国は2023年4月時点で7億6100万人以上の軍事力を有し、駆逐艦50隻、潜水艦78隻、その他多くの軍事資産も保有している。
PowerIndexスコアは0.0722だった。
2位 ロシア
2022年5月にモスクワの赤の広場で行われた戦勝記念日の軍事パレード。
REUTERS/Evgenia Novozhenina
2022年2月のウクライナ侵攻以来、ロシア軍の評判は落ちているが、グローバル・ファイアパワーのランキングでは2位の座を維持した。
ロシアのウクライナ侵攻は「近隣のウクライナに対して人的・物的な優位性があるにもかかわらず、ロシアの軍事力の限界を示した」とグローバル・ファイアパワーは述べている。また、中国が2位の座に近づきつつあるとしている。
航空機の総戦力と輸送機の総戦力を含む分野でロシアは2位だった。2023年1月時点で、ロシアは4100機以上の軍用機を保有している。
ロシアはウクライナ侵攻以来、戦車をはじめとする大量の装備を失い、軍事的な後退に直面しているが、空軍と海軍は余り被害を被っていない。
PowerIndexは0.0714だった。
1位 アメリカ
2022年2月、ポーランドへの配備を控えたノースカロライナ州のポープ・フィールドの米陸軍第82空挺師団の隊員。
AP Photo/Nathan Posner
グローバル・ファイアパワーによると、アメリカは「主要な素材、金融、資源のカテゴリーで圧倒的な数字を示している」ため、トップの座を獲得したという。
PowerIndexのスコアが0.0712だったアメリカは、技術的にも世界をリードしており、医療、航空宇宙、通信などの主要分野で先進的で、いくつかの主要産業市場でも優位性を保ち、「ある程度の自立を可能にしている」と述べている。
2023年4月時点で駆逐艦92隻、空母11隻、航空機1万3300機、攻撃ヘリ983機を保有し、航空機隊の規模、軍艦数、輸送艦隊の戦力など、多くの分野で1位を獲得している。
また、防衛予算も7617億ドルと圧倒的に多く、2位の中国(防衛予算2300億ドル)の3倍以上だ。