OpenAIのサム・アルトマンCEO。
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ChatGPTの開発を進めるOpenAIは最近の株式公開買付で、従来の想定を大幅に上回る数の株式を売却した。証券取引委員会への提出書類と、本件の関係者2名の話から明らかになった。
この株式公開買付では、OpenAIの社員と株主が既存・新規の投資家に対して株式を売却することが可能になった。テッククランチ(TechCrunch)は株式売却による調達額を3億ドル(約420億円、1ドル=140円換算)と報じていたが、それを大幅に上回る4億9500万ドル(約690億円)となった。
証券取引委員会に提出された書類によると、このディールは5億3600万ドル(約750億円)相当の株式売却による資金調達を目的としており、売却額は今後さらに大きくなる可能性がある。
この書類には、株式は40の適格投資家らに売却されたことが記されている。先述のテッククランチの報道では、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)、コースラ・ベンチャーズ(Khosla Ventures)、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)、ファウンダーズ・ファンド(Founder's Fund)といったベンチャーキャピタルの名が挙がっている。
関係筋に取材をしたところ、すでにOpenAIに出資しているタイガー・グローバル(Tiger Global)は、参加者として提案資料に記載されているものの、実際には参加していない。これまでの報道では、本件におけるOpenAIの評価額は270億〜290億ドル(約3兆7800億〜4兆円)とされている。
調達した資金の用途は?
ここ数カ月、評価額の下落にあえぐテック業界にあってひときわ輝きを放っているOpenAIに出資しようと、シリコンバレーの投資家らの動きは慌ただしかった。今回の株式公開買付は、2019年のシリーズAラウンド以降通常の資金調達ラウンドを実施していない同社の株主構成に加わる貴重な機会となった。
本件は、今年1月にマイクロソフト(Microsoft)がOpenAIに100億ドル(約1兆4000億円)を投資したとされる時や、OpenAIが他のスタートアップに投資するためにベンチャーファンドから1億7500万ドル(約245億円)を調達した時とは違う。今回調達した資金は、今後のプロジェクト支援を目的とした事業用ではなく、直接社員のために使用されたようだ。
本件は、デラウェア州を拠点とするエスタス・マネジメント・カンパニー(Aestas Management Company)を通して実施された。同社(エスタスはラテン語で「夏」の意)は、本件を管理するためにOpenAIが設立した会社で、株式公開買付によるOpenAI株の受け渡しはエスタスの設立日で2023年4月10日に始まった。
このペーパーカンパニーの正式な所在地はサンフランシスコのブライアント通り1960番地だが、ここはOpenAIが本社を置くために最近数百万ドルで増築した複合ビルの一角である。同社の電話番号に何度かかけてみたが通話中だった。OpenAIと兼務で法務担当責任者を務めるジェイソン・クウォン(Jason Kwon)が唯一の社員とみられる。
エスタスを管理しているのはOpenAI GP LLCで、これはOpenAIが非営利組織から営利企業に変わった2019年に設立された「管理組織」である。OpenAI GPは独自の非営利組織の所有となっているが、同時に、表向きの顔である営利企業OpenAI Globalを管理している。
OpenAIは2019年、機能上営利企業となるべくユニークな企業構造へと形を変えた。
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