会見に登壇したSansanの寺田親弘CEO。
出典:記者会見より
Sansanが決済事業に参入すると発表した。
T2D3(※)超えの成長を続ける請求書管理SaaS「Bill One(ビルワン)」のオプションサービスとして、法人向けのクレジットカード「Bill Oneビジネスカード」を6月1日から提供開始する。
法人カードは大手銀行からスタートアップまで群雄割拠だが、既存の顧客基盤を生かし、「SaaS+Fintech」のビジネスモデルでさらなる拡大を目指す。
※T2D3:ARR(年次経常収益)を年単位で、Triple(3倍)、Triple(3倍)、Double(2倍)、Double(2倍)、Double(2倍)と成長させていくこと。
法人カードのアナログ業務を解決、特許も申請
提供:Sansan
「企業間決済で最も多いのは請求書払いだが、近年はクレジットカードによる決済も急速に広まっている。一方で請求書より処理が簡単そうに見える法人カードには、依然アナログな業務が多い。特に利用明細と証憑(しょうひょう)の照合は1件1件目視で行うしかなく、最大の課題だった」
と話すのは 、大西勝也執行役員だ。
Bill Oneビジネスカードではこうした課題を解決するため、(1)領収書などの証憑を正確に素早くデータ化して(2)それをカードの利用明細と自動で照合(3)数字の不一致など差異が生じた場合はアラートを出すようにした。この一連の仕組みは特許として申請中だという。
請求書を99.9%の精度でデータ化するなど、同社がBill One、さかのぼれば名刺管理サービスのEightで培ったデータ技術をフル活用する。
カードはバーチャルとリアルの両方で発行可能で、利用上限は1企業あたり月に最大1億円と巨額だ。不正利用のリスクを減らすため、利用者や利用先、利用期間も制限することが可能で、今後はカードごとに利用先を1カ所に限定する機能も実装予定だ。
200社が導入を決定、データ化の信頼がカギ
提供:Sansan
Bill One利用企業であれば、カードの初期費用、年会費、発行手数料は全て無料。
データ化する証憑の枚数に応じた料金と、加盟店などから支払われるカードの利用手数料がSansanの収益になる。
すでに200社が導入を決定しており、これらの企業がBill Oneビジネスカードを使って支払う予定の金額は月間6億円と試算している。Bill Oneの既存顧客を中心に導入社数を増やし、1年後には月額50億円、年間600億円を目指す。
しかし法人カードは大手銀行からスタートアップまで競合が多い、成熟した市場だ。後発のSansanはどう差別化していくのか。寺田親弘CEOは言う。
「営業を行っていて特に手応えを感じるのは、これまで法人クレジットカードを使いたくても使えなかった企業の皆さんです。それがBill Oneのカードだったら使えるね、と。
そもそもBill Oneがここまで受け入れられているのは、請求書を正しくデータ化するという信頼感や安心感によるもの。
データ化を正確に行えるということが、クレジットカードにおいても大きな競争力になると思っています」
Bill Oneの成長は「T2D3」超、フィンテックで拡大目指す
提供:Sansan
Bill OneのARR(年間経常収益)は2023年2月時点で27億円、導入企業は1300社を超える。受注金額は過去最高を更新し続けており、
「SaaSの理想的とされる指標「T2D3」を超える成長を見せています。SaaSビジネスに長年携わってきた身としても この立ち上がりのスピードは驚異的です」(寺田CEO)
これは日本企業の経理DXへの課題感の表れでもあるだろう。法人カード参入による「SaaS+Fintech」のビジネスモデルで、2024年5月期末にはARR60億円以上を目指していくという。