2024年春開業予定の「ハラカド」。位置するのは、「東急プラザ表参道原宿」の斜め向かいだ。
撮影:荒幡温子
カルチャーの聖地・原宿が生まれ変わる。
2024年春、現在神宮前交差点に位置する「東急プラザ表参道原宿」の交差点を挟んだはす向かいに「東急プラザ原宿『ハラカド』(以下、ハラカド)」がオープンする。5月30日、東急グループがメディア向けに渋谷を起点にした「広域渋谷圏」構想の進捗に関する説明会を開催。同日、ハラカドの内装が公開された。
原宿・神宮前の中心地に誕生する「本格銭湯」
高円寺の人気銭湯「小杉湯」のデザインを、ほぼそのまま踏襲。タイルも同様のものを使用するという。
撮影:荒幡温子
ハラカドには、テナントとして若手クリエイターのプロデュースのもと、銭湯やクリエイターラウンジ、ファミリーレストランなどが出店する予定だ。
地下1階に完成予定の「小杉湯原宿(仮称)」は、高円寺で90年間営業する、大人気の老舗銭湯「小杉湯」が手がける本格銭湯だ。
銭湯でお馴染みの富士山の壁絵は全国に2人しかいない銭湯絵師に依頼。サウナブームのさなかではあるものの、銭湯の良さをそのまま感じてもらうために、あえてサウナは設置しない。
「小杉湯」の法被を着用して、銭湯オープンへの意気込みを語る担当者。
撮影:荒幡温子
なぜ、この地での銭湯オープンに至ったのか。担当者は「都心の商業施設が危機的状況を迎えるコロナ禍で、『毎日通いたくなるような機能を設けていきたい』」という思いから計画したと語る。かつて原宿にあった銭湯は、文化を生み出すクリエイターたちの溜まり場となって愛されていたという。こういった背景も、決断の後押しとなった。
現状は東京都の普通公衆浴場(いわゆる銭湯のこと)としての認可待ちの段階だというが、認定が下りない場合も、高円寺の「小杉湯」にできる限り近い料金で提供を予定していくという。
「原宿セントラルアパート」のように、新しい文化の発信地として
2024年春開業予定の「ハラカド」。すでに外観は、神宮前交差点から確認することができる。
撮影:荒幡温子
ハラカドの他のフロアには、アートディレクター・千原徹也氏の手がけるクリエイターラウンジ、代々木上原にある人気フランス料理店「sio」のオーナーシェフである鳥羽周作氏がプロデュースする“新時代”のファミリーレストランが入居する。
さらに、コミュニティの形成と拡大を図るべく、上記テナントも名を連ねる「ハラカド町内会」が発足予定だ。入居者となるクリエイターや企業が、自らイベントやコンテンツ企画など施設運営に参画する。
「ハラカド」から見た「オモカド(現在の東急プラザ表参道原宿)」。
撮影:荒幡温子
ハラカドの開業に伴い、営業中の「東急プラザ表参道原宿」は「東急プラザ表参道『オモカド』(以下、オモカド)」に改称する。
「東急プラザ表参道原宿」では、英会話・動画編集・SNSマーケティングなどの教育カリキュラムを導入した「渋谷女子インターナショナルスクール」がオープンするなど、商業施設の枠を超えたリニューアルが進行中だ。
この場所にはかつて「原宿セントラルアパート」という住居兼商業施設が構えていた。ここにはコピーライターの糸井重里の事務所やファッションデザイナー川久保玲が立ち上げたばかりの「コムデギャルソン」など、日本のカルチャーの礎を築き上げたクリエイターたちが集っていた。
「オモカド」と「ハラカド」のロゴデザイン。両施設の互いに向き合う位置関係をデザインに落とし込んでいる。
撮影:荒幡温子
施設名称のハラカドやオモカドには、「原宿セントラルアパート」のように、「『カド』が合わさり、人々の出会いの交差点隣、新しい文化を生んでいく」という思いが込められているという。
東急不動産・都市事業ユニット 渋谷開発本部・執行役員本部長の黒川泰宏氏は、
「両施設は機能を棲み分けするのではなく、連携していく。原宿・表参道エリア全体を、クリエイターが育ち、発信できるエリアにしていきたいと考えている」
と語る。
2023〜2024年にかけて生まれ変わる「渋谷駅周辺」
2023年11月に竣工予定の「Shibuya Sakura Stage」の完成予想模型。
撮影:荒幡温子
2023〜2024年にかけて、原宿だけではなく渋谷にも東急不動産が手掛ける新たな施設が誕生する。
2023年には渋谷駅南側に広がる桜丘エリアに「Shibuya Sakura Stage」がオープン。
「職・住・遊」を兼ね備えた大型複合施設として、オフィスや商業施設に加え、渋谷駅周辺地区では唯一となる集合住宅や、中長期滞在者向けのサービスアパートメント「ハイアットハウス東京渋谷」など、従来の渋谷駅周辺施設とは異なり、「住」の占める割合が大きい。
「渋谷アクシュ」には、歩行デッキや屋外広場も整備される。
撮影:荒幡温子
2024年には渋谷駅東側、渋谷ヒカリエと青山通りに隣接する場所に「渋谷アクシュ」が誕生。
23階建ての低層部には商業店舗、高層部にはオフィスが入居するだけでなく、駅から街への歩行デッキが整備され、渋谷東口に開発中のバスターミナル(渋谷二丁目西地区)や青山通り方面など、この地域での回遊性を向上させるという。
渋谷アクシェの青山側には、屋外広場を設置。文化発信の取り組みとして日本を代表するギャラリー・NANZUKAがキュレーションするパブリックアートも展示する計画だ。
2024年開業予定の「渋谷アクシュ」の完成予想模型。
撮影:荒幡温子
サステナブルな施設づくりにも力を入れる。
広場など屋外だけでなく、ビル館内にも吹き抜け空間を生かし、緑を大胆に取り入れる。
オフィス部は「ZEB Ready※」認証を取得している。これは、必要なエネルギーを、再生可能エネルギーを除いて従来の50%以下に収めた建築物にのみ与えられ、渋谷エリアの超高層ビルでは初の認証となる。
※ZEB Ready:省エネ施策を実施した建築物としての認証制度。
提供:東急グループ
他にも、代々木公園での公園整備・管理運営事業「代々木公園Park-PFI計画」。隈研吾などをパートナーに迎えた「ライフスタイル提案住戸」などが入居する複合施設「Forestage Daikanyama」など、原宿・神宮前エリアや渋谷駅周辺以外でも、東急グループでは渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内を「広域渋谷圏(Greater Shibuya)」と定義し、再開発を進めている。
TODプロジェクトについて語る、東急株式会社・渋谷開発事業部 事業部長の坂井洋一郎氏
撮影:荒幡温子
とりわけ、渋谷駅前は100年に一度といわれる大規模な再開発が進む。Shibuya Sakura Stageや渋谷アクシュをはじめ、2027年には東急百貨店東横店跡地で「渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)が開業予定。
これが完成すると、駅中心85万平米ものTODプロジェクト※が完了となるという。
※TOD:車に頼らず公共交通機関の利用を前提に建てられた都市開発のこと。
東急不動産では、「開発というハードだけでなく、運営というソフトの両輪に取り組んで」いくとし、「PROJECT LIFE LAND SHIBUYA」を始動する。
「多様な人が集まる渋谷だからこそ、人と始めた方がもっと面白いと感じました」
と、黒川氏はクリエイターや企業との共創や場づくりを通じて取り組みを加速していく意気込みを語った。
進化を続ける渋谷は、10年後にどんな街になっているのだろうか。