5月18日にグローバルで発表された新型スマートスピーカー「Echo Pop」が、5月31日から日本で出荷される。
撮影:小林優多郎
アマゾンのスマートスピーカーに「低価格」を売りにする新しい顔ぶれが登場した。
5月30日、アマゾンは新型スマートスピーカー「Echo Pop」(エコーポップ)の新製品発表会を開催した。Echo Popは音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」を搭載した新型スピーカーで、直販価格は5980円。5月31日から出荷を開始する。
アマゾンは今まで「Echo Dot(エコードット)」というモデルを最も低価格なスマートスピーカーとして販売してきたが、Echo Popはさらに低価格なエントリー向けモデルという戦略的な価格設定をとっている。アマゾンの狙いは、ズバリ「若者層」だ。
「センサーなし」でエントリーモデルの座につくEcho Pop
半球型の特徴的なデザインの「Echo Pop」。
撮影:小林優多郎
Echo Popについて、アマゾンジャパンでAmazonデバイス事業部長を務める橘宏至氏は「エントリーモデル」と表現した。発表時点で、Echo PopはEchoの最新機種の中で最も安いEchoデバイスとなる。
スペックとしては、直径49.55mmのスピーカーが1基、チップセットは現行最新となる独自チップ「AZ2プロセッサー」を搭載。Wi-Fiは2.4/5GHz帯(IEEE 802.11a/b/g/n/ac)に対応する。
スピーカーサイズは最新のEcho Dot(第5世代)よりEcho Popの方が大きいのだが、本体構造やチップセットなどの影響で従来の「Echo Dot(第5世代)の方が音質はいい」(橘氏)。
背面には音量ボタンとマイクのミュートボタンがある。
撮影:小林優多郎
また、Dot(第5世代)にはある温度センサーと人感センサーが、Popには搭載されていない。
そのため、Echo Popに他にはない特筆すべき機能というものはない。安価でかつAlexaの基本的な機能が使える機種となるわけだ。
なお、わかりやすい新機能などはないが、Echo Popは球体を斜めに切ったような「半球型」な見た目が特徴的だ。
Echoシリーズとしては初めてとなる白と黒、青以外のカラーバリエーション「ラベンダー」(薄紫)と「ティールグリーン」(青緑)も用意している。
狙いは音楽配信サービスを愛用する「ミレニアル&Z世代」
発表会にはゲストとして、タレントのゆうちゃみさん(写真左)、お笑い芸人・ニューヨークの嶋佐和也さん(中央)と屋敷裕政さん(右)が登壇した。
撮影:小林優多郎
Echo Popは価格とシンプルなハードウェア構成から、現在Echoデバイスを使っている人でも“別の部屋に置くデバイス”、つまり2台目以降のEchoとしても「ちょうどいい」ことを狙った製品とも言える。
橘氏は発表会で実数は明らかにしなかったものの、日本国内におけるEchoデバイスの成長の推移をグラフで提示し、販売台数と利用者数に開きが生じ始めており「例えば、おうちの中の部屋の数だけ入れてらっしゃる場合もある」と2台目以降の需要の高まりにも触れている。
アマゾンジャパンでAmazonデバイス 事業部長 Amazon Echo事業部・スマートホーム事業部・Ring事業部に務める橘宏至氏。
撮影:小林優多郎
しかし、アマゾンがEcho Popで真に狙っている客層は、2台目以降が必要なファミリー層やガジェット製品に関心の高い層ではないようだ。
橘氏は別のグラフで、2022年3月と2023年3月で比較した際、国内の月間アクティブユーザー数の伸長率が18〜24歳で53.4%、25〜34歳で51.8%と示した。
国内でのEchoデバイスの月間アクティブ数の世代別伸び率。
撮影:小林優多郎
また、日本レコード協会のデータを引用し、月額定額制(サブスク)の有料音楽配信サービスの利用者の年代別比率は、10〜30代で70%を超えることを示し「若年層はストリーミングにシフトしている」とも言う。
つまり、普段はスマホなどでストリーミング音楽を楽しむZ世代やミレニアル世代に対して、購入しやすい価格帯のEcho Popで開拓していこうという考えというわけだ。
音楽配信サービス利用者の年代別比率。
撮影:小林優多郎
なお、Echoデバイスはアマゾンが提供するAmazon Music Unlimitedや2022年11月に大幅リニューアルされたAmazon Music Prime以外にもSpotifyやApple Musicにも対応している(アプリでの設定が必要)。
アマゾンのEchoを含むデバイス部門はアメリカで大規模な人員削減の対象となっていたことが明らかになっている。Echo Popは販売価格から言って、その不調の救世主となる存在とは言えない。
橘氏は「ユーザーとのタッチポイントしてのAlexa、その延長線にあるショッピング利用を見越している」と話しており、アマゾンが従来提唱している「端末単体の収益は重視していない」姿勢が変わらないことを示した。
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