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- 5月30日、ゴールドマン・サックスの著名なパートナー2人が退職すると報じられた。
- 34歳のフレッド・ババは、ゴールドマンの最年少パートナーだ。
- 元政府高官のディナ・パウエル・マコーミックは、同行で最年長の女性の一人だ。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)はここしばらく順風満帆とは言えなかった。大きな取引がなかなか成立せず、戦略の転換を図ってきたが、一部の「パートナー(全社員の1%未満だけが就ける職位)」は取締役会でデビッド・ソロモン(David Solomon)CEOに苦言を呈することを検討するにまで至っている。
それに加え、ゴールドマンの経営陣はさらなる試練を背負うことになった。
同行の最年少パートナー、フレッド・ババ(Fred Baba)と、元政府高官で同行のソブリンビジネスとサステナビリティ活動を統括していたディナ・パウエル・マコーミック(Dina Powell McCormick)が退職すると2023年5月30日に報じられたのだ。
ババの退職を最初に報じたのはブルームバーグだった。彼はゴールドマンのソブリンビジネスで頭角を現し、ウォール街でも注目される人物とされていた(Insiderが毎年発表する『ウォール街の新星ランキング』でも、2020年にランクインしている)。
34歳のババは、ジョージ・フロイド(George Floyd)殺害事件をきっかけに、黒人である自身の経験について記した社内メモが拡散されたことで世間から支持されるようになっただけに、彼の退職は銀行業務を超えたところでも大きなインパクトがある。
パートナーの地位に昇りつめてから半年余りでババは退職の意向を示しており、ジェーン・ストリート(Jane Street)といったゴールドマンのライバルであるノンバンクの金融サービス企業からオファーを受けているとブルームバーグが報じている。
パウエル・マコーミックの退職については、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が最初に報じた。彼女は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領の下で戦略担当の副国家安全保障顧問をしていた短い期間を除き、2007年からゴールドマンに在籍している。今後は、ゴールドマンのOBであるバイロン・トロット(Byron Trott)やグレッグ・レムカウ(Gregg Lemkau)とともにBDT & MSD Partnersに加わり、副会長兼グローバル・クライアント・サービス担当プレジデントに就任する予定だという。
彼らの退職が報じられたのは、ゴールドマン・サックスがここ数カ月、戦略の変更、組織再編、ボーナスに対する失望、レイオフといった困難な状況に直面している最中だった。
この痛みはまだ終わっておらず、早ければ数週間以内に新たなレイオフが行われる可能性があるという。マネージング・ディレクターやその他の上級管理職を含むさまざまな職種がレイオフの対象になる見込みだと、関係者の話としてWSJが伝えている。
一方、パートナーの退職は予想されていたことであり、歓迎もされていた。ソロモンCEOがパートナーグループの威信を取り戻すためにその規模を縮小しようとしていたからだ。
しかし、ババがこのグループに迎えられて間もないうちに退職するというのは、彼の業績が良かっただけに驚きだ。加えて、ゴールドマンをその得意分野で打ち負かしたジェーン・ストリートのようなライバル企業に加わる可能性があるとなれば、彼の退職が注目を集めるのも当然だろう。
パウエル・マコーミックの退職は、元パートナーが優秀な人材を引き抜いていくという典型的な事例となった。このような元パートナーの存在は、ゴールドマンの悩みの種となっている。
そこで疑問が生じる。ゴールドマン・サックスのパートナーシップは、その輝きを失ってしまったのだろうか?
つい5年ほど前までは、就任したばかりのパートナーが退職することはなかった。しかし、最近のゴールドマンは取引をなかなか成立させられず、経営を立て直そうとしており、そのような状況では退職もそれほど思い切った動きではないのかもしれない。