労働者はChatGPTのようなツールに慣れる必要があるかもしれない。
Iparraguirre Recio via Getty
- 労働者はおそらく、AIに全力で取り組む必要があるだろう。
- 企業は、ChatGPTのようなツールを自社の製品や業務に導入する方法を検討している。
- AIへの適応が遅い社員は、より冒険心のある同僚に取って代わられる危険がある。
現在、IT業界ではAIに対する不安はごく当たり前のことになってきており、労働者はAIが自分の仕事を脅かすと考えており、業界の上層部はAIがもたらす影響について警告を発している。
しかし、IT業界に限らず、仕事をしている人なら誰でもAIとその可能性を理解する可能性があるだろう。
2023年5月29日、半導体メーカー大手エヌビディア(Nvidia)のCEO、ジェンスン・フアン(Jensen Huang)氏は、労働者はAIを自分たちを有利に働かせる方法を見つけるべきだと述べた。彼は、「今や誰もがプログラマーだ。コンピューターに何かを言うだけでいいのだ」と話している。
コンピューティングの新時代を迎えて、AIのサポートを受けて高品質な作品やコードを作ることは、テキストボックスに数行の指示を書き込むのと同じくらい簡単になったのだ。
このようなツールが以前よりも使いやすくなり、広く普及していることで、このテクノロジーを理解することはもはや選択するものではなく、必要不可欠なもので、あなたの次の仕事はそれに左右されるものになるかもしれない。
ChatGPTは企業の優先順位を変えた
2022年11月にOpenAIがChatGPTをリリースしたことで、企業の優先順位が軒並み変化している。テック業界以外でも生産性の向上とコスト削減のためにAIを活用するようになり、効率化が急速に進んでいる。
最近の事例を紹介しよう。広告の世界最大手、イギリスのWPPはエヌビディアと提携し、生成AIをワークフローに導入し、クライアントのためにキャンペーンをまとめるスピードを加速させる予定だとフィナンシャル・タイムズ(Financial Times)が伝えている。
つまり、WPPのような企業に勤める非技術系の社員らは、AIが実行すべきタスクを入力するプロンプトエンジニアリングなどのAI関連技術をすぐに使いこなせるようになる必要があるのだ。
そして、世のCEOたちが今、AIについてどれくらい頻繁に話しているかを見てほしい。Insiderが2023年5月の決算短信を分析したところ、約50社のアメリカ企業が四半期決算報告でChatGPTに言及していることが分かった。
Eコマース企業ファーフェッチ(Farfetch)の創業者兼CEOジョセ・ネヴェス(José Neves)は2023年5月の決算説明会で「技術チームがChatGPTの具体的なアプリケーションをいくつか開発している」と述べている。またユーデミー(Udemy)やリーガルズーム(LegalZoom)などの企業は、ChatGPTがそれぞれのビジネスに与える影響について具体的に説明している。
このようなAI関連のスキルに支払う額も急速に変化している。プロンプトエンジニアの仕事は、年俸37万5000ドル(約5237万円)にも上ると言われており、必ずしもコンピュータサイエンスのバックグラウンドは必要ない。
このような方向性が明らかであるにもかかわらず、労働者はまだ必ずしも生成AIの学習を急いではいない。
2023年5月に発表されたピュー・リサーチ・センターの報告(2023年3月に実施された調査に基づく)によると、アメリカでは成人の10人に6人がChatGPTを認知しているものの、実際にこのチャットボットを試したことのある人はわずか14%しかいなかった。
一方、人事ソフトウェア会社のCheckrが、アメリカ人の3000人の雇用者を対象に行った調査によると、79%の労働者たちは、AIツールについてもっと学ぶべきだというプレッシャーを感じていることが分かったという。
ピュー・リサーチ・センターは、アメリカ人が日常生活におけるAI利用の拡大に対し、「興奮や熱狂よりも懸念を示す傾向が強い」というこれまでの調査結果を反映していると指摘している。イーロン・マスク(Elon Musk)のような人物が、AIが実存的な脅威となる可能性を警告していることを考えれば、それも当然だと言えるだろう。
しかし、AIへの取り組みに慎重になっている人たちにとっては、こうした懸念を受け入れる価値はあるかもしれない。大規模な解雇が行われている現在、AIを理解していることは競争力を維持するための数少ない方法のひとつのように見える。