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ツイッター(Twitter)が、いわゆるプログラマティック広告市場で初めて広告インベントリを売り出すことが関係筋への取材で分かった。この動きは、イーロン・マスク(Elon Musk)が同社を買収して以来落ち込んだ収益の一部を補完する助けとなるかもしれない。
ツイッターが更新したAds.txtファイル(パブリッシャーにより、広告枠の販売を許可されているベンダーが表示されている)によると、モバイルアドテク企業のインモビ(InMobi)は、現在ツイッター広告枠の販売を許可されている唯一のサードパーティベンダーである。1年前は、Ads.txtファイルにツイッター広告枠の正規販売者としてサードパーティベンダーは記載されていなかったが、変更となった。
インモビのウェブサイトによると、マクドナルド(McDonald's)、マリオット・ボンヴォイ(Marriott Bonvoy)、モンデリーズ・インターナショナル(Mondelez International)などの企業の広告キャンペーンを推進してきたという。
ツイッターは複数のベンダーに広告枠を販売させたいと考えているようだ。というのも、大手パブリッシャーやアプリ開発者は、自社インベントリをできるだけ多くの潜在的広告主に公開するため、多数のアドテクベンダーと協力する傾向があるからだ。
事情に詳しい関係者らによると、ツイッターは複数のアドテクベンダーと、提携について数カ月にわたり継続的な協議を行ってきたという。関係者の1人は、リソース不足により、協議は遅々として進まなかったと述べた。
Insiderはツイッターにコメントを求めたが、自動メッセージの返答があったのみで、質問内容には触れられていなかった。
営業チームの立て直しが急務
アドテクとの提携により、理論的にはツイッターはより多くの広告主の需要に応えることができるはずだ。
ページまたはアプリの読み込みにかかる数ミリ秒の間に、オープンマーケットプレイスの広告主は、最も高い入札者に広告スペースが与えられる高速オークションに参加する。オープンマーケットプレイスにより、広告主は各パブリッシャーやプラットフォームと個別に交渉することなく、複数のサイトやアプリにわたってターゲットユーザーに広告を配信できる。
ただし、オープンマーケットプレイスは、広告主にとって多数の視聴者にリーチするための最も低価格の環境となる傾向がある。通常、大手パブリッシャーは価格をよりコントロールできる直接販売取引のためにプレミアムインベントリを確保している。
Insider Intelligenceは4月、ツイッターの2023年の広告収入予想を29億8000万ドル(約4170億円、1ドル=140円換算)に下方修正し、10月の予想から37%の減少となった。ツイッターは、コンテンツモデレーションから技術的な不具合、さらには大幅な人員削減により多くのマーケターが持っていたコネがもはや機能しなくなったことに至るまで、さまざまな問題に直面している。
マスクが元NBCユニバーサル(NBCUniversal)の広告販売責任者リンダ・ヤッカリーノ(Linda Yaccarino)をツイッターの次期CEOに迎え入れたのは、主に広告業界を取り戻そうとする試みだというのが、社内外の観測筋の見方だ。広告業界で高く評価されているヤッカリーノは、影響力のあるマーケターや広告バイヤーの巨大なネットワークを持っている(ただしツイッターでの広告販売は、格式高いテレビ番組を中心とした広告とは大きく異なるが)。
プロハスカ・マーケティング・コンサルティング(Prohaska marketing consultancy)のCEOマット・プロハスカ(Matt Prohaska)は、プログラマティック広告を効果的に機能させるには「リンダは新しい営業チームを再雇用する必要がある」と述べ、ツイッターにはインテントに焦点を絞ったデータと広告インベントリに関して「大きなチャンス」がまだあると付け加えた。ヤッカリーノはまだ正式に職務に就いていない。
アドテク教育会社ユー・オブ・デジタル(U of Digital)の創業者シブ・グプタ(Shiv Gupta)は、プログラマティック広告を収益増の源泉とするためにはトレーニングが不可欠になると話す。
「『火をつけて』、収益がただ流れ込んでくるのを願うのもいいですが(ある程度はそうなるかもしれません)、プログラマティック広告で継続的に収益を上げるには、リンダのチームは市場でプログラマティック広告と適切に対話できる必要があります」(グプタ)
ツイッターが自社のモバイル広告ネットワークであるモパブ(MoPub)をゲームアドテク企業アップラビン(AppLovin)に10億5000万ドル(約1470億円)で売却したのは、マスクが2022年10月にツイッターを買収する以前のことだった。外部のプログラマティック広告ベンダーと連携しようとする今回の動きは、それから1年以上が経過したタイミングとなった。