REUTERS/Issei Kato
「自分の将来イメージは暗い」「人をうらやましいと思うことがよくある」
これらは、他のアジア7カ国と比べて、特に日本の回答数が高かった設問だ。その差は、2位と比べて倍以上ある。
5月に発表された博報堂生活総合研究所が発表した最新調査「グローバル定点2023」は、日本・中国・ASEAN6カ国を含む、計8カ国の生活者1万1000人に調査し、各国で働く現役世代の生活実感が垣間見える内容になっている。
調査結果からは、アジアの中でも現代の日本人が、とりわけ「悲観的な国民」であることが浮かび上がる。
調査概要
調査地域:日本(首都圏・阪神圏)、中国(北京・上海・広州)、ASEAN(タイ・ベトナム・インドネシア・フィリピン・マレーシア・シンガポール)
調査人数:1万1000人(11エリア×各エリア1000人)
調査対象:15歳~59歳の男女(アセアン各国については、世帯収入による絞り込みも行った)で割付調査
期間:2023年1月10日~31日
調査方法:インターネット調査
設計・分析:博報堂生実施・集計:株式会社 H.M.マーケティングリサーチ
トップクラスに悲観的な日本人。各国共通のZ世代の傾向も
8カ国の中で、日本が最上位となった回答から、特に各国と差をつけたものについては以下の通りだ。
出典:博報堂ニュースリリース
「自分の将来イメージは暗い」と答えた人が43.7%と、突出していることがわかる。特に男性(50.7%)が女性(36.8%)に比べて多い結果となった。
出典:博報堂ニュースリリース
さらに年代別に各国を比較すると、日本人がいかに「将来を悲観しているか」がわかる。例えば、比較的悲観的なシンガポールで、最も「自分の将来イメージは暗い」と感じている世代は40〜49歳。それでも17.7%にすぎない。
一方、日本では、「自分の将来イメージは暗い」と答えた比率が最も低かった(楽観的だった)Z世代の年代(15〜19歳)でも、30.3%もいる。ちなみに、40〜49歳が、いわば「最も悲観的な世代」なのはシンガポールと共通だが、日本の場合は半数以上(51.3%)と過半数にのぼる。
出典:博報堂ニュースリリース
出典:博報堂ニュースリリース
「人をうらやましいと思うことがよくある」という人の割合は、日本では4人に1人(24.4%)と、他国と比べて倍以上のスコアとなった。
8カ国で共通しているのは、世代別では10代が最も高い割合となるところだ。調査を担当した研究員は、Business Insider Japanの取材に対し、
「SNSの普及によって、必要以上に他人の幸せをチェックできてしまう環境が、どの国の10代の生活にも大きく影響していそうです」
と回答している。
「今後の経済状態」に、日本人はほとんど期待していない現実
出典:博報堂ニュースリリース
「今後、自分の経済状態は楽になると思う」は、日本が最下位を記録した。日本以外の各国が50〜80%台のなか、日本のみ11.3%の低水準と、飛び抜けて低いスコアが目を引く。
出典:博報堂ニュースリリース
さらに、日本に固有の傾向としては、全体平均に対して、世代別回答率の振れ幅が非常に小さいことも印象深い。日本は他国と比べて全体的に、今後の経済状態についてマイナスなイメージを抱いていることが見てとれる。
他にも、上記の設問ほどの差は見られないものの、「お金が欲しい」「高い給料よりも休みがたっぷりな方がいい」において、日本の回答数が1位という結果になった。
一見矛盾しているように見えるこの結果に、研究員は育児や介護など、「会社の仕事以外にも生活者にはやらなくてはならない仕事」があるからだと、レポートの中で指摘する。
「男性の育児参加が期待される日本でも、育児休暇を取る男性が増えつつあります。さらには、介護。日本は超高齢社会ですから介護休暇があると助かる社員は多いはずです。こうした日本特有の事情がこの調査結果につながったのではないでしょうか」
「家族との関わり方」日本は男女でばらつき
家族との関わり方に関する回答は、他国に比べて男女の違いが顕著に表れた。
出典:博報堂ニュースリリース
「家族とすごす時間を増やしたい」と答えた日本人の割合は、28.2%。特に、日本では他国と比べて、男女でスコアの開きが見られ、男性23.0%に対し、女性33.5%と約10ptの差があった。
出典:博報堂ニュースリリース
「夫婦で家事や子育て、仕事などの役割を平等に分担している(既婚者のみ回答)」では、日本は21.9%。こちらも男性が28.5%なのに対し、女性は16.4%と、約10ptの男女の差が見られた。
悲観的なのは厳しい自己評価の裏返し?
出典:博報堂ニュースリリース
「地球環境の保護につながる行動をしていない方だ」という設問は、日本の回答数は67.0%と2位のシンガポールとも40ポイント以上の差をつけた。
「日本での分別マナーの浸透やマイバッグ利用の増加、ボトルアイテムの詰め替え商品の充実、フリマアプリなどの二次流通の活況など、こういった行動が一般化しているがゆえに、さらに高いフェーズでのサステナブルなアクションを想像してしまうのかもしれません(調査担当の研究員)」
と、経済ステージが異なる日本とそれ以外の国とで、環境意識のイメージに相違がある可能性も考えられるという。
さらに、「たとえアクションをしていても、つい謙遜してしまう日本人ならではの心理的特性が全体的な結果にも表れていそうだ」と、全体を通して、悲観的な回答が相次いだ理由についても考察を述べた。
この調査では、日本以外にも各国研究員がピックアップした特徴的な回答も紹介されている。
例えば中国は、「家庭生活よりも仕事を第一に考える方だ(31.6%)」が各国でトップという結果になった。「物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい」でも最上位だった中国の結果に、研究員は「中国も経済的に成熟しつつあるが、一生懸命働くことで生活水準を高めようとする人がまだまだ多いのではないか」と考察する。
日本が最下位を記録した「夫婦で家事や子育て、仕事などの役割を平等に分担している(既婚者のみ回答)(67.6%)は、一方でタイが最上位だった。
女性進出の進むタイでは、低い人件費で雇えるお手伝いさんや、ナニーさんと呼ばれる保育サポートのプロ、同居する両親などの存在が「男女平等環境に大きく寄与」すると説明した。